SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)非核地帯のアフリカ、原子力利用には熱心

非核地帯のアフリカ、原子力利用には熱心

【ハラレIPS=ジェフリー・モヨ】

南部アフリカでは、核軍縮というテーマがとりわけ主要な関心事とはなっていない。それは、アフリカでは核兵器を保有している国が一つもないことと関係がある。アフリカでは、ペリンダバ条約(1996年署名開放、2009年7月15日発効)により、大陸全体が非核兵器地帯となっている。

アフリカ諸国では、専門家らの間に、「核兵器に焦点を当てるよりも、むしろ深刻なエネルギー不足の問題を背景に、いかに原子力を電力確保のために利用できるかに労力を傾けた方がよい」と考える向きがある。

 こうした専門家らの電力利用に対する関心は、「すべての人に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」と謳った、国連の「持続可能な開発目標」の第7項目と一致する。

サブサハラアフリカ地域の国々は、原子力の利用を認められるべきです。なぜなら、原子力発電が、この地域に蔓延する深刻な電力不足に対する解決策となるかもしれないからです。ただし、人間の生命を危険に晒す核廃棄物の長期的な影響の問題も考慮に入れなければなりません。」と、ジンバブエの首都ハラレで環境や原子力の問題に取り組む独立の専門家ハッピソン・チコワ氏はIDNの取材に対して語った。

核廃棄物は、放射性物質で極めて毒性が強い。核燃料処理工場や核医学、核兵器産業から出る副産物である。核廃棄物は数千年も放射線を出し続けるため、厚いコンクリート製、或いは鉛・ステンレス製金属のコンテナに入れて、地中あるいは海中深くに埋設しなくてはならない。

原子力利用に伴うこうしたリスクにもかかわらず、アフリカでは深刻なエネルギー不足を背景に、一般の人々までもが、チコワ氏のような多くの専門家の見方に同調している。

「私個人としては、電気がどこから来るかについては、たとえ政府が、多くの人々が兵器の生産にも利用されかねないとして恐れる原子力から引っ張ってきたものだとしても気にしません。素人の知識で言えることは、原子力を発電に使えるなら、他の手段よりも安くできるということです。」と、ジンバブエの首都ハラレ郊外の(人口密集地区)ハイフィールドに住むメビオン・チメザ氏はIDNの取材に対して語った。

またサブサハラアフリカにおける気候変動の専門家らにとってみれば、この地域で原子力の民生活用(原発は二酸化炭素を排出しない)を強調することは、気候変動がもたらしている悲惨な影響に対処する一つの方策になりうると考えている。

Georgia's Vogtle nuclear power station/ Public domain
Georgia’s Vogtle nuclear power station/ Public domain

「原子力の利用には、気候変動がもたらす影響を軽減したり、農業生産を向上させる効果を期待できます。もし投資額を抑えられるならば、発電に原子力を採用すべきです。この場合、原子力発電によって、農業などの生産方法を機械化することが可能になります。」とジンバブエの気候変動問題専門家ジスンコ・ヌドロブ氏は語った。

世界の軍事強国の間では、「核軍縮」に関する議論が盛んになっているにも関わらず、アフリカでこうした見解が表明される背景には、今日まで核兵器を保有している国が皆無というアフリカ大陸の特殊事情があるようだ。

こうしたアフリカ大陸の現状とは対照的に、世界に目をやると、(「軍備管理協会」によれば)9つの核兵器国が合計で約1万6000発の核兵器を保有し、そのうち9割以上がロシアと米国によって保有されている。

米ロ両国は、中国とフランス、英国とともに、国連安全保障理事会の5つの常任理事国を構成し、同時に、核不拡散条約(NPT)上の「核兵器国」としても知られている。これに加え、今ではインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮が核兵器を保有しているとみられている。

アフリカ南部では、南アフリカ共和国(南ア)だけがかつて核兵器を保有したことがある。同国は、1990年代に民主選挙で選出されたアフリカ民族会議(ANC)の政府に政権交代する前にそれまで開発していた全ての核兵器を放棄する決定をしたため、世界で初めて自主的に核兵器を放棄した国となった。

南アは1975年に生物兵器禁止条約、1991年に核不拡散条約、1995年に化学兵器禁止条約にそれぞれ署名している。

「私は南ア国民として、この国の政府が、核兵器能力を1990年代に自発的かつ一方的に放棄したことを念頭に置いています」と語るのは、2007年から14年にかけて「反原子力同盟」の議長を務め、現在は「ウォーターコースメディア開発社」の社長であるマイク・キャンティー氏である。

