【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】
米国の移民政策をめぐり、共和党の内部で二つの立場が激しく争っている。一方は、国境管理を厳しくし不法滞在者を強制退去させることを望む強硬派であり、もう一方は、不法滞在移民の経済的役割を認める産業界寄りの立場である。
下院はすでに、下院司法委員会のセンセンブレナー・ジュニア氏が中心となって、かなり強硬な法律を通過させている。この法律によれば、メキシコ国境沿いにフェンスが設置され、移民法制違反に対する罰則が厳しくなる。違法行為には、不法入国の奨励や、いったん国外退去処分になった後の再入国といった行為も含まれる。また、外国人に国外退去処分を科しうる要件が広まる。さらに、企業の経営者に対して、社会保障番号を使って社員の身元を確実に調べるよう求めている。
一方、上院では、昨年2つの法律が上程された。ひとつは、ジョン・マケイン議員とエドワード・ケネディ議員が提案した、「働いて留まる」というアプローチにのっとった法律案である。同案は、入国管理をより厳しくすることを求めてはいるものの、同時に、一時滞在労働者(ゲスト・ワーカー)プログラムの創設も定めている。不法滞在者であっても、1000ドルの罰金と同プログラムの参加料を支払えば、6年後には永住権を取得できるというものだ。
もうひとつは、「働いて帰国する」というより厳しいアプローチを代表するもので、ジョン・コーナイン議員とジョン・カイル議員が提案したものである。
しかし、上院での議論の核になりそうなものは、上院司法委員会のアーレン・スペクター委員長が提案した「2006年包括的移民改革法案」である。同法案では、不法滞在者であったとしても、税金を払い、労働者として働き続け、身元がはっきりしているならば、国外退去処分にはしないと定められている。
しかし、下院の通した強硬派の法律と、上院のスペクター法案との間には、内容的にかなりの開きがあり、妥協が用意であるとは思われない。米国の移民改革論議について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan
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