【イスラマバードLondon Post=ムハンマド・ラシッド】
米国と中国の戦略的競争は、台湾海峡や南シナ海にとどまらず、中東と中央アジアにも新たな前線を広げつつある。イランの原油輸出拠点カーグ島をめぐる緊張、ホルムズ海峡の海上交通、さらにアフガニスタン・バグラム空軍基地をめぐる思惑は、エネルギー安全保障と軍事的優位を軸に、米中対立がより多層的な局面に入ったことを示している。
冷戦後、中国は、かつてソ連、そしてその後のロシアが占めていた地政学的な位置に代わる形で、米国にとって最大の戦略的競争相手として台頭してきた。米国がなお軍事同盟や軍事介入に大きく依存して自国の利益を守ろうとしているのに対し、中国は主として経済的影響力の拡大に力を注ぎ、直接的な軍事衝突を避けてきた。
この対立の複雑さを改めて浮き彫りにしているのが、中東における最近の情勢である。米国、イスラエル、イランを巻き込む現在の紛争は、2026年初頭にイラン国内の複数の軍事施設が空爆を受けたことで激化した。国際社会の関心は、その直接的な被害だけでなく、世界のエネルギー市場や大国間競争に及ぼす影響にも向けられている。

焦点の一つとなっているのが、イラン南岸沖にある同国最大の原油輸出拠点、カーグ島である。同島は、イランの原油輸出の約9割を担う要衝だ。
トランプ大統領や米軍当局者の説明によれば、最近の攻撃は島内の軍事施設を標的としたが、主要な石油インフラは意図的に回避された。攻撃後も、カーグ島はおおむね稼働を維持している。ただ、米国は、イランが戦略的要衝であるホルムズ海峡の海上交通を妨害すれば、さらなる軍事行動に踏み切る可能性があると警告している。ここにエネルギー安全保障が重なり、事態の意味合いはいっそう大きくなっている。
中国は近年、イラン産原油の最大級の輸入国の一つであり、石油輸入全体の推定25~30%をイランに依存してきた。ロシアからの輸入拡大や戦略備蓄の積み増しによって調達先の多様化を図ってはいるものの、イラン産原油はなお中国のエネルギー供給における重要な柱である。今回の紛争を受けて、中国は供給混乱に備えるため、輸入の前倒しと備蓄の拡大を進めている。
一部のアナリストは、この地域における米国の行動、なかでもイラン攻撃へのイスラエルの関与には、中国のエネルギーアクセスを抑え込む狙いも含まれている可能性があるとみている。とりわけ、カーグ島を経由するイランの原油輸出に圧力をかけることで、中国のエネルギー安全保障を揺さぶろうとしている、という見方である。
こうした手法について批判的な論者は、中国の台頭を鈍らせることを狙った危うい戦略的賭けだと指摘する。しかも、米中の競争は中東だけにとどまらない。南アジアと中央アジアでも、そのせめぎ合いは新たな局面に入っている。

トランプ大統領は最近、アフガニスタンのバグラム空軍基地に米国の拠点を再構築することへの関心を示した。同氏はこの基地について、とりわけ新疆など中国西部における核・軍事動向を監視するうえで戦略的に重要だと述べている。バグラムは中国の主要な核施設から1200マイル以上離れているものの、支持者は、情報収集・監視・偵察能力の強化につながる可能性があると主張する。これに対し、タリバン政権は外国軍のアフガン再展開を認めるいかなる提案も断固として拒否している。
一方、中国は慎重で計算された外交路線を崩していない。米国やその同盟国が関与する軍事紛争に直接踏み込むのではなく、北京は経済拡大と外交的関与を優先してきた。過去20年で中国は世界第2の経済大国へと成長し、「一帯一路」構想をはじめとする大規模インフラ計画や貿易連携を通じて、国際的な影響力を着実に広げてきた。

東アジアでは、南シナ海や台湾をめぐる緊張が依然として高い。米国は、中国の台頭に対抗するため、この地域での軍事展開と同盟強化を進めてきた。しかし中国は、軍事的エスカレーションを最後の手段と位置づけ、直接対決を避ける姿勢を維持している。

この慎重さには、ロシアのウクライナ侵攻から得た教訓もあるとみられる。プーチン大統領の下でロシアは大国としての地位を再主張しようとしたが、結果として長期化する戦争に深く絡め取られた。この紛争がロシアを戦略的に弱体化させたとみる向きは少なくなく、中国は同じ轍を踏むことを避けようとしているように見える。
地域外交の面でも、中国は存在感を強めている。現在、中国はパキスタンとアフガニスタンの緊張緩和を仲介している。国境を越える安全保障上の懸念に加え、とりわけパキスタン・タリバン運動(TTP)をめぐる武装勢力の活動によって、2026年初頭には衝突が激化しているためだ。中国の特使はパキスタンとアフガニスタンの間を行き来し、地域安定の維持に向けて対話と停戦を呼びかけている。

こうした仲介努力の背景には、この地域における中国の経済的利益がある。とりわけ、「一帯一路」構想の重要な柱である中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の安定は北京にとって死活的に重要である。パキスタンが対テロ作戦で強硬姿勢を崩さない一方、中国はどちらか一方に露骨に肩入れすることを避けつつ、緊張緩和を促している。
中東、東欧、アジアで地政学的な火種が相次ぐなか、中国の長期戦略は一段と鮮明になっている。経済成長の勢いを維持し、利益にかなう場面では外交的関与を進める一方で、対米競争というより大きな国家戦略を損ないかねない戦争への深入りは避ける―それが中国の基本姿勢だと言える。(原文へ)
INPS Japan
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