INPS Japan/ IPS UN Bureau Report「優れた兵士」として徴用され続ける世界の子どもたち

「優れた兵士」として徴用され続ける世界の子どもたち

【国連IPS=タリフ・ディーン

1996年、モザンビーク元大統領夫人のグラチャ・マシェル氏が、子ども兵士の実態を初めて明らかにした画期的な調査報告書を発表。「子どもたちは影響を受けやすく、支配が容易だ」との現場の司令官の発言を伝えた。

司令官らは「子どもたちは従順に命令に従う優れた兵士だ」とマシェル氏に語ったという。

さらに、軍に加わった子どもたちの大半が親そしてコミュニティを失い、「食糧と安全」のために兵士となったことを、この重要な報告書『Children in Armed Conflict(武力紛争下の子どもたち)』は指摘している。

 しかしそれから10余年、そして何十という紛争を経た今も、状況に大きな変化はない。

国連児童基金(ユニセフ)のアン・ベネマン事務局長は「紛争下の子どもたちへの脅威は増している。子どもたちは、十字砲火にさらされるばかりでなく、暴力、虐待、搾取の標的にされ、一般市民を食い物にする無数の武装勢力の犠牲者となっている」と述べている。

マシェル氏の報告書に続くものとして、この10月17日、子ども兵士に関する特別調査報告書が新たに発表された。報告書は、世界各地の紛争で「子どもたちは依然として幼年時代を奪われている」と、その現状を明らかにしている。

子どもと武力紛争に関する国連事務総長特別代表ラディカ・クマラスワミ氏が執筆したこの報告書は、暗澹たる現状ではあるものの、国際社会が子どものために「確固とした法的保護の枠組み」の策定に積極的に取り組んできたことを報告している。

「しかし、遵守を確保し、刑事免責に対抗し、子どもに対するあらゆる暴力に対処するため、なすべきことはさらに多くある」と述べている。
 
 IPSの取材に応えたクマラスワミ氏は、この10年間に子どもの兵士は減少したかとの質問に、「よく言われるように、子ども兵士に関する統計はこれまでも推測に基づくものだった」とし、次のように述べた。リベリアとシエラレオネでの戦争終結に伴い、子ども兵士の数もおよそ30万人から25万人に減少したと思われるが、「これらも推測に基づく数字にすぎない」

子ども兵士の削減に国連が果たした成果について尋ねたところ、クマラスワミ氏は、子どもの徴兵を戦争犯罪として認めた国際刑事裁判所の創設と、子ども兵士の徴用を監視・報告する仕組みを設置した国連安全保障理事会決議1612号を挙げた上で、「私たちはさらに前進を図り、こうした枠組みを実施し、加害者に有罪を宣告し、制裁を科す必要がある」と述べた。

クマラスワミ氏は、国連がさらに取り組むべき数多くの重要な仕事として、個別プログラムによって武力紛争下にあるすべての子どもたちに対応すべきと、次のように語った。

たとえば、「教育、保健、生計、スポーツなどのコミュニティ・サポートを構築することによって紛争被害者の子どもたちの社会復帰を順調に進めるためにさらに努力しなければならない」

「また、国内避難民となった子どもに対し、基本的サービスを提供するだけにとどまらず、保護するための施策をさまざまに講ずる必要がある。子どもの徴兵と国内避難民となった子どもの安全の間には直接的関係があると推測されている」

多くの子どもが避難民キャンプから直接徴兵されており、「国連のなすべき仕事は今なお多い」と述べた。

2006年において家族とともにあるいは家族もなくひとりで強制退去させられた子どもの数は1800万人を超す。報告書によれば、これらのうちおよそ880万人が国内避難民となった子どもで、580万人は難民として国外に逃れたと見られている。

世界の学童期の子どものなかで非就学児童の少なくとも半数は、紛争下にある国の子どもたちである。

クマラスワミ氏は、調査報告書で、成功を収めている例も挙げている。コートジボワールでは、およそ1200人の子どもがユニセフに引き渡された。

6月には、ダルフール和平合意の署名当事者の1つであるスーダン解放運動/軍が、軍に関連する子どもたちの特定と引き渡しならびに子どもの徴兵を防止するための継続的検証の手順についてユニセフと合意した。

また昨年は、ウガンダ政府が、武力紛争下における子どもの兵士徴用に関する既存の法律や政策の枠組みの実施強化に取り組んだ。

チャドでは、ユニセフと政府の対話によって、紛争犠牲者の子どもたちを保護し、持続可能な社会復帰を図ることに関する合意が達成された。

とは言え、国連事務総長の最近の報告には、ブルンジ、チャド、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ネパール(2002年から2006年の間におよそ2万2千人の学生がマオイスト(共産党毛沢東派)によって誘拐されている)、ソマリア、スリランカ、スーダンにおける誘拐が伝えられている。

クマラスワミ氏は、特別報告書は、国連全加盟国に対し、子どもたちに教育、保健、栄養、水、衛生などの基本的サービスへのアクセスを提供することによって、子どもたちに対する国の責任を果たすことを強く求めていると語った。

クマラスワミ氏はまた、「紛争前、紛争中、紛争後のいずれにおいても、子どものニーズを最優先して取り組むことが不可欠である。平和創造・平和構築のあらゆるプロセスの一環として取り組むことが必要だ」と強調した。

この他重要な提言のひとつとして、子どもに対する凶悪犯罪の責任者に対する刑事免責の廃止も求めている。

「すなわち、戦争犯罪の訴追、そして関連のある国際規範の遵守を確保することである。国際規範の多くは、10余年前のマシェル報告書が発表されてから策定されたものである」(原文へ

翻訳=IPS Japan 

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