【モスクワIPS=ケスター・ケン・クロメガ】
ロシアからバルト海を経由するノース・ストリーム(North Stream)、ロシアから黒海を経由するサウス・ストリーム(South Stream)。天然ガス資源を豊富に持つロシアが進める欧州向け輸送パイプラインの敷設計画はウクライナとの亀裂をさらに深めようとしている。
ロシア政府系ガス企業『ガスプロム社』のアレクセイ・ミラー社長は今月初めスペインを公式訪問し、埋蔵量3兆8,000億立方メートルの天然ガスが眠るとされる北海のガス田開発に乗り出すことを約束した。
一方で、「天然ガス輸送の多極化」よりも「供給元確保」の重要性を指摘する声が大きくなっている。ウクライナの専門家は、ロシアからのパイプライン敷設ラッシュがロシアへのエネルギー依存を一層強めるだけだと懸念を示す。
エネルギー・エコノミストのVolodymyr Vakhitov氏はIPSとの取材で「天然ガスを巡る問題は、国家安全保障・土地所有権・環境といった更なる問題を招く恐れがある」と語った。
Kiev School of EconomicsのValentin Zelenyuk助教授によると、ウクライナを介したガス輸送手段の多様化および欧州へのガス供給確保を考えると、ロシアのパイプライン計画は全くあてにならないという。「問題はガスの輸送手段ではない。欧州のガス市場をロシアが牛耳っている事、それによりロシアが政治的主導権まで握っている事、これこそが大きな問題なのだ」と述べた。
また、同教授はヨーロッパの天然ガス輸送企業から成る、透明性の高いガス輸送事業の共同組合を設立する必要性を訴えた。ロシア主導の天然ガス輸送をめぐる問題について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=/IPS Japan浅霧勝浩
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