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ニュースプーチンは、1930年代のヒトラーではなく1999年のNATOの戦略に従っているのかもしれない

プーチンは、1930年代のヒトラーではなく1999年のNATOの戦略に従っているのかもしれない

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ラメッシュ・タクール】

ロシアのウクライナ侵攻については、二つの競合するナラティブがある。一つは、ウラジーミル・プーチン大統領はズデーテン地方に対するヒトラーの戦略を採用しており、彼の攻撃を止められなければ1938年のミュンヘンでの宥和政策の轍を踏むことになるというものだ。もう一つは、プーチンが1999年のコソボにおけるNATOの戦略をなぞっているという考えである。(原文へ 

ウィリアム・ガルストンは2022年2月22日付け「ウォール・ストリート・ジャーナル」の論説において、「国家間の紛争解決に武力行使はもはや必要ない」というリベラル派の思い上がりを批判した。むしろ、ロシアのウクライナ侵攻は、「武力は国際関係の恒久的特性」であることを証明している。西側民主主義国はこの不変の現実を認め、それに沿って外交・防衛政策を再構築しなければならない。ガルストンはこの命題の裏返しとして、こう問うことも容易にできるだろう。プーチンは冷戦終結以来、米国が介入を繰り返してきた歴史から、「武力は国際関係の恒久的特性」であり、ロシアはこの昔ながらの現実に立ち戻らなければならないと結論付けたのだろうか? トゥキュディデスは、「戦史(ペロポネソス戦争史)」の中で同じ趣旨を遙かに簡明に表現した。「強者はできることを行い、弱者はしなければならないことで苦しむ」と。

NATO欧州連合軍最高司令官(1997~2000年)を務めたウェズリー・クラークは、2022年2月21日付け「USAトゥデイ」に論説を発表し、ウクライナだけでなく世界に対するロシアの脅威に、NATOはいかに対処するべきかについて助言を提示した。彼は、東欧諸国におけるNATOの政策、加盟、展開に関してプーチンに拒否権を与えることを断固として否定する。一方で、NATOを増強するべきであり、ロシアを制裁によって罰するべきであると強く主張する。しかし、1999年にNATOがセルビアに軍事介入し、コソボ自治州の分離を支援した際の最高司令官であったクラークは、その出来事からロシアが学んだ教訓についてはまったく言及しなかった。2022年2月22日、国連事務総長アントニオ・グテーレスはロシアの行動を非難し、ドネツクとルガンスクの独立承認は「国連憲章の原則と真っ向から対立する」「一方的な措置」であり、「ウクライナの領土保全と主権に対する侵害」であるとした。グテーレスは、1999年当時、NATO加盟国ポルトガルの首相だった。

コソボはセルビアからの分離独立を求め、NATOはセルビアを78日間にわたって激しく爆撃した。その間、国土も人口も縮小し、経済的に困窮し、軍事的に弱体化し、外交的に屈辱を受けたロシアは、やり場のない怒りに駆られながらどうすることもできずに傍観するしかなかった。NATOは、劇的に変化した力の均衡を利用して新たな加盟国を加え、軍事的影響力を拡大してじわじわとロシア国境へと迫っていた。それは、ポスト冷戦体制に従う条件としてミハイル・ゴルバチョフに繰り返し示された約束に反するものだった。その一環として1999年にNATOによるコソボ介入があり、また、2014年のマイダン騒乱では、親ロシア派であるが民主的に選出されたウクライナ大統領の政権が米国の支援で打倒されるに至ったのである。以降、相対的な力の均衡は再び変化し、しおらしくなった西側は外国における一連の軍事的冒険に永続的な政治目標を持たせることができず、台頭する中国は権力の階段を着実に上っていくにつれてますます主張を強め、西側の社会はその歴史的な罪悪感、アイデンティティー政治、正しいという代名詞に関する強迫観念で内側から揺れ動いている。

