【ポルト・アレグレ、ブラジルIPS=シルビオ・フェレイラ】
ブラジル南部のポルト・アレグレ市で開催された第9回世界教会協議会(WCC)でもっとも口にされた言葉は「対話」だった。協議会では欧州の新聞に掲載されたムハンマドの風刺画をめぐる論争が取り上げられた。
南アフリカ共和国のノーベル平和賞受賞者、デズモンド・ツツ大司教は「声を荒げることなく対話を通じて解決を図るべき」とし、会議の3,300人の出席者全員が寛容と「宗教の民主主義」の必要性を表明した。
デンマークに端を発し、欧州から世界へと広がった風刺画問題は、中東の人々の怒りを招いて激しい抗議活動を引き起こした。暴力的な抗議活動では死者も出ている。
暴力的な活動を宗教的狭量だと非難する声も多いが、ツツ大司教は「今回の騒動は政治的な意味合いがある」と語った。宗教は宗教と無関係の問題の隠れ蓑にされることもある。欧州教会会議のコリン・ウィリアムズ総幹事(英国国教会)は、「欧州と米国のキリスト教会は協力してブッシュ政権が干渉政策を控えるよう働きかけるべき」とした。
「騒動の根源には侵略問題とキリスト教とイスラム教の世界の相違がある」とコンスタンチノープル正教会のE.C.アブラミデス総大主教は指摘し、「敬意と対話が平和への鍵である」とIPSの取材に応じて語った。
一方で、会議に集まった宗教指導者たちは風刺画には批判的である。サンパウロのユダヤ教のH.ソウブル主席ラビは「表現の自由は民主主義の基本だが、他者への敬意を忘れてはならない」とする声明を発表した。
ジュネーブに本部を置くWCCは世界の340を超える教会、宗派、教会団体からなり、5億5000万人のキリスト教信者を代表するが、世界最大のキリスト教宗派であるローマカトリック教会は含まれない。キリスト教自体の分裂も深刻な問題であり、キリストは統一の象徴でありながら教義や規則の違いで区別されることを嘆く声もある。ブラジルで開催されたWCCでの風刺画問題に対する議論について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