【ロッテルダムIPS=イレーヌ・ドゥ・ヴェッテ】
オランダの極右政党党首で国会議員のヘールト・ウイルダース( Geert Wilders )氏の反コーラン映画フィトナ(Fitna)」公開の発表に対し、物議を醸す内容が国内外に不安を生むとし、政治家から公開を自粛するようにとの声が上がっている。
国民的議論の中心は、映画の予想される内容と言論の自由の制限についてである。国の安全に関する警戒の声も上がっている。だが、映画を観た者はまだ誰もいない。発表通り4月1日にインターネット上で公開されるのかどうかも不明である。
3月23日、米国のインターネットプロバイダーは、内容について調査中とし、ウイルダース議員のサイトを一時停止した。テレビネットワークと同議員との交渉は、放映前の視聴を認めないとする議員の要求をテレビ局側が納得せず、失敗に終わっている。
オランダのバルケネンデ首相は2月29日のスピーチで、映画について「重大な懸念」を表明するとともに、言論の自由と宗教の自由の保証を強調した。首相はデンマークでのムハンマド風刺画が引き起こした反発と同様、オランダ市民と経済に対する影響を懸念して、ウイルダース議員に映画の公開取り止めを強く求めた。だが議員は断固として公開すると答えている。
テロ対策担当調整官は、オランダはテロ攻撃を受けるリスクが高まっていると述べている。北大西洋条約機構(NATO)はアフガニスタン駐留のオランダ軍の安全について懸念している。
3月13~14日にセネガルのダカールで開かれたイスラム諸国会議機構(OIC)のサミットでも風刺画と映画が中心議題に取り上げられた。エクメレディン・イフサノグル事務局長は、OIC加盟57カ国が「こうしたイスラム嫌悪に対し適切な決定を行うことを期待する」と述べた。
オランダ公訴局の「National Expert Center on Discrimination(差別に関する国家専門家センター)」(NECD)にはこの数カ月、ウイルダース議員の発言に関して憎悪の流布だとして警察の苦情が殺到している。オランダでは差し迫った脅威や差別などの一定の制約によって言論の自由が制限される。NECDの広報官はIPSの取材に応えてウイルダース議員の発言は「軽蔑的であるが、しかしまだ法律の認める範囲にある」と述べた。
オランダのイスラム教連盟は、映画がイスラム教徒とイスラム教を攻撃したものでないかどうか独立した専門家の判断を要求している。
その一方、著名人や市民はウイルダース議員に対する反対行動が組織されている。この数日YouTubeには「Sorry for Fitna」の数百に及ぶクリップが掲載されている。
オランダ国会議員の反イスラム教映画を巡る動向について報告する。
翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩
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