冷戦を背景に生まれたNATOは、想定していた敵が敗北し、その存在意義がもはや無意味になっている。倒すべき新たな外国の怪物を探して、NATOはロシアの安全保障上の緩衝国にますます深く侵入していった。1998年5月、米国上院はNATOを拡大する決議案を可決した。「ニューヨーク・タイムズ」コラムニストのトム・フリードマンは、冷戦封じ込め戦略の立案者であるジョージ・ケナンに電話し、彼の意見を尋ねた。「これは新たな冷戦の始まりだと思う。当然ながら、ロシアからは悪い反応があるだろうし、そうすると[NATO拡大論者は]、だからロシア人についてはいつも言っていたんだと言うだろう。しかし、それは間違っている」とケナンは述べた。ピーター・ヒッチェンズは、ソ連崩壊の怒涛の日々にモスクワから報道した英国人コラムニストである。彼は、2月23日にこう書いている。「我々には、[ロシアを]同盟国、友人、パートナーにするチャンスがあった。その代わりに我々は、強欲、労せずに得た優越、冷笑、軽蔑、不信をもって、偉大な誇りある国を侮辱することにより、その国を敵に回してしまったのだ」。バラク・オバマ大統領でさえ、外交政策上の危機に対して軍事的対応を取りがちなワシントンの戦略に不満を表しているが、その古い国家安全保障体制が復権している。

ロシア人とウクライナ人の歴史的結びつきを主張するプーチンが、ロシアに屈辱を与えてきたポスト冷戦秩序を突き崩すために取った動きにショックを受けるような西側指導者やアナリストのおめでたさについて、その戦略は何と言うだろうか? 念のために言うと、一部の勇気ある知識層のロシア人は嘆願書に署名し、ウクライナにおける「不道徳、無責任、犯罪的な」戦争を回避するよう訴えた。しかし、容赦のない現実は、NATOが強硬姿勢を取り、短期的に勝利を収めたが、プーチンがいよいよやり返すと決めた今、今度はやられる側に回ったということである。シェークスピアの「ヴェニスの商人」でシャイロックが言ったように、「あんたらが教えてくれた非道ぶりを、やり返してやろう。ひどいことになるが、教わった以上にうまくやってやる」というわけだ。ロシアが警告してくれなかったと、文句を言う筋合いでもないだろう。1999年、ロシアは国連安全保障理事会で、どうにもならない怒りに駆られながら抗議を行った。当時のロシアの国連大使は、セルゲイ・ラブロフだった。2014年、プーチンとラブロフの2人は、15年前にNATOがコソボで何をしたかを何度も引き合いに出し、ロシアがクリミアに対して行った同様の行為を正当化した。「我々は1999年をよく覚えている」と言って、ロシアのクリミア併合を違法だと言う(実際そうであるが)西側の批判をプーチンはあざ笑った。「少なくとも国際法というものが存在することを彼らが覚えていたのは、何よりだ」と。驚くほど多くの西側諸国が、既存の国家からどの地方が一方的に分離独立して良いか、また、どの外部勢力がその努力を軍事支援する権利を持つかを決定するのは、自分たちの、そして自分たちのみの生得権と考えているようである。

原則上は本質的同等性を主張しているだけでなく、ロシアは、ウクライナに対する複雑な利害関係を有している。ウクライナが経済面ではEUと、軍事面ではNATOと結び付き、反ロシア的である場合、それはいつか、ロシアにとって存続にかかわる脅威をもたらす恐れがある。一方、ウクライナが親ロシア的である場合、西側諸国にとって望ましくないことかもしれないが、存続にかかわる脅威ではない。このような利害の不均衡があるからこそ、プーチンは進んでリスクを取ろうとしているのである。しかし、たとえ存続の脅威がないとしても、予測不能なダイナミクスを持ち込むことにより、ウクライナのロシア化は欧州の秩序を変容するだろう。冷戦時代にあったような定まった地政学的境界は存在せず、北京とモスクワの枢軸はかつて西側と対立したいかなる勢力よりもはるかに手強いからである。

冷戦以降、汎欧州的な取り決めや再編成の紆余曲折から得られたあらゆる教訓のうち、プーチンが覚えておくと良い最大の教訓は、地政学的なグレートゲームにおいて優位に立っているとき、相手に対する寛大さを持ち、勝ち誇りすぎないようにすれば損はないということだ。

ラメッシュ・タクールは、国連事務次長補を努め、現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長を務める。近著に「The Nuclear Ban Treaty :A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order」 (ルートレッジ社、2022年)がある。

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