【コペンハーゲンIDN=ジョン・スケールズ・アベリー】
国連は2021年の「世界水の日」のホームページで、次のような事実を指摘している。 現在、3人に1人が安全な飲み水なしで暮らしている。2050年には、最大57億人が1年に1カ月以上、水が不足している地域で生活する可能性がある。
気候変動に強い水供給と衛生設備があれば、毎年36万人以上の乳児の命を救うことができる。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて、1.5度に抑えることができれば、気候に起因する水ストレスを最大50%削減することができる。
異常気象は、過去10年間に発生した大災害の90%以上を引き起こしている。2040年までに、世界のエネルギー需要は25%以上、水需要は50%以上増加すると予測されている。
水が極めて重要な資源であることは明らかであり、人類社会の未来の幸福は、世界に存在する淡水の供給をいかにうまく管理するかにかかっている。そのためには、高いレベルの国際協力と社会正義が必要である。
モード・バーロウ:人権としての水
多くの国で、大企業が水の供給をコントロールし、貧しい市民にとって手の届かない価格で販売している。1947年カナダ生まれのモード・バーロウ氏は、20年以上に亘って水の商品化に反対する運動を牽引してきた。国連はこうした運動の盛り上がりを受けて、2002年11月、「水は人権である」と宣言した。真水がますます不足している現在、この宣言はとりわけ重要な意味合いを持つようになっている。
モード・バーロウ氏の言葉をいくつか引用する:
「この時代に起こっている非常に現実的で大きな社会問題や環境問題に対して、自分にできることは何もないと言う人たちの言葉に耳を傾けてはいけない。」
「今や、健康や教育、食べ物や水、空気、種や遺伝子、伝統など、かつては神聖視されていた生活領域でさえも、あらゆるものが売りに出されている。」
「今日の地球の水危機についてはいくら強調してもしすぎることはない。」
「私たちは、人類、地球、そして他の生物種のために、異なるモデルと異なる未来を構築することに命をかけている。私たちは、経済のグローバル化に代わる道徳的な選択肢を構想しており、それが実現されるまで歩みをとめない。」
「断片的な解決策では、社会全体や生態系の崩壊を防ぐことはできない…価値観や優先順位、政治システムを根本的に考え直すことが急務である。」
中国で水位が低下し続ければアフリカに飢饉が起こるかもしれない。
コペンハーゲン大学での講演後、アースポリシー研究所のレスター・R・ブラウン博士は、「最初に決定的に不足する資源は何か」という質問をされた。聴衆の誰もが「石油」と答えるだろうと予想していたが、ブラウン博士は「淡水」と答えた。
博士は、「このまま中国で水位が下がりつづければまもなく人口を養えなくなる。しかし今の中国の経済力では、世界市場で穀物を購入できるため、国内で飢饉が起こることはないだろう。しかし、中国で淡水が不足すれば、アフリカなどで飢饉が発生することになる。なぜなら、中国の穀物需要は、世界市場の価格を引き上げ、貧しい国々の支払い能力を超えてしまうからだ。」と説明した。
世界的な大規模飢饉の脅威
世界人口を安定化させ、最終的には減少させる努力をしなければ、気候変動、人口増加、化石燃料時代の終焉が重なり、21世紀半ばには大規模な飢饉が発生するという深刻な脅威がある。
ヒマラヤやアンデス山脈の氷河が溶け、インドや中国、南米の夏の水源が奪われ、海面が上昇して東南アジアの肥沃な米作地帯が浸水し、干ばつで北米や欧州南部の食糧生産が減少し、中国、インド、中東、米国で地下水位が下がり、化石燃料投入量が不足して高収量農業が困難になれば、数百万人ではなく、数十億人を巻き込む飢餓状態になる危険がある。(原文へ)
INPS Japan
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