ニュース|イラン|制裁でなく交渉こそ問題打開への道

|イラン|制裁でなく交渉こそ問題打開への道

【アブダビWAM】

「今こそ、イランと協議すべきときである。制裁を科すなどというときではない。」とアラブ首長国連邦(UAE)の日刊紙が報じた。

カリージタイムス紙は5月15日付の論説の中で、「新たな対イラン制裁へ向けた動きは順調には進んでいないようだ。中国とロシアはイランの核兵器開発を阻止するために懲罰的な手段を講じることには同意したが、米国の対イラン戦略そのものには同意しかねている。」と報じた。

 このことから国連安保理常任理事国5カ国にドイツを加えた「P5プラス1」での交渉は難航している。その原因は関係国の中にイランに対する好意・同情論があるというわけではなく、概して制裁の内容を巡る対立によるものである。このイスラム共和国に対する制裁は、新しい動きではない。事実、イランは過去30年に亘って様々な制裁の対象となってきた。しかし、そうした制裁にも関らずイランはウラン濃縮を諦めていない。

「イランは自ら招いた国際的な孤立に加えて、執拗な制裁を科せられてきたことから、安全保障の手段として極端な手段(核開発)を模索するようになった。従って、制裁を科すかどうかは別として、国際社会はイラン革命政権との交渉を通じて、国際社会の一員に復帰させることに主眼を置くべきである。すなわち、イランの安全保障と独立に関する問題を含めた包括的な取り組みがなされてはじめて、今日の状況は打開に向かって動き始めるだろう。」と、カリージタイムズ紙は報じた。

同紙は、イランが、NPT運用検討会議で現行のNPT体制を痛烈に非難して議論を大いに紛糾された後、様々な条件を出しながらも冷静な交渉を行う用意がある意思を示している点を指摘した。また、イランがトルコ・ブラジルの仲介案(イランは、国内の低濃縮ウラン1.2トンをトルコに搬出しIAEAの管理下に置く代わりに20%に濃縮・加工された核燃料棒120キロを受け取るというもので、安保理非常任理事国でもある両国は、これでもって米国が中心になって進めようとしている対イラン追加制裁措置は必要なくなったと主張している:IPSJ)を受け入れたことを国際社会は認知し適切な対応をすべきである。さらに、イランは国連が推した低濃縮ウランと燃料棒の交換案は拒否したものの、その後一連の代替提案を申し出ている。

同紙は、「こうしたイランの動きについても、欧米諸国が(イランの核開発疑惑について)従来表明してきた懸念内容と十分照らし合わせ検討する必要がある。また、現在対イラン追加制裁に向けた協議を同盟諸国と進めている米国に対して、発想を転換してイランへの対話を呼びかけるようアドバイスすべきだ。」と報じた。

同紙は、「おそらく米国は参考にすべき問題解決への処方箋を持っているはずです。米国は、かつてリビアを説得して友好国に転換し、北朝鮮に対しても説得して協議を通じた核危機の回避を志向させた実績がある。それを考えればイラン問題もそんなに困難な問題ではないはずだ。」と報じた。

さらに同紙は、「イランは核不拡散条約(NPT)加盟国であり、常に国際原子力機関(IAEA)に協力してきた。しかもイラン指導部は、核兵器は本質的に非イスラム的だという認識を示している」と指摘し、「リビア、北朝鮮と異なり、イランにはいくつかのメリットがある。」と指摘した。

カリージタイムズ紙は、「こうしたメリットはイランとの交渉の出発点に十分なり得るものであり、イランの核開発を巡って紛糾している問題は、同国が抱えている安全保障上の不安と孤立感にも配慮した包括的な取り組みをもって初めて打開に向けた方向性を見出すことができる。」と指摘した。

同紙は、「制裁を通じてイランを屈服させるという選択は、非現実的なアプローチであり、今はむしろ制裁よりも、イランとの対話をすすめる時だ。」と締めくくった。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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