ニュース国際情勢を見誤らないために―地政学的変化への適応

国際情勢を見誤らないために―地政学的変化への適応

【モントリオールPressenza=サミール・ソール/ミシェル・セイモア】

政治的出来事を理解するには、歴史的視点から捉えることが重要である。だが情勢は急速に変化しており、私たちは現在の現実にも適応しなければならない。そのためには、思考を「いまこの状況」にしっかりと根づかせる必要がある。

文脈化に不可欠な歴史家の視点は、重大な出来事―それ自体が歴史的な意味合いを帯び得る出来事―の進行に後れを取られまいとする同時代的分析によって補われるべきである。確かに、過去は未来の坩堝である。長期に焦点を当てれば、「太陽の下に新しいものはほとんどない」と考えがちだ。とはいえ、ある種の出来事はしばしば歴史的な新局面をもたらす。

私たちは前回の記事(「国家による誘拐―帝国主義の兵器庫に加わった新たな道具」)で、ホワイトハウスがベネズエラを屈服させるために講じた新たな手口を報告した。旧来の手法はもちろん続いている。制裁は維持され、石油タンカーの拿捕は露骨な海賊行為を想起させる。石油資源を奪い取ろうとする露骨な欲望は、ギャングの所業に等しい。

だが、今回の手口には新たな特徴がある。大統領を拉致しつつ政府の残りは温存する―それは、地上軍の派兵を伴う軍事占領とも、代理戦争とも、政権転覆とも異なる、新しい形の米国介入である。そこには「保護国化」という新たな支配形態が立ち現れている。

出来事は奔流のように重なり合い、旧来の政治状況を一気に新たな現実へと変貌させる。しかもその現実はしばしば、一部の人々の頭の中に残り続ける「旧い現実」と正反対である。

イスラエル

例えば、第二次世界大戦中にナチスのジェノサイドの犠牲となったアシュケナジ系ユダヤ人を想起すべきだろう。筆者らは、イスラエルによる戦争犯罪や人道に対する罪は、2023年10月7日以降に突然始まったものではないと主張する。そのうえで、同国は短期間のうちに「ジェノサイド国家」へと変貌し、パレスチナ人民に対して非人間的な残虐さを示している、と断じる。

しかし、(スラブ系やロマの人々を含む犠牲を忘れてはならないが)ジェノサイドが起きた欧州は、現在の現実に認識を合わせ、この新たな恐怖を正しく測ることに消極的であるか、あるいはできないでいる―というのが筆者らの見立てである。

中国

急速かつ劇的な変化のもう一つの例が中国である。20世紀末にはまだ貧しかったこの国は、わずか20年ほどで8億人を貧困から脱却させた。中国はいまや世界最大級の経済大国となりつつあり、ハイテク分野でも主導的な地位を占めている。中国は自国の主権を強く守る姿勢をとり、その延長として他国の主権を尊重することが自国の利益にもかなうと考えている。対外軍事介入も、最後は1979年にさかのぼるとされる。中国は武力によって支配を押し付ける国ではなく、現状でも帝国主義的な振る舞いは見せていない。「中華帝国」という呼び名も、過去を参照した名目上のものにすぎない。

それにもかかわらず、ここでも時代遅れの見方が残っている。多くの人々は、中国の経済的拡張を、過去80年にわたる米国の行動になぞらえて理解しがちである。協力を基盤とし、最良の実践を共有しながら、各国の主権を尊重する外交という発想を受け入れることが難しいのである。そのため、中国の国外での経済活動は、第三国の資源を吸い上げるだけのものだと見なされがちだ。互恵的な関係が中国自身の利益にもなるという見方は、なお広く共有されているとは言い難い。

こうして、多くの人々は米国の「対中封じ込め」政策―中国の行動余地を狭めるため、南シナ海や北極海で圧力をかける姿勢―に同調しがちであり、ベネズエラやイランからの資源へのアクセスを断つことさえ受け入れてしまう場合がある。

