ニュースベネズエラ、米国の福音派を追放

ベネズエラ、米国の福音派を追放

【カラカスIPS=ウンベルト・マルケス】

ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は12日、米国の福音派団体「ニュー・トライブス・ミッション(New Tribes Mission)」を国外退去させると発表した。同団体は1946年以来、コロンビアおよびブラジルと接する南部国境地帯で、先住民コミュニティに入り活動してきた。

大統領は「彼らはベネズエラを去る」と述べ、「帝国主義による浸透の工作員だ。機微な戦略情報を集め、先住民を搾取している。だから追放する。この決定が国際的にどんな結果を招こうと、意に介さない」と語った。

ニュー・トライブスは、米国に拠点を置く言語研究団体「サマー・インスティテュート・オブ・リンギスティクス(SIL、Summer Institute of Linguistics)」と長年近い関係にある福音派組織で、アジアおよび中南米の複数国で活動している。ベネズエラでは、南部地域のヤノマミ、イェクアナ、パナレなどの先住民族、ならびにその他の民族集団への働きかけを中心としてきた。

SILは1934年に設立され、先住民言語への聖書翻訳を目的として掲げている。

チャベス大統領が全国中継の演説でこの発表を行ったのは、同氏が12日を「先住民抵抗の日」と定めた日に、南部の平原地帯で先住民コミュニティに対し、共同の土地権原証書の交付、ボート用モーターや車両の提供、融資の付与などを行っていた最中であった。

大統領は「ニュー・トライブスの活動に関する報告や映像を見た。われわれは彼らを望まない。われわれは皆、古い一つの部族の一員なのだから」と述べ、皮肉を交えた。

ニュー・トライブスは1970年代以降、左派政治勢力、環境保護派、先住民団体、研究者、カトリック教会指導者、さらには軍関係者を含む多方面から強い批判を受けてきた。同団体は、多国籍企業に代わって戦略鉱物を探査していること、先住民の強制的な同化や改宗を促していることなどを理由に非難されてきた。

アマゾン密林における同団体の活動について、約20年前に報告書を公表した社会学者で環境活動家のアレクサンダー・ルサルドは、チャベス大統領の決定を歓迎した。

ルサルドはIPSに対し、今回の決定は「先住民の自己決定権、ならびに信仰・価値観・慣習の尊重を定めた1999年憲法の規定に合致する」と語った。さらに、同団体の活動に警鐘を鳴らしてきた政府および議会の複数の報告書が示した勧告とも整合すると述べた。

ルサルドは「ニュー・トライブスは、福音を教えるという装いの下で羞恥心と罪悪感を植え付け、先住民を強制的に西洋化してきた」と主張する。その例として、「彼らはパナレの人々に、サタンがパナレの先住民に変身し、あなたたちはイエス・キリストの磔刑に責任があるのだ、と教え込んだ」と語った。

一方、ニュー・トライブスの宣教師リチャード・ブルースは、4年前に地元紙の取材に対し、「先住民の生活様式や慣習を尊重したいのであって、一夜にして変えようとしているのではない。ここは米国の片隅ではない」と述べていた。

ルサルドによれば、ニュー・トライブスの活動が最も活発だったのはおおむね20年前で、当時、米国からの宣教師は約200人に上った。主な拠点は、南端アマソナス州の中心部で複数の河川が合流するタマ=タマ(Tama-Tama)に集中していた。

同地域はウランなどの鉱物資源が豊富だとみられている。ニュー・トライブスは長年にわたり滑走路や近代的施設を整備してきたが、それは宣教対象となった先住民コミュニティの素朴な建造物と際立った対照を成していた。

1980年代に文化団体、環境団体、先住民団体などが参加した(現在は消滅した)「国民同一性運動(National Identity Movement)」は、ニュー・トライブスが地質・鉱物資源の探査を隠れ蓑にしていると主張し、その背後に、SILに資金を提供していた企業の利害があると指摘していた。同運動は、資金提供企業として、防衛産業の請負企業ゼネラル・ダイナミクスやフォードなどの名を挙げていた。

しかし当時、ニュー・トライブスの追放を求める声は次第に沈静化し、同団体の活動をめぐる世論の関心も薄れていった。ルサルドは、同団体が近年、内部の分裂も経験していると述べた。

こうした状況が再び注目を集めたのが、今回のチャベス大統領の発表であった。大統領は、「先住民が極めて困難な条件で暮らす一方で、ニュー・トライブスは発電設備や無線システムを持ち、トラクターや草刈り機で手入れされた滑走路まで維持している。そこへ海外からの飛行機が、いかなる通関検査も受けずに飛来している」と述べた。

大統領が「国際的な影響を意に介さない」と言及した背景には、ニュー・トライブスが「ベネズエラ福音派評議会(Evangelical Council of Venezuela)」に加盟しており、政府による宗教迫害だと非難する可能性があることがあるとみられる。

もっとも同団体は米国に本拠を置く組織でもあり、ベネズエラと米国の両政府はこの2年、政治・外交上の対立を激化させてきた。加えて8月には、米国のテレビ伝道師パット・ロバートソンがチャベス大統領の暗殺を公然と呼びかけ、先週日曜には、チャベス大統領がアルカイダ指導者オサマ・ビンラディンに資金提供していると非難した。

チャベス大統領は「誰かを踏みにじるつもりはない。ニュー・トライブスには荷物をまとめ、出ていくための時間を与える」と強調した。

ルサルドは今回の措置を前向きに評価しつつも、「ちょうど今日、新たな先住民の抗議が起きた。チャベスが(北西部で)先住民の土地を石炭採掘に開放しているからだ。そこに入ってくるのは別の『新たな部族』で、今度はブラジルから来る」と付け加えた。これは、ベネズエラ企業とブラジル企業が組成した合弁事業を指し、採掘活動は来年にも開始される予定だという。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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