ニュース|パキスタン|モスク襲撃後にタリバンに立ち向かう政府

|パキスタン|モスク襲撃後にタリバンに立ち向かう政府

【ペシャワールIPS=アシュファク・ユフスザイゾフィーン・エブラヒム

アフガニスタンとの国境近くで活動するタリバン寄りの反政府勢力は、政府との和平交渉を打ち切り、7月10、11日のイスラマバードのラル・マスジード(赤いモスク)への軍の襲撃に報復する決意であることを、週末に80人が死亡した治安部隊に対する一連の自爆攻撃により示した。

反体制勢力の強い北西辺境州(NWFP)での反発を予想し、バルヴェーズ・ムシャラフ将軍を大統領とする軍事政府は、ラル・マスジードの施設の制圧後まもなく、部隊を急きょ派遣した。これに対し、この地域からの政府軍撤退を交渉していたタリバン寄りの勢力は、政府軍の移動部隊と防犯施設に自爆攻撃を仕掛けて怒りを示した。

「和平交渉は終わった」とアブドラ・ファルハド氏はNWFPの州都でありアフガニスタンへの主要な出入り口であるこの町、ペシャワールで記者団に語った。

 政府役人は15日に少なくとも44人が自爆攻撃で死亡したことを確認した。スワト地区を移動中の軍の移動部隊が襲撃され、18人が殺害された。さらに警察官採用センターが人間爆弾による攻撃を受け、26人が死亡した。

14日にはワジリスタン北部で少なくとも26人の兵士が車による自爆攻撃で殺害された。ミランシャの町では、タリバンにより、10カ月の和平協定は終わったと告げるビラが配られた。声明は「我々は同胞の生命と財産の安全と保護を目的として協定に調印した。だが政府軍はタリバンへの攻撃を続け、多くの人々を殺害した」と述べている。

2006年9月5日の協定のもとに、在アフガニスタン米軍との合意の一環としてタリバン及びアルカイダ分子と闘ってきたパキスタン軍は退却した。見返りに、民兵はハーミド・カルザイ大統領を支援している米国とNATOの部隊に対する国境を超えた攻撃を停止することに合意した。

ところが、どちらの側も協定の実施状況に関して満足せず、ラル・マスジードの騒動のときにも、軍の25か所の検問所からの撤退に関して交渉が行われていた。

週末の治安部隊への攻撃は、扇動的な聖職者であるマウラナ・ファジルッラーによる、ラル・マスジード強襲を行なった政府に対するジハード(聖戦)の呼びかけに従ったものだった。ラル・マスジードの施設では子供を含む100人以上が大量殺戮される事態となっていた。
 
 ラル・マスジードと付属する女性神学校ジャミア・ハフサでの軍の行動を擁護して、「危険なテロリスト」を暴き、2人の反体制派の聖職者兄弟によるシャリア法(イスラム法)を強行しようとする企てに対抗して国の威信を取り戻すため、テロとの戦いはまだ終わらないとムシャラフ大統領は語った。

弟の方の聖職者アブドル・ラシード・ガジは、テレビのインタビューに応えて、「ムシャラフ政府はラル・マスジードの施設を包囲するなど米国の命令で行動している」と語った後で、襲撃により死亡した。

13日に包囲攻撃が終了した後、ムシャラフ将軍は国民に演説し、神学校あるいはモスクといえどもラル・マスジードの聖職者が行ったような方法で要塞に転換することは決して許されないと強調した。

さらに、ラル・マスジードの運営陣とNWFPの過激派との間で確立されていた結びつきについて、大統領は、法律実施機関である警察の強化を、数を増やし、設備を整え、軍隊の支援を受けた6カ月の特別訓練を通じて行い、対処していくと宣言した。

「大統領は未来を方向付けており、その姿勢を持続可能にできれば、テロとの戦いにおいて我々に勝機がある」と、カラチに本拠を置く政治防衛専門家のイクラム・セーガル氏はIPSの取材に応じて語った。

NWFPでの交戦状態と宗教的過激派を根絶するための政府戦略について、大統領は「我々はすでにいくつかの機関に戦車を配備しており、今後も狂信分子や民兵と対決するために近代兵器を装備していく」と述べた。

週末の攻撃に対し、パキスタンのアフタブ・シェルパオ内務相は、「政府は断固とした行動を取る」と警告した。「政府はこれまで彼ら(部族の長及び民兵)が協定を厳格に実施していないと主張してきた・・・これで政府の行動が正当化される」

「ムシャラフ政府は宗教的道徳的権限という観点が非常に弱い状況にある。感情的な宗教問題が関与するときには、より高い道徳的宗教的権限が必要であり、法律的に正しい軍事力だけでは不十分である。宗教的な信頼感がないのだから、政府は抑制を示すべきだった」とイスラマバードに本拠を置くシンクタンク、ブラスタックスを創設したコンサルタントで防衛専門家のザイード・ハミド氏は語る。

政府の懸念は、襲撃の際の女性と子供を含む死亡者数の多さから悪評が生じていることである。「行方不明者リストの人数がさらに増えると犠牲者の数を隠そうとする政府の試みは反発を受けるだろう」とハミド氏は予測する。

「国家が数字を過少報告する必要はない」とセーガル氏はいう。「今回のような攻撃が行われれば、犠牲者が出るのは当然であり、国民はそれを受け入れるだろう。信頼できる筋からの報告によると、死亡したのは104人である」

モスクの内部で身を隠していた完全武装した訓練を積んだ民兵と軍隊との間で起きた戦闘では、11人の兵士も死亡した。

ハミド氏はムシャラフ大統領がワシントンからの圧力のもとにあわただしく行動を起こしたと考える。「米国はパキスタンの政治家が民兵に対して弱腰になるのではないかと感じて、作戦を完遂するよう圧力をかけたと思う。選挙の年の流血事件は決してよいことではない。理想的には、包囲攻撃を行いながら圧力を増した方がよかった。神経戦で耐えられなくなった」(この記事はIPS記者であるカラチのゾフィーン・エブラヒムとペシャワールのアシュファク・ユスフザイが作成した)(原文へ

翻訳=IPS Japan 

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