SDGsGoal2(飢餓をゼロに)2015年以後の開発問題―飢餓に苦しむ者の声に耳は傾けられるだろうか?

2015年以後の開発問題―飢餓に苦しむ者の声に耳は傾けられるだろうか?

【ローマIPS=ジェネビーブ・L・マシュー】

ミレニアム開発目標(MDGs)は2015年に期限が切れ、持続的可能な開発目標(SDGs)がその後を受け継ぐ。SDGsは、貧困と飢餓撲滅への国際社会の関与を強化するものだ。

David Taylor/ Oxfam
David Taylor/ Oxfam

SDGs策定にあたっては、全ての人に食料安全保障及び栄養を確保することが極めて重要である。「全ての人を食べさせるのに十分な食料を生産している世界において、飢餓に苦しむ者がいる現状については弁解の余地はありません。」と「オックスファム・インターナショナル」のデイビッド・テイラー政策アドバイザー(経済的公正)はIPSの取材に対して語った。

しかし、世界食糧計画(WFP)は、依然として、世界の8人に1人にあたる8億4200万人が栄養不良状態にあるとしている。

テイラー氏は、「『2015年までに極端な貧困と飢餓に苦しむ人口を半減させる』というMDGの第一目標は、達成される見込みとされていますが、とりわけサブサハラ地域をはじめとする多くの地域において慢性的な飢餓が発生しており、進展具合には大きな差があります。つまり、食料・農業問題に関しては依然として大きな課題が残っているのです。」と指摘したうえで、「従って、2015年以後の後継枠組みにおいては、飢餓ゼロを目標とする新しい道筋が示されなくてはなりません。」と語った。

「MSGsの後継枠組みとしてのSDGsに関する議論は、2012年6月の『リオ+20会議』で始まり、その結果、『SDGsに関するオープンワーキンググループ(OWG)』が2013年1月に設置されました。」と、国連食糧農業機関(FAO)のドリアン・カラムブレゾス・ナバロ調整官(ポスト2015SDGs担当)はIPSの取材に対して語った。

OWG/ Sustainable Development Knowledge Platform
OWG/ Sustainable Development Knowledge Platform

6月2日、5大陸から96ヵ国が参加しているOWGは、2030年までに達成すべき目標を17項目掲げた「SDGsゼロドラフト」を発表した。またOWGは、国連の40機関から成る「国連システム技術チーム」の支援を受けている。

「オックスファムは、『SDGsゼロドラフト』の内容については、飢餓を削減することに止まらず終わらせるとの目標を掲げたことや、小規模生産者や女性、その他の社会的に排除されてきたグループを支援することを強調している点など、多くの目標を歓迎しています。」とテイラー氏は語った。

「効果的な枠組みを作ろうとするならば、適用可能な指標を設定する必要があります。これは非常に難しいプロセスです。」と、FAO経済社会開発局長で、ポスト2015年の問題に携わるジョモ・クワメ・スンダラム氏は語った。

Jomo Kwame Sundaram, the assistant secretary-general for economic development/ UN Photo/Mark Garten
Jomo Kwame Sundaram, the assistant secretary-general for economic development/ UN Photo/Mark Garten

以前MDGsの18の目標は、「食の権利に関する国連特別報告者」オリビエ・デシューター氏といった人々から「最も容易に入手可能なデータを基礎にして策定されており、貧困や飢餓の背後にあるより根本的な原因を無視している」と批判されていた。

スンダラム局長は、「国際社会は、SDGs策定にあたっては、適切な目標や目的を特定する必要があります。つまり、開発効果の測定が容易かつデータが入手可能であり、そしてもちろん有意義なものでなければなりません。」と指摘した。

またスンダラム局長は、「不平等と気候変動という2つの主要な不正義が、貧困と飢餓を逃れようとする数多くの人びとの努力を台無しにし続けていることを考えると、(『SDGsゼロドラフト』に)不平等の削減、気候変動、そしてもちろん(FAOが取組んでいる)食料安全保障に関する目標が含まれていることは、極めて重要であり、歓迎すべき第一歩だと考えています。」「しかし、加盟国が次のドラフトを検討し、目標および目的の数値を絞り込む中で、不平等と気候変動の目標が削除される危険があります。」と指摘した。

「MDGsは、開発効果を支持する国際世論を喚起し、政治的弾みをつけることに成功してきましたが、ポスト2015年の課題設定の目的は、こうした機運にさらに弾みをつけることにあります。」とナバロ調整官は語った。

政府開発援助(ODA)の水準が急落していることを考えると、この問題は重要である。経済協力開発機構(OECD)によると、ODAは2011年に実額で2%減少したのに続き、2012年には4%減少している。

さらに、FAOの報告によれば「食料安全保障」と「貧困削減」の間には正の相関関係があることが示されているにもかかわらず、途上国における農業投資は、この数十年で劇的に減少している。

SDGsに込められた「責任を共有していく」という考え方は、開発効果を支持する国際世論と政治的な支持を維持していくうえで役立つだろう。「MDGsは基本的に途上国および後発開発途上国のみをターゲットとしたものでしたが、SDGsは、世界的な課題の中に位置づけられた普遍的な性格をもつものとなるでしょう。」とナバロ調整官はIPSの取材に対して語った。

MDGsの策定プロセスが当事者を十分に巻き込んだものではなかったとの批判の中、「あらゆる分野の利害関係者がより関与した形で参加し、効果的なパートナーシップを組むことが、ポスト2015年の枠組みにおける重要要素として位置づけられてきました」とナバロ調整官は語った。

例えば、すべての当事者間のギャップを埋め、世界的交流と対話を促進するため、「国連開発グループ(UNDG)が各国および地域レベルで一連の利害関係者協議を開き、11の世界的なテーマ別の協議を持っています。」とナバロ調整官は語った。

世界資源研究所(WRI)のマニッシュ・バプナ代表は、「このプロセスは極めて重要です。」と指摘したうえで、「変動する気候や加速する都市化、移りゆく人口動態を考えると、ポスト2015年の開発課題は「誰も置去りにしない共有された普遍的なもの、そして、先進国および途上国双方から行動を引き出すようなものでなくてはなりません。」とIPSの取材に対して語った。

そうしたものとして「食料安全保障は、社会的、環境的、経済的側面を統合することで、普遍的に関連性があり、(ポスト2015年の課題に向けた)『トリプル・ウィン』になる領域の好例と言えるでしょう。」とナバロ調整官は語った。

さらにナバロ調整官は、世界的な食料安全保障を達成するために、「新たなグローバル・パートナーシップは三角協力あるいは南南協力を強調し、組織的なものであってもそうでなくても、よい実践例の交流に焦点を当てるものでなくてはなりません。」と語った。

そうしたパートナーシップの一例が、オックスファム・インターナショナルも一員である「2015年を超えて」連合である。「2015年を超えて」は、環境の持続可能性や人権、公正、グローバルな責任といった共通の価値をベースとしたポスト2015年の強力かつ正統性を得た枠組みを推進する、先進国と途上国双方の市民団体から主に構成される世界的キャンペーンである。

国連事務総長は、このプロセスの中でなされたさまざまな貢献を考慮に入れながら、2014年末に向かってポスト2015年の課題を提示することになるとみられている。2015年9月の ハイレベルサミットにつながる予定の、ポスト2015年開発課題に関する政府間交渉は、SDGs最終版の発表と同時期になるものと考えられている。(原文へ

INPS Japan

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