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【ナイロビIPS=ナジュム・ムシュタク】

1月以来、政治意識の高いケニアの詩人、作家、ストーリーテラーの団体が、今年初頭2カ月余ケニアを揺るがした暴力について既製の記事に代わる記録を書き始めた。こうした彼らの作品が、ケニアの大統領選後の暴動について調査にあたるWaki Commissionに証拠として採用された。

Waki Commissionに証拠として審理されるのは、作家たちの団体Concerned Kenyan Writers(CKW)が作成した報道記事から印象記に至るまでの作品集である。CKWは、論争の的となっている2007年12月27日の選挙後に発生した暴動に対応しようと、作家たちが結集したものである。

ナイロビに本拠を置く作家や芸術家の共同体Kwani TrustのディレクターShalini Gidoomai氏は次のように語る。「この危機に自分たちは何をすれば役立つことができるのか。世界のメディアが民族の憎悪と集団暴力に飲み込まれた国としてケニアを描くなか、社会のあらゆる方面でたくさんの人がまずこのことを考えた」

「私たち作家も、この問いを逃れることはできなかった。何かをしなければならない。人々を支援するために私たちが使うことのできる技能は唯一、書くことだった」

そして彼らは書いた。この団体によってこれまでに160点を超えるニュースや分析記事のみならず詩や短編が書かれ、世界中で発表された。CKWは、ケニアの視点から危機を報道するため、ケニアの著名な作家の参加を得るだけでなく、駆け出しのジャーナリストの訓練も行った。

また、CKWが創作した物語や詩の一部は、学校のカリキュラムにも取り込まれるよう教育省に提出された。

CKWは、Concerned Citizens for Peace(CCP)やその他市民社会団体の事務所を含むナイロビのさまざまな会場でCCPが連日主催した市民集会がその出発点である。元外交官のBethuel Kiplagat率いるCCPはすぐに、ケニアの個人やCKWなどの団体による平和の取り組みを育成・推進する統括組織となった。

Shalini氏はIPSの取材に応えて「国際メディアが暗黒大陸の典型的な筋立てを語って不正確な報道をするなかで、ケニアの作家からそれを修正しようとの動きが起きたことは当然のことだ。私たちはジャーナリストではない。でも、ケニアという国とその国民をほとんど知らない記者たちが暴動について十分な情報もなく、偏見に基づいたまま誤解を招くおそれのある報道を行っていることが明らかになったとき、私たちができることは自分たちの技能を使ってそれに対応することだった」と語った。
 
 「センセーショナルで非人間的な映像を通して、野蛮な行為が単純化されてニュースとして世界に伝えられるなかで、紛争のただ中このように決然と分析と議論に取り掛かったのは世界でも私たちが初めてだろう」

世界の注目を集めた最初の映像のひとつは、逃げようとしたものの鉈でたたき切られた男性のようすだった。憤慨した作家の団体は、スカイニュースに放映を止めるよう抗議文を送った。

Shalini氏は「たとえば9・11や2005年のロンドンの同時爆破事件で、テロの犠牲者のバラバラになった血まみれの遺体を西側メディアが映し出したことは一度もない。ケニアの惨事には、なぜ異なるアプローチを採るのか」と訴える。

民族や部族に焦点を当てた既成の筋書きの中で、実際の出来事やその複雑な原因が見失われてしまっている。たとえば、暴徒の第一群の中に、ケニア西部のエルドレトの割礼キャンプで成人儀礼を終えたばかりの数千人のカレンジン族の若者がいたことに気付いた国際メディアはない。

新たに力と男性としての意識を得た数千人のカレンジン族の若者は、西部の各都市を通りリフトバレー州のナクル市に至るまで「彼らの」土地に暮らす「外部者」の農場や家屋に火を放つなど暴れ回りながら行進し続けた。

「こうした社会学的・心理学的要因は、センセーショナルなことやステレオタイプなことに主に関心を寄せる国際メディアには理解の及ばないことだ」と言うShalini氏は、技術訓練も受けておらず、仕事もなく、欲求不満を募らす若者が増えて、傷ついた平和に脅威を与え続けていると考える。

社会問題や民族問題を扱う雑誌Wajibuの編集長Dipesh Pabari氏は、当初の報道はまた、部族や政治的所属に関係なく被害者の救助に積極的にあたったケニアの何百人という一般市民の勇気や思いやりについても伝えていないと指摘する。

そうした市民のひとりである23歳の青年は、誰からの支援もなしにSMSホットラインを立ち上げた。さまざまな苦難を訴える人々、あるいは助けを必要としている人々から毎日何百という苦悩の電話が寄せられている。

「暴動の最中命がけで847人の避難民を受入れた森林監視人がいた。中等学校には、恐怖と憎悪が渦巻く中で勇気をもって学生たちに率直に語りかけ、学生たちの行動の変革を呼び起こし、偏見を受容に変えた若者たちがいた。死者に花を手向け、途中で治安部隊の面々にも献花をするように促した女性たちがいた」

Pabari氏は「こうした話には共通に見られることがひとつある。世話をした人々は、部族も人種も超えて物事を見、困っている人々の共通の人間性に目を向けたのだ」と話す。彼の雑誌の最新号では、CKWの作家や詩人の作品を特集し、秘話を紹介した。

CKWの活動は今なお続いている。ケニアの文学の創作と普及を進めているKwani Trustでは、アフリカ各地から著名人を招いて近頃のことそして今後の進むべき道について考える2週間の文学祭を8月1日に開幕した。テーマは、「ケニアを再検討する」である。

「自分を欺くことはやめよう。新しいケニアを実際に経験するためには、政策と意識の両方で痛みを伴う抜本的な変革が必要とされる。まだまだ先は長い」とPabari氏は言う。「(暴力を生き存えた避難民らが)いつ、どこにどのようにして再び落ち着くことができるのか。これが、新しいケニアを築く私たちの決意を試す試金石となるだろう」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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