【ブリュッセルIPS=デイビッド・クローニン】
地雷の使用禁止が国際的に合意されてから10年が過ぎたが、新しい報告書の推計によると、この武器は2007年にもなお数千人の命を奪っている。
未だに地雷の使用を続けているのはビルマとロシアの2国だけだが、世界各地の数々の紛争の間に敷設され、いまだに不活性化されていない地雷による死傷者が後を絶たない。
地雷監視年次報告書によると、地雷および手榴弾、迫撃砲、クラスター爆弾などの「戦争の爆発性残留物」は昨年5,426人を殺害した。
11月21日にブリュッセルでこの報告書を発表したハンディキャップ・インターナショナルのスタン・ブラバン広報担当官は、この調査結果を「非常におそろしい」と表現した。実際の死亡者の数はこれをはるかに上回る可能性もある。
それにもかかわらず、ブラバン広報官は、「1997年に国際的な地雷禁止条約が合意されてから、地雷による犠牲者の削減に関しては着実な進展がみられる」と指摘した。1990年代には、地雷および関連した武器による死亡者は毎年およそ2万6,000人に上っていた。
156の国が批准したこの条約の下では、各国政府にはその領土内の地雷を撤去するために10年が与えられている。英国はフォークランド諸島の地雷撤去をほとんど進めていないことから、「条約違反となる危険性のある」国のひとつだとブラバン氏はいう。フォークランド諸島は南大西洋上にあり、その領有をめぐって1982年にマーガレット・サッチャー英国首相の政権(当時)がアルゼンチンと戦争を行った。
この条約のもっともプラスとなる影響のひとつは、条約への署名を拒否した国の多くへの抑止となり、少なくとも備蓄分を部分的に廃棄するまで、地雷に烙印を押したように思えることである。昨年は4,200万個の地雷が廃棄された。ロシアは最近のチェチェン紛争では地雷を使用しているが、100万個の地雷を廃棄した。
さらに報告書によると、2007年には地雷の影響を扱う国際支援の総額は4億3,100万ドルだったが、前年と比べて4,500万ドル減っている。最大の資金提供者である欧州連合(EU)は、2億ドルの貢献を行ったが、2006年と比べると25%の減少だった。
クラスター爆弾に反対する運動は、5月にダブリンでの会議で107カ国がその使用禁止を支持し、大きな後押しとなった。条約は来月オスロで行われる式典で正式に調印が始まることになっている。
けれども禁止が合意されたにもかかわらず、8月のロシアとグルジアとの短い戦争でクラスター爆弾の使用を防ぐことにはならなかった。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、犠牲者の体から手足をもぎ取るこうした武器の使用により少なくとも16人が死亡し、56人が負傷したと断定した。
ロシアはクラスター爆弾を投下したという申し立てを否定しているが、グルジア側はこれらの武器の使用を認め、その武器はイスラエルのメーカーから購入したといっている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級軍事分析官のマルク・ガルラスコ氏は、これらの武器の使用を調査するためにグルジアに赴いた。ガルラスコ氏は「ゴリ地方で数千個のクラスター爆弾が不発のまま残っていて、除去には半年かかるだろう」という。グルジアは使用した大量の爆弾が不良品のようだったのはなぜか調査中である。
米国は国際的な禁止に対して、もっとも執拗に反対してきた。ジョージ・W・ブッシュ現大統領が個人的に各国指導者に電話して完全な禁止に抵抗するよう要請したことは知られている。しかし活動家は後継者となるバラク・オバマ氏が、この合意と米国が批准していない1997年の地雷禁止条約に、より建設的な立場を取ることを期待している。
ガルラスコ氏は、「米国は北大西洋条約機構(NATO)の他のほとんどの国と対立している」と主張する。「米国のNATO内の同盟国、英国、ドイツ、カナダ、フランスなどのほとんどがこうした地雷とクラスター爆弾という二つの武器の放棄に快く応じている。そのため米国が放棄しない理由が考えられない」
一方で、EUの執行機関である欧州委員会の出資した調査は、拷問用具を製造する1万6,000社を超える企業を特定した。
英国のマンチェスターを本拠とするオメガ財団によって行われたこの調査はまた、拘束者に苦痛を与えるため使用される可能性のある6,000品目を特定した。
この調査は「拷問の商売」を規制するEUの法令が導入されてからどのような進展があったかを追跡調査するために企画されている。この法令の主要な弱点を指摘した、オメガ財団とアムネスティ・インターナショナルが共同で行った2007年の報告に続くものである。だが拷問者が使用する道具の中でもっとも悪名が高い、スティング・スティックとして知られている針のつきでた棒や死刑執行のために作られたロープなどは含まれていない。
EUの職員の話では、評価基準の範囲の拡大についての話し合いが2009年初めにブリュッセルで予定されている。(原文へ)
翻訳=IPS Japan 浅霧勝浩