米国

米国は、代議制民主主義を前進させつつあるかに見えた。行政府、下院、上院、最高裁からなる抑制と均衡の仕組みが、その約束を実現する道として示された。4年に一度の大統領選に加え中間選挙もあり、国民の政治的関心は継続的に喚起される―という設計である。

しかし、ベルリンの壁崩壊、ワルシャワ条約機構の終焉、ソ連解体を経て、米国は単独覇権の驕りに陥った。世界を統治できると考え、新自由主義的資本主義を各地に押し付け、巨大企業が資源を獲得するために世界へ展開できるよう自由貿易協定を推進した。「国家安全保障」の射程は、イラン、ロシア、中国の国境付近にまで拡張された。米国帝国主義はいまなお「唯一の覇権国」の地位を望み、その支配を貫くために政権の不安定化、混乱の創出、軍事介入、制裁を手段として用いる。

彼らはいまも「世界を統治できるのは米国だけだ」と公言している(ジョー・バイデンはカマラ・ハリスの民主党大統領候補指名の場で同趣旨を述べたという)。歴史的に見れば、米国にはその理想を支える手段があった。1945年から近年まで世界最大の経済大国であり、ドルはいまも事実上の基軸通貨、英語は国際的な共通語であり、ハリウッドは映画様式を世界に広めてきた。米国が約800の軍事基地を維持し、軍産複合体に巨額を投じ、1991年以降だけでも多数の介入を重ねてきたことは広く知られている。制裁は個人・企業・国家を含む膨大な対象に及ぶ。米国は、ガザでのジェノサイドへの加担、シリア領の一部占領、ベネズエラの石油タンカー拿捕、国家元首の誘拐、グリーンランドへの野心、さらには台湾への米軍配備に至るまで、あらゆる行為が許されると考えている―というのが筆者の見立てである。

この帝国主義的志向は、ドナルド・トランプの復帰(2025年1月20日)で突然生まれたものではない。何十年も前から存在してきた。米国にとって最大の資産は、ビッグファーマでもビッグテックでも化石燃料産業でも軍産複合体でもなく、民主主義や人権、法の支配でもない。最大の資産はドルだ、というのである。

だが、この図式にも暗雲がある。貿易赤字は年1兆ドル規模に達し、債務は38兆ドルを超え、利払い負担も重くなる。米当局は「脱ドル化」の加速を恐れている。ドルの地位を守るには、サダム・フセインのように石油をユーロで売ろうとした者、ムアンマル・カダフィのように汎アフリカ通貨を構想した者、あるいはBRICS諸国のようにドル抜きの貿易を志向する動きを無力化する必要がある―と筆者らは言う。戦争は、別の手段による経済闘争の継続である。

要するに、誰もが必要とする資源―ガスと石油―の決済方法を支配することが要諦であり、これらは米ドルで売買されなければならない。そこから、サウジアラビアとは石油で、カタールとはガスで結びつくという関係が導かれる。さらに筆者らは、バッシャール・アル=アサドがカタール案ではなくイラン案のパイプラインを選んだことがシリア戦争につながった、と論じる。北イラクやシリアの一部への米国の関与、イランへの敵視、欧州とロシアのエネルギー取引の切り離し、ノルドストリームの破壊、ベネズエラ介入―これらも同じ文脈で語られる。

驚くべきことに、なおも米国を「民主主義、人権、法の支配を打ち立てようとする世界の警察」と見る人がいる。USAIDの終焉を嘆き、全米民主主義基金(NED)を称賛する者さえいる。戦後好況の記憶、「丘の上の輝く街」という比喩――理想主義的な米国像は、トランプというファシズム的指導者の台頭と日々の奇行を経ても、なお一部の人々の意識に残り続けている。米国の夢を信じ続けるには、深い政治的昏睡状態にあるほかない。

ロシア

ロシアについても、一部には時代錯誤的な認識が残っている。20世紀初頭まで続いた帝国主義の時代の後、ロシア帝国はソ連(USSR)へと置き換えられた。レーニンのもとで、ソ連は多民族連邦への道を歩み始め、生産手段の国家管理は連邦と構成共和国の間でより共有される構想であった。15の共和国には形式上、脱退権も認められていた。

