SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)年間50件以上の紛争による死者数の増加

年間50件以上の紛争による死者数の増加

【国連IDN=タリフ・ディーン

世界の武力紛争による死者数は、2022年だけで23万7000人を超え、そのほとんどがウクライナとエチオピアの戦争によるものである。

オスロ平和研究所(PRIO)が6月7日に発表した新たな調査報告書によると、2022年の戦闘関連死者数は、エチオピアのティグレ地方での戦争が10万人以上を占め、ロシアによるウクライナ侵攻(8万1000人以上)よりも多い。

Photo: Ethiopian federal government's "final offensive" against Tigray regional forces. Credit: Ethiopian News Agency
Photo: Ethiopian federal government’s “final offensive” against Tigray regional forces. Credit: Ethiopian News Agency

「オスロ平和研究所のシリ・アース・ルスタッド教授は、「2022年、エチオピア戦争は、ウクライナ、イエメン、ミャンマー、ナイジェリア、ソマリア、マリ、ブルキナファソにおける戦闘関連死者数の合計を上回る犠牲者を生んでいます。ロシアのウクライナ侵攻が世界的にニュースの見出しを飾った一方で、エチオピアではかつてない規模の残虐行為が横行していました。」と語った。

最新の統計によれば、2022年には1994年以来、どの年よりも多くの武力紛争、戦闘に関連した死者が出ている。ウクライナとエチオピアにおける戦争が、2022年の戦闘関連死者数(23万7000人超)の主な原因となっている。

オスロ平和研究所の調査報告書「紛争のトレンド:A Global Overview, 1946-2022」は、1946年から2022年までの世界の紛争動向を分析したもので、社会科学の研究者やジャーナリスト及び政治家によって利用されている。

この調査は、スウェーデンのウプサラ大学の紛争データ・プログラムが毎年収集しているデータを使用している。

Conflict Trends: A Global Overview, 1946–2022・Photo:PRIO
Conflict Trends: A Global Overview, 1946–2022・Photo:PRIO

一方、国際の平和と安全の維持を使命とする国連は、主に国連安保理における新冷戦(一方が中国とロシア、もう一方が米国、英国とフランス)を背景に、ウクライナ、イエメン、アフガニスタン、シリア、エチオピア、スーダンなど、現在進行中の紛争や内戦の解決に失敗している。

ウプサラ大学平和・紛争研究所ウプサラ紛争データ・プログラム(UCDP)のテレーズ・ペターソンプロジェクト・マネージャーは、IDNの取材に対して「今の国連安保理は、世界の現状に対処するには明らかに機能不全に陥っており、この行き詰まりがいくつかの紛争の解決を困難にしています。しかし、紛争解決を促進できる多国間機関は、例えばアフリカ連合や欧州連合等、国連安保理以外にもあります。さらに、ほとんどの紛争は国連が仲介する平和協定で終結するのではなく、むしろ戦闘が単に停止するなどの他の状況下で終わることも少なくありません。」と指摘した。

新報告書は、「2022年を通じて、武力紛争の数は依然として高いまま推移し、戦闘関連の死者数が増加した。武力紛争の影響を受けた38カ国で55の紛争が発生し、その内8つが戦争(年間1000人以上の戦闘関連死者数が記録される)に分類された。

ルスタッド教授は、「この10年で、武力紛争が憂慮すべきほど増加しており、過去8年間、毎年50件以上の紛争が起きています。これは部分的には、アフリカ、アジア、中東でイスラム国が拡大したためです。このテロリスト集団は2022年には15カ国で武力紛争に関与しています。」と語った。

武力紛争といえば従来内戦が主流だったが、この10年で、この種の紛争はますます国境を超える様相を見せており、このことが戦闘に関連した死者数を増やす原因にもなっている。内戦が国際化したとみなされるのは、1つまたは複数の外国の政府が、内戦当事者のいずれかの側に立って戦闘要員の提供または派遣などして関与している場合である。

ウプサラ紛争データ・プログラムのペターソンプロジェクト・マネージャーは、「外国の政府が、紛争国の反政府勢力に兵力を支援することがますます一般的になっており、これは本質的に国軍同士が戦っていることを意味します。」と説明した。

イスラム国や、ワグネル・グループのような民間軍事組織など、この10年で、武力紛争における、非国家武装集団の関与が増大した。こうした集団は、紛争の影響を受けている国内および国家間の紛争ダイナミクスを変化させる。例えば、サヘル地域でワグネル・グループの活動が活発化すれば、現地の反政府グループによるリクルート活動が増えるかもしれない。

非国家主体が関与する武力紛争に関しては、最新の数字では2022年に82件の武力紛争が発生し、2021年の76件から増加している。紛争件数が増加にもかかわらず、戦闘関連の死者数は20,000人強と、約4,000人減少した。これは、比較的小規模な武力紛争が増加したことを示唆している。

A breakaway of Boko Haram faction. Source: Institute for Security Studies.
A breakaway of Boko Haram faction. Source: Institute for Security Studies.

非国家主体が関与した武力紛争が最も多発しているのはアフリカで、次いでアメリカ大陸である。メキシコは依然として非国家主体が関与した武力紛争で最も暴力的な国のひとつであり、14,000人以上の戦闘関連死が記録された。

一方、国連総会は6月7日、本会議を開き、GUAM地域(=ジョージアGeorgia〉、ウクライナ〈Ukraine〉、アゼルバイジャン〈Azerbaijian〉、モルドバMoldova〉)において長期化する紛争」について協議した。つまり、グルジアのアブハジア及びツヒンヴァリ地方(南オセチア)からの国内避難民・難民の状況に焦点を当てた、グルジアが提出した決議案についてである。(原文へ

INPS Japan

関連記事:

ロシアと中国がアフリカで協力関係を構築、米国は遅れをとる

国連が20の国・地域で飢餓が急増すると警告

ウクライナ危機はパワーシフトの時代の地政学的な断層を映し出す

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken