ニュース│金融│デモ参加者がロビンフッド金融課税を要求

│金融│デモ参加者がロビンフッド金融課税を要求

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【国連IPS=ジョアンナ・トレブリン】

5月18日、数多くの人々が金融取引に対する課税(FTT=いわゆる「トービン税」或いは「ロビンフッド税」)を求めて、シカゴでデモを行った。18日、19日にワシントンDCの郊外キャンプ・デービッドで開かれた主要国首脳会議(G8サミット)にあわせて行われたもので、参加者はG8首脳に対して、米国及び世界の経済を回復する手段として年間数千億ドルもの税収が見込めるFTT税を導入するよう要求した。

さらに運動側はG8サミットに続く5月18日から22日までの期間を「ロビンフッド税グローバル行動週間」と位置づけ、世界各地でFTT導入を求めるロビー活動を展開した。FTTの導入については、食料への権利に関する国連特別報道官のオリヴィエ・ドシュッテル氏(Olivier De Schutter)をはじめとする多くの国連人道専門家が支持を表明している。 

 米国では、労組やシンクタンク、環境・保健・消費者保護などの団体、金融改革ロビー団体などが、「ウォール・ストリート(金融エリート)はメイン・ストリート(世間一般)に利益を還元せよ」というロビー活動を各地で展開している。FTTを求める声は1930年代からあり、当時は著名な経済学者のジョン・メイナード・ケインズ氏もFTTの導入を積極的に訴えた一人であった。

同名のスローガンを掲げた活動団体のウェブサイトには「米国政府は、銀行を救済したことで、膨大な財政赤字への対処と、経済援助や地球温暖化対策へのコミットメントを果たすために、多額の資金を必要としている。」と記されている。

金融取引税(FTT)は、株式や債券、商品、投資信託、デリバティブなどの売買に対して課税し、教育や保健、環境などのグローバルな公共財のために使おうという構想で、課税率が異なるいくつかバリエーションが提案されている。中でも、もっとも有力なものは、株式や債券取引に対して0.1%、デリバティブ取引に対して0.01%の税金をかけるという案である。

FTTによってG20諸国からあがる税金は、もっとも低い税率でも480億ドル、税率を上げれば2500億ドルにも達すると見込まれており、これだけの税収があれば、長引く経済、金融、燃料、気候変動、食料危機に対処するための費用さえ相殺することが可能となる。

FTTはNGOだけが主唱しているのではない。昨年11月にフランスのカンヌで開かれた主要20か国・地域(G20)会合では、ドイツ、フランス、スペイン、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、エチオピア、アフリカ連合がFTT支持を表明した。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、FTT導入には欧州連合(EU)27ヶ国の合意が必要であると1月に表明したが、フランスのニコラ・サルコジ大統領は、「我が国がまず他国によるFTT導入を見極める姿勢を採ったならば、金融取引に対する課税はいつまでたっても実現しないだろう。」と語り、EU及びG20による合意を待つことなくフランス一国だけでも導入する意思を示していた。(もっとも、サルコジ氏はその公約を果たさないまま先週大統領任期を終えた。次期のフランソワ・オランド大統領もFTT支持である)。

また国連の人権専門家も、FTTを、各国政府が国内在住の人々の人権を保護していくための実際的な手段と考えている。

極度の貧困と人権に関する国連特別報告官のマグダレナ・セパルヴェダ氏(Magdalena Sepulveda)は、「各国政府は、富裕層や金融部門が身分相応な税負担を担うよう、富の再分配に果たす税制度の役割を再考する時にきています。」「金融部門が相応な税負担ができない限り、残りの社会全体がその付けを払い続けることになるのですから。」と語った。

またドシュッテル国連報道官は、「食糧価格は過去5年間に2度も危険なほど高騰し、現在その事態がいつ再発してもおかしくない状況にあります。」と警告したうえで、「FTTには、投機に拍車をかけて食糧価格の安定を脅かし世界的な危機を引き起こす元凶となってきた短期資金の流れを抑制する効果が期待できるのです。」と語った。

世界の金融取引課税論議について報告する。(原文へ

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