キャンティー氏のような反核活動家・専門家の見方によると、この地域、とりわけ南アは、原子力の危険性について理解しているという。

被爆者との出会い

「反核活動家、そしてかつての反アパルトヘイト闘争の闘士として、私たちは、21世紀初頭に光栄にも広島からの代表団を迎え、被爆者から直接体験談を伺う機会がありました。」とキャンティー氏は語った。

キャンティー氏によれば、日本からの代表団は普遍的な核軍縮を目指す運動を展開しており、南アジアや中東、北朝鮮における核拡散の防止に向けて共に行動してほしいと、南アの人々に訴えたという。

「イスラエルによる(核兵器を最初に使用する国にはならないという)単独での誓約や、中東非大量破壊兵器地帯を創設しようとする動きから、私たちは、南アジアでも同様の行動を起こすよう大きなプレッシャーをかけ、最終的には、核兵器5大国(中国、フランス、ロシア、英国、米国)に対して、すべての核兵器と劣化ウラン弾の世界的な廃絶に向けて同じように努力するようプレッシャーがかけられると考えています。」とキャンティー氏は語った。

しかし、再びジンバブエに目を転じてみると、2012年、民生用の原子力発電と核兵器開発のいずれにとっても欠かせない未発掘のウラン鉱床をジンバブエが保有していると広く考えられている中で、同国の電力供給公社のジョシュ・チファンバ代表が、「(恐らくは国際的な注目を集める目的で)原子力発電事業の実行可能性調査を行うための専門家チームが招集されることになる。」と語った。

チファンバ氏は、「核のオプションを検討するために専門家チームからなる委員会を立ちあげます。ジンバブエは、原子力による大規模な電力生産を2020年以降に実現することを目指します。」と昨年(2014年)ブラワヨで開催された国際ビジネス会議で語った。

ジンバブエでは、ザンベジバレーに未採掘のウラン鉱脈が確認されている。また同地のカンエバ鉱山には、2万トン以上が抽出可能なウラン鉱石4万5000トン以上が眠っているとされる。

イランと中国は、ジンバブエのウラン鉱脈に大きな関心を示しているとされる。ただし、イランはウラン濃縮計画の停止を拒んだため、国連が2013年に新たな制裁を課している。

明らかに原子力エネルギーの利用に熱心なジンバブエ政府は、核が環境に及ぼす危険に対して無関心なように見える。

Uranium/ Wikimedia Commons

2013年、シンバラシェ・ムンベンゲグウィ外相がイランの報道機関に対して、ジンバブエは、議論を呼んでいるイランの核計画に利用するためにジンバブエのウラン資源を採掘する点で同国と協力する意向を表明した。

ジンバブエと同じく、ナミビアもまた、原子力を通じたエネルギー不足の解消に望みをかけている。

昨年、ナミビア政府は、原子力利用に関して市民を訓練する目的で、将来的に原子炉のシミュレーターを建設したいとの意向を示した。このことは、同国のイサーク・カタリ鉱山・エネルギー相(当時)によっても確認されている。

「私たちは現在ウランを採掘し、原料のまま輸出しています。原子力発電は安価で安全なものです。」とカタリ鉱山・エネルギー相は当時、記者団に語っていた。

他方、南アは、商業原子炉を有するアフリカ唯一の国である。原子炉は2基あり、同国の電力生産の4%を占めている。実際、南ア政府は、核施設の建設と製造に関して相当程度の国産化を図りたいとの意向を示していた。

しかし、南アの原子力専門家はこれに納得したわけではない。

「南アには膨大な核廃棄物が生まれ、建設と同じぐらい高価な廃炉作業が発生することになるだろう。」と南アで活動する独立の原子力専門家トニー・ハフィング氏はIDNの取材に対して語った。

しかし昨年、南ア政府は、同国の放射性廃棄物の管理と廃棄について所管する「国営放射性廃棄物処理研究所」を立ち上げた。

ジンバブエのチコワ氏のような多くの原子力専門家にとっては、アフリカに核兵器を保有する国が一つもない現状では、「核兵器なき世界」が最重要議題ではないようだ。

「アフリカでは、議論の対象となるような核兵器が存在しないことから、核軍縮に関する議論に時間を取られる必要はないのです。それよりも深刻なエネルギー不足の現状に向き合い、地域の環境に悪影響を与えないようにしながら、原子力を如何に活用するかについて、むしろ精力を傾けるべきなのです。」とチコワ氏は語った。(原文へ

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