【イスラマバードIPS=アミル・ミル】
パキスタンの新しい顔になった人民党(PPP)のユスフ・ギラニ首相は、これまでムシャラフ大統領が進めてきた対テロ武力路線を見直すことを示唆している。
ムシャラフ大統領が行ってきたパキスタンと米国の『対テロ協調』は、2月に行われた総選挙でパキスタン人民党(PPP)およびパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)が第一党に躍進する一因をもたらした。
しかし、ギラニ首相は国民議会の演説でイスラム過激派が武器を捨てるならいつでも対話をする準備ができているとし、「北西部の部族地域が(国際テロ組織アルカイダなど)過激派の温床となっているのは、教育水準の低さや貧困が原因である」と述べた。
これに対して、イスラム武装勢力との強硬姿勢を主張してきた米国は、パキスタンの対テロ政策の今後に気を揉んでいる様子だ。しかし、実際パキスタン情勢はここ数年で少しも好転していない。パキスタン軍は部族勢力との和平合意を成立させたにもかかわらず、テロ行為はむしろ拡大しているのである。
PML-Nのナワズ・シャリフ元首相は、メディアの取材に対して「新政権が求めているのは真の平和であり、パキスタン市民の犠牲ではない」と語り、(米国主導の)対テロ戦争の対応の見直しを強調した。
クルシド・カスリ前外相はIPSの取材に応じて「パキスタン国内に広がる反米感情を利用することで、テロリストは一層勢力を強めている」と語った。パキスタンでは、テロ行為そのものだけでなく米国によるテロ政策にも反発が出ており、ムシャラフ大統領と米国政府は共に苦しい立場に追い込まれている。
先日、ニューズウィーク誌の最新号で「パキスタン領内での米国の攻撃で死者が出たことに関して、ムシャラフ政権は黙認した」との記事が掲載された(パキスタン政府は米軍が領土内に入ることを認めていない)。
対テロ強硬路線を軌道修正するパキスタンの新政権について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