INPS Japan/ IPS UN Bureau Report核軍縮に関しては、依然として他国に率先措置を求める

核軍縮に関しては、依然として他国に率先措置を求める

【国連IPS=ハイダー・リズヴィ】

イランの核開発計画を巡る現在進行中の論争は、国連における核軍縮議論の進展に資するだろうか?核拡散について協議する過去の国連会議に出席してきた多くの外交官や専門家にとってその答えは「イエス」である―ただし、その理由は必ずしも想定内におさまるものばかりではないだろう。 

「イランは二重基準に挑戦しているのです。」「国際社会はイランのウラン濃縮の動きに対して異議を唱える一方で、イスラエルの核兵器保有疑惑に関しては完全に沈黙を守るという全く異なる基準を適用しているのです。」と、米国に本拠地のある核時代平和財団のデイビッド・クリーガー所長は語った。

 イスラエルの核兵器は依然として秘密のベールに覆われているが、同国は300発以上の核弾頭を保有していると考えられている。 

「米国のバラク・オバマ政権は現在、イランによるウラン濃縮問題に対しては多国間で連携しながら取り組んでいますが、中東非核地帯設立の呼びかけに関しては沈黙を守り続けています。」とクリーガー氏は指摘した。 

クリーガー氏は、この問題は、核保有国、とりわけ西半球の保有国が核軍縮について曖昧な態度を続ける限り解決しないと確信している。 

イラン政府は、核兵器開発を進めているとする嫌疑を繰り返し否定するとともに、同国は当然の権利としてエネルギー生成を目的とした平和的な核開発事業を推進しているのであり、そのことが核不拡散条約(NPT)違反には当たらないと主張している。 

NPTには、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を除く全ての国連加盟国が締結している。1968年に調印されたNPTは、加盟国が平和目的に核エネルギーを生成、使用する権利を認める一方、核保有国に対して自国の核兵器の解体・削減に向けた措置をとるよう義務付けている。 

イラン政府は、同国が核開発計画を軍事目的に利用しているとする西側諸国の告発に対して精力的に反駁するとともに、米国とその他の核保有国がNPTの規定に従って自国の核兵器を解体する措置をとるよう要求している。 

国際安全保障・軍縮問題を協議する国連総会第一委員会では、主な核保有大国には核廃絶に向けた計画に沿って行動する意思が欠如しているのではないかと疑問を呈する意見が大多数の国からあがっている。 

「我々は新たな核兵器保有を正当化する(非核保有国の)いかなる試みも、(核保有国の)無期限保有も認めません。」と今月上旬に開催された国連総会においてブラジルから参加した新アジェンダ連合(NAC)のルイス・フィリペ・デ・マセド・ソアレス会長は語った。 

1998年に設立されたNACは、NPTの規定を順守するために自らの核開発計画を放棄したスウェーデン、アイルランド、ブラジル、メキシコ、ニュージーランド、エジプト、南アフリカの7カ国で構成している。 

「核軍縮と核不拡散は本質的に相互に関連し合いながら強化していくプロセスなのです。」とソアレス会長は語った。「従って、双方のプロセスには継続的かつ不可逆な前進が求められるのです。」 

NACにとって、核兵器の使用と拡散防止を保障する唯一の方法は、完全かつ検証可能な方法で核廃絶を達成することである。 

「多くの国々が核兵器を保有することが安全保障上必要と考えている限り、新たに核兵器の獲得を目指す国が出現してもおかしくありません。そして、核兵器が非国家主体(国際テロリストグループ等)の手にわたるリスクは存在し続けるのです。)とソアレス氏は語った。 

NACは、「如何なる国も新たに核兵器を入手したり無期限に保有し続けたりすることを認めません。」と、ソアレス氏は語った。同氏は、核兵器の保有が「国際平和と安全保障に決して寄与しない」と強く確信している。 

国連では5月にNPT運用検討会議を開催することになっている。潘基文国連事務総長は最近の声明の中で、核保有国が核軍縮に向けた具体的な措置をとることを望むと発言している。 

潘事務総長は、15カ国で構成される国連安全保障理事会に対して、核軍縮首脳会議の開催を要請するとともに、全てのNPT非加盟国に対して核兵器能力を現状で凍結するよう呼びかけた。「核軍縮は安全保障を強化するものでなければなりません。」と潘事務総長は最近の声明の中で語った。 

この潘事務総長の呼び掛けは、核軍縮支持の姿勢等が評価されて最近ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領が、包括的核実験禁止条約(CTBT)への批准及び兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)への支持を通じて、米国の核兵器削減に向けた具体的な措置をとる意向を示したのを受けてなされたものである。 

しかし米国では野党共和党が、この問題について妥協しない姿勢を強めている。また10月29日には、タカ派でジョージ・W・ブッシュ前大統領の腹心であるジョン・ボルトン前国連大使が、「ConUNdrum(謎の意味:国連をかけたもの)」と題した著書を発表し、その中で、「国連は軍縮会議を廃止すべきだ。」と提言している。 

にもかかわらず、米国の独立系政策アナリストの一部は、楽観論を表明することに慎重なものの、核不拡散及び核軍縮の目標を達成する見通しについて、徐々に明るくなってきているとみている。 

「オバマ政権は具体的な措置をとると確信しています。」「そのような措置は、米国が核兵器の先制使用を明確に拒否するという行動となって表れると思います。」とNAPFのクリーガー会長はIPSの取材に応じて語った。 

「そうすることでオバマ大統領は、米国の安全保障戦略における核兵器の役割を打ち消すという姿勢を国際社会に対して示すことができるのです。」とクリーガー氏は語った。 

今月の「アトランティック誌」に報じられた通り、オバマ氏は従来から国防総省が新たな新型核弾頭の設計を求めている来年発表予定の核政策基本文書「核態勢見直し(NPR)」の作成に関して直接関与する意向を表明している。 

オバマ氏は核兵器のない世界を支持しているが、一方で、「米国は他国が核武装している限り、抑止目的のために自国の核兵器を保持しなければならない。」とも述べている。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 


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