しかし、西側の敵意やナチス・ドイツの脅威が増すにつれ、中央集権化を進めざるを得なくなった。資源の集団化は一部地域で飢饉を招き、ドイツとの戦争も「大祖国戦争」として総力戦で臨むほかなかった。

欧州の植民地体制の終焉と民族自決の進展は、米国とソ連の利害が重なった結果でもあった。両国はいずれも勢力圏の拡大を目指し、そのためにアジア、中東、アフリカに残る欧州列強の影響力を排除する必要があった。ワルシャワ条約機構による勢力圏も、西方からの侵攻を防ぐための緩衝地帯として機能した。

ソ連崩壊後、ロシアは市場経済と資本主義へ移行したが、その過程の混乱は国民を深刻な経済危機に直面させた。国家の最優先課題は、この混乱から立ち直り、ロシア国民のナショナリズムを背景に、オリガルヒの強大な影響力を抑えることであった。経済回復は主に欧州との取引を通じて進み、その多くはプーチン政権下で実現したとされる。ロシア連邦は世界最大の領土を持つが、人口は約1億5000万人にすぎず、さらなる領土拡張が現実的な目標であるとは考えにくい。

ロシアはNATO加盟国に囲まれ、国外の軍事基地も近隣の旧ソ連諸国にある約10カ所に限られる。軍備は主に自国領内に集中しており、対外軍事介入も極めて少ない。2020年、ウクライナ侵攻前の軍事予算は年間約600億ドルであり、2025年でも約13兆5000億ルーブル(約1620億ドル)とされ、米国の1兆ドル規模とは比較にならない。中国やイランと同様、ロシアは米国に対するナショナリズムに基づく抵抗を示している。ロシアがウクライナ領内への米国のミサイル配備を望まないのは、それが国家存亡に関わる即時の脅威となり、数分以内に重大な決断を迫られる状況を生むからだ。したがって、筆者らはウクライナ戦争を防衛的行動と位置づけている。

過去は現在を規定するのか

ロシア帝国主義が復活しているように見えるかもしれない。だが、少なくとも現時点ではそうではない。プーチンを「第二のエカチェリーナ2世」とみなす見立ては、戦時に典型的な、西側の足並みのそろった言説によって助長されている。敵を悪魔化し、その敵を「悪そのもの」として固定化することは、戦争を長期化させ、エスカレーションを促す。これは、スロボダン・ミロシェビッチ、サダム・フセイン、ムアンマル・カダフィ、バッシャール・アル=アサドの事例でも繰り返し用いられてきた古い戦術である。これらの指導者に欠点がなかったわけではないにせよ、米国はこの手法によって世論形成に成功してきた、というのである。

当初は強大だったロシアのオリガルヒは、USSR崩壊後の無秩序に苦しんだ国民の支持を背景に、政治権力の統制下に入った。しかも米国とは異なり、多くのロシアのオリガルヒはナショナリストであり、そうでない者は西側へ移住する。ロシア国民は、国家の方向を強く統制する、強固で持続的な政治権力を好む。他方で米国のほうが、ビリオネアがビッグテック、ビッグファーマ、化石燃料産業、軍産複合体を支配し、主要メディアと政治権力にも影響を及ぼしているという意味で、よりオリガルヒ的統治に近い――と筆者らは対比する。

ウクライナ侵攻を「ロシア帝国主義の再来」と解釈し続けるために、人は歴史に訴える議論を用いたくなるかもしれない。過去が未来の坩堝であるなら、古い分析枠組みで現在を理解すべきではないのか、という問いである。私たち自身、出来事を文脈に戻す必要を説いてきたし、ウクライナ戦争を理解するには歴史的視点が必要だった。だが、歴史それ自体が「帝国主義ロシア」という像を提示しているのではないか。

