ニュース非核中東に向けた機会は失われた

非核中東に向けた機会は失われた

【エルサレムIPS=ジリアン・ケストラー=ダムーアズ】

中東非核兵器地帯を創設するための国際会議が延期となり、専門家らは、中東に安定をもたらす重要な機会が失われたと警告している。

「2012年ヘルシンキ会議は、画期的な先例となるはずのものでした。なぜならこの会議は、中東に非大量破壊兵器地帯を創設するための要件について協議する特別な会議として、国際社会が初めて招集することに合意したものだったからです。」と、ヨルダンのアンマンを拠点とするアラブ安全保障研究所のアイマン・カリル所長はIPSの取材に対して語った。

またカリル所長は、「それ自体は、重要な決定であり、里程標でした。しかし残念なことに、それは実現しなかったのです。」と語った。

 中東非核兵器地帯を創設するための国際会議は、国際連合が主催し、ロシア・米国・英国(核不拡散条約寄託国)が支援して、2012年12月にフィンランドのヘルシンキで開催される予定だった。

米国務省のビクトリア・ヌーランド報道官は、「地域安全保障と軍備管理に関する取り決めに向けたアプローチについて、大きな考え方の違い」があり、「域内諸国の間で会議開催の受諾条件で合意に達しなかった」ために会議は招集できない、との声明を発した。

 ヘルシンキ会議は、現時点では2013年早々にも開催されることが期待されている。

エジプト外交評議会(ECFA)によると、ヘルシンキ会議を開催することは、「イランが国際原子力機関(IAEA)からの要求に応えず、イスラエルがイランに対する攻撃を仕掛けると脅している」状況の中では、とりわけ重要な意味を持つという。

ECFAは、「中東から大量破壊兵器をなくすことで、地域の安定と安全保障のための適切な環境が作り出されることになるだろう。」とした上で、「アラブ不拡散フォーラム」が、いかにしてこのヘルシンキ会議開催に向けたプロセスを再始動するかについて協議する会議を12月12日にカイロで開催することになっていると述べた。

中東非核兵器地帯を創設するための特別会議の開催は、2010年NPT運用検討会議において決定された。

1970年に発効したNPTは、核兵器と核兵器技術の拡散を防ぐこと、さらに、核軍縮という目標を世界に広めることを目的としている。現在、NPTが公式に認めている5つの核兵器国(中国、ロシア、イギリス、フランス、米国)を含め、190か国が条約に署名している。

国連によれば、現在世界には5つの非核地帯がある。すなわち、ラテンアメリカ・カリブ海地域、南太平洋、東南アジア、中央アジア、アフリカである。

核兵器を保有していると長らくみなされながら依然として「核のあいまい政策」を貫いているイスラエルは、NPTに署名していない。ヘルシンキ会議延期の決定は、イスラエルが名指しで批判されるのを恐れていることと関連しているのではないかと、多くが指摘している。

イスラエル外務省のポール・ヒルシュソン副報道官によれば、イスラエルは公式にヘルシンキ会議に招待されたことはない、したがって、会議参加に合意したこともそれを拒否したこともない、という。

IPSの取材に応じたヒルシュソン副報道官は、「(ヘルシンキ会議を開催するには)現在の状況は適切でないとする米国の主張に、イスラエルはおそらく同意するものと思います。…イスラエルにとって、この会議で協議できる話題はほとんどないと思います。」と指摘した上で、「テーマ自体は素晴らしいものだと思いますが、我々が本当に関心を寄せているのは、パレスチナとの和平問題であり、サウジアラビアとの外交関係なのです。つまり、ヘルシンキ会議にエネルギーを割く前にやらなければならない課題が山積しているのです。」と語った。

過去1年にわたって、イスラエルは、イランが核兵器を取得しようとしているとして公然と反対の意を表明してきた。一方、イラン側はそのような企図はないと否定してきた。しかしイスラエルの指導層が、イランの核施設を先制攻撃するかもしれないと示唆するに及んで、最大の同盟国である米国との外交関係を緊張させている。

しかし、カリル所長によれば、イスラエルの「核のあいまい政策」は「部屋の中の巨象(=誰もが認識しているのに話題にしないこと)」であり、核を持とうとするイランではなく、イスラエルの態度こそが、中東非核化への最大の障害であるという。

カリル所長は、「基本的に、イランも含めて中東のすべての政府がNPTに署名しています。しかし、一か国だけがこの取り決めの外側にあり、それがイスラエルなのです。」と指摘した上で、「アラブ諸国は、イスラエルとの容認可能な取り決めに達するために、ヘルシンキ会議が開催されることを誠実に望んでいました。もしこの会議が予定通りに開催されていたならば、域内諸国家間の大きな信頼醸成措置になっていたことでしょう。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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