【INPS Japan/ 国連ニュース】
かつてアフガニスタンで、法的地位も教育を受ける権利も持たずに生きていた10代の少女、マディハ・アリ・チャンゲジさん。今では、難民再定住の重要性を訴える当事者として、国際社会に向けて積極的に発信している。
現在、彼女はニュージーランドで難民および人権を専門とする弁護士として活動しており、14歳で故郷を追われた自身の経験と、その後に続いた不安定な生活について、6月26日の会合で証言した。
「世界から見えない存在だった」
「私は世界にとって“見えない存在”として育ちました」とアフガニスタンでの生活を振り返る。「権利も、機会も、安全もありませんでした」。

転機が訪れたのは2018年。家族がニュージーランドへの再定住を認められたことで、尊厳と希望、そして未来を取り戻すことができたと語る。
現在は法律家として難民支援に取り組むとともに、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が支援する「再定住および補完的経路に関するコア・グループ(CRCP)」のアドバイザーとして、国際的な政策形成にも携わっている。
彼女の証言は、UNHCRが発表した『2026年版 世界再定住ニーズ予測』の公表に先立ち、場の空気を引き締めるものとなった。
シリア情勢の変化と再定住ニーズ
UNHCRは、2026年に再定住を必要とする難民の数を約250万人と見積もっており、2025年の推定290万人からはやや減少している。この変化は主に、シリアの一部地域で自主的帰還が可能となったことによるものだが、依然として再定住ニーズは歴史的に高い水準にある。
再定住が必要とされる主な出身国には、アフガニスタン、シリア、南スーダン、スーダン、ミャンマー(ロヒンギャ)、コンゴ民主共和国が含まれる。イラン、トルコ、パキスタン、エチオピア、ウガンダといった主要な受け入れ国では、引き続き多くの難民が滞在しており、緊急の再定住ニーズに直面している。
UNHCRの報道官シャビア・マントゥ氏は、「再定住は、単に保護を提供するだけでなく、尊厳と社会的包摂への道を切り開くものです」と述べ、「それは国際社会による真の連帯の証です」と強調した。
深刻な減少傾向への懸念
一方で、UNHCRは懸念も表明している。2025年の再定住枠は、過去20年間で最も低い水準にまで落ち込む見通しであり、新型コロナウイルスによる混乱期をも下回ると予測されている。この減少は、これまでの進展を後退させ、特に脆弱な立場にある難民をさらに危険に晒す可能性がある。
そのような中で、チャンゲジさんの証言は、単なる個人的な経験談を超え、行動を促すメッセージとなった。「再定住は、単なる人道的行為ではありません。それは、私たちが共有する未来への戦略的な投資なのです」と彼女は語った。
受け入れ社会に貢献する難民たち
チャンゲジさんは、難民を単に「脆弱な存在」として捉えるべきではないと強調する。世界各地で再定住した難民たちは、新たな地域でコミュニティを再建し、ビジネスを立ち上げ、社会・経済の活性化に貢献している。「私たちは解決策を提供し、イノベーションを牽引しているのです」と語った。
UNHCRは各国に対し、現在の再定住プログラムの維持に加え、迅速かつ野心的な拡充を求めている。また、地域や状況に応じた多様なニーズに柔軟に対応できる制度の整備も求めている。
困難な状況にもかかわらず、2024年には11万6,000人以上の難民がUNHCR支援のもとで再定住を果たしている。
2026年の国際目標は12万人の再定住。UNHCRは、各国が断固たる意思をもって行動すれば、十分に達成可能な数字であると強調している。
「私の物語を何百万という人々に当てはめてみてください。その影響は、難民だけでなく、彼らを受け入れる社会にとっても計り知れないものになるのです」とチャンゲジさんは述べた。(原文へ)
INPS Japan
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