私たちは、2025年にパリのラルマッタン社から刊行した『21世紀の世界紛争(Le conflit mondial au XXIe siècle)』で、その逆を示した。米国の「制裁」は、いわれなき侵略への反応ではなかった。むしろ制裁こそが真の目的であり、ロシアのウクライナ介入を誘発する挑発が意図されたのである。2008年のジョージアの前例によって、米国はウクライナでも同様の介入が起きることを期待できた。西側で反復された「いわれなき侵略」という語りは、欧州にロシア産の石油・ガスへのアクセス放棄を納得させるための最良の方法だった。善意の民主主義的警察官としての米国像と、古来の帝国主義ロシア像は、欧州首脳に米国の「制裁」を受け入れさせることに成功した。だが、その制裁は米国には都合がよく、欧州を明らかに不利な経済状況に置いた。今日、欧州の指導者たちはその帰結に直面している。

結論

目の前で展開する米国帝国主義の異様さを見抜くのに、左派である必要はない。カナダのマーク・カーニー首相は、いわゆる「ルールに基づく国際秩序」から距離を取った。彼が本気かどうかは今後明らかになる。だが、いまからでも遅くない。

新たな現実に適応できないことは、紛争が長引く重要な要因になり得る。政治的アナクロニズム(時代錯誤)は、軍事対立を正当化するために操作され得る。米国の帝国主義的野心に対する西側同盟国の意図的な黙認は、イラク、アフガニスタン、リビア、ソマリア、シリア、イエメン、スーダン、ウクライナ、パレスチナで世界を荒廃させてきた。西側自身が被害者になって初めて、覚醒が芽生え始めたのである。これこそが、ドナルド・トランプ版・米国帝国主義の最大の「革新」だ。すなわち、敵と戦うだけでなく、従順であろうとする同盟国さえも、搾取し、脅し、呑み込もうとする。

ウクライナ戦争の真の犠牲者はウクライナ人民である。戦争の責任をロシアに帰することは、米国帝国主義とロシアの安全保障上の懸念を深く誤解することに由来する。そのうえ、それは米国が意図的に醸成し流布してきた、時代錯誤的でロシア嫌悪的なイメージに依拠している。西側を「啓蒙」と同義とみなす虚構の文明論的ビジョンにしがみついた結果、欧州は米国の命令に盲従する傾向を強めた。時代遅れの「米国の夢」という幻想があったからこそ、このならず者国家の好戦性は受け入れられてしまったのである。

歴史は、世界が変わらないと信じない限りにおいて、現在の世界に光を当てる。

サミール・ソール:パリで歴史学の国家博士号(doctorat d’État)を取得。モントリオール大学(Université de Montréal)国際史教授。最新刊は『Imperialism, As Rampant Today as in the Past(帝国主義――過去と同様に今日も横行する)』(2025年)。そのほかの著書に『L’Impérialisme, passé et présent. Un essai(帝国主義――過去と現在:試論)』(2023年)、『Intérêts économiques français et décolonisation de l’Afrique du Nord (1945-1962)』(2016年)、『La France et l’Égypte de 1882 à 1914. Intérêts économiques et implications politiques』(1997年)など。共編著に『Méditerranée, Moyen-Orient : deux siècles de relations internationales』(2003年)。ミシェル・セイモアとの共著に『Le conflit mondial au XXIe siècle(21世紀の世界紛争)』(2025年)。
連絡先:samir.saul@umontreal.ca

ミシェル・セイモア:モントリオール大学哲学科名誉教授(1990~2019年在職)。著書に『A Liberal Theory of Collective Rights』(2017年)、『La nation pluraliste(複数的国家)』(ジェローム・ゴスラン=タップとの共著。カナダ哲学協会賞受賞)、『De la tolérance à la reconnaissance(寛容から承認へ)』(2008年。カナダ人文社会科学連盟ジャン=シャルル・ファラルドー賞受賞)など。『Le pari de la démesure』(2001年)で雑誌『Action nationale』リシャール・アレス賞を受賞。サミール・ソールとの共著に『Le conflit mondial au XXIe siècle(21世紀の世界紛争)』(2025年)。
連絡先:seymour@videotron.ca
ウェブサイト:michelseymour.org

Original URL: https://www.pressenza.com/2026/01/adapting-to-geopolitical-changes-a-necessary-skill-to-avoid-going-astray-internationally/

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