SDGsGoal4(質の高い教育をみんなに)世界市民教育を通じた人権の推進

世界市民教育を通じた人権の推進

【ジュネーブIPS=ラヴィ・カントゥ・デヴァラコンダ】

世界中で紛争がエスカレートし人権侵害が蔓延る中、「人権教育」を広げることは容易なことではない。しかし、日本の非政府組織が「世界市民教育」のアプローチを通じてインパクトを与え始めている。

9月8日に始まった国連人権理事会の年次会合において、人権教育を拡大する継続的なキャンペーンの開幕の意味で、2つのサイドイベントが開かれた。

UNHRC
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その第一弾は、国連人権高等弁務官事務所による「人権教育への権利」と題したウェブサイトの改訂版出版イベント(9月10日)。さらに16日には、メディア関係者やジャーナリストを対象にした人権教育に関する特別ワークショップが開催された。

このワークショップは、核兵器廃絶や持続可能な開発、人権教育に取り組んでいる日本に本拠を置く非政府組織「創価学会インタナショナル」(SGI)が議長を務める「人権教育学習NGO作業部会」によるイニシアチブである。

「『人権教育・学習に関するNGOワークンググループ』と『人権教育及び研修プラットフォーム』を代表する7か国が、メディア関係者とジャーナリストのために人権教育に関するワークショップを開いたのは今回が初めてとなります。」と人権教育学習NGO作業部会の議長を務める藤井一成氏は語った。

藤井氏は、人権教育キャンペーン強化のための支援を結集するため、ジュネーブの人権団体のなかで活動してきた。「人権教育の促進を通じて、SGIは、そもそも人権侵害が引き起こされないような人権文化を育んでいきたいと考えています。」と、藤井氏は9月16日に開催されたワークショップの後でIPSの取材に対して語った。

「人権擁護は国連憲章の中心的な目的だが、人権侵害が起こらないように防止することも同じように重要です。」と藤井氏は主張した。

藤井氏は、「人権文化」を育成するという池田大作SGI会長の主要なメッセージを引用しながら、「人権や核軍縮、持続可能な開発に関するSGIの主要な目標を達成するためにNGOの間で連帯をつくりだすことを目的として活動しています。」と語った。

今期(9月8日~26日)の人権理事会では、世界の様々な場所で悪化している紛争問題に取り組んでいる。「人権の観点からすれば、国際社会が即時かつ緊急に取り組むべき問題は、ますます相互に結合しつつあるイラクとシリアの紛争(イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」の問題)に対処することです。」と新たに国連人権高等弁務官に就任したゼイド・ラアド・ゼイド・アル・フセイン氏は語った。

「とりわけ、宗教的・民族的集団、(強制的徴用や性的暴力に晒される危険性がある)子どもや(厳しい制約の対象になってきた)女性を保護するために、献身的な努力が緊急に必要とされています。」とアル・フセイン氏は人権理事会での初演説で語った。

またアル・フセイン氏は、「私の前任者(ナバネセム・ピレイ氏)が一貫して強調してきたように、第二のステップは、重大な人権侵害や国際犯罪に関して事実解明・説明責任を確実に果たすことです。なぜなら、免責すればさらなる紛争と人権侵害につながり、復讐がはびこり誤った教訓が学ばれることになるからです。」と語った。

Soundus, a young girl being treated in hospital for injuries from Israeli shelling of Gaza (August 2014). Credit: Khaled Alashqar/IPS
Soundus, a young girl being treated in hospital for injuries from Israeli shelling of Gaza (August 2014). Credit: Khaled Alashqar/IPS

ヨルダン王室出身のアル・フセイン氏は、危機の根本的な原因、とりわけ、「民衆の大部分から公民権を奪う腐敗し差別的な政治体制と、市民社会という独立した主体を抑圧したり暴力的に攻撃したりする指導者」の問題に人権理事会が取り組むよう求めている。

アル・フセイン氏は、とりわけ最近のガザ危機の中で1473人の民間人(うち501人が子ども)を含む2131人のパレスチナ人と71人のイスラエル人の犠牲者を出しているイスラエル・パレスチナ紛争の根底にある「一貫してある差別と免責」を終わらせる必要性を強調した。

また今期の人権理事会では、国連の「持続可能な開発目標(SDG)」を通じて取り組まれる予定の基本的な経済・生活上の権利、世界中の移民の置かれている窮状、難民や移民の収監(米国における子どもの事例を含む)といった問題が議論される予定だ。

「明らかに、多くの人権侵害や、先住民族の置かれている窮状は、持続的に取り組んでいく必要のある主要な問題です。」「しかし、いつも紛争の只中に巻き込まれているメディア関係者やジャーナリストの人権教育に対する意識を喚起することは重要です。」と藤井氏は語った。

Mohammed Omer/ IPS
Mohammed Omer/ IPS

メディア関係者とジャーナリストによるワークショップの公開討論では、記者らが個人的な経験を共有しただけではなく、イラクなどの国において従軍取材をする場合、紛争の中でいかに人権を守れるかについて明確な基準を求めようとした。

「これは取り組むべき重要な課題です。なぜなら、占領軍の部隊に従軍しているとき、ジャーナリストが人権を尊重するのは困難だからです。」と「青年平和構築者連合ネットワーク」代表のオリバー・リッツィ・カールソン氏はIPSの取材に対して語った。

藤井氏は、世界市民教育を展開していくために今後なすべき取り組みについて、「人権教育では、キャンペーンを強化しいくつかの人権団体を糾合することで具体的な進展が見られました。市民社会の中での連帯が進み、私たちの取組みに対する加盟国の認知度が高まっていく中で、目に見える結果が生まれています。ちなみに、アムネスティ・インターナショナルやSGIなど14のNGOからなる連合体『HR2020』が昨年結成されたことは、キャンペーンを強化するうえで重要な一歩となっています。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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