【テヘランIPS=ガレス・ポーター】
オバマ次期政権ではイランとの交渉による合意が可能だろうか。イラン高官とシンクタンクの専門家の答えは肯定的だが含みを残す。イランは米国との合意を熱望しているが、両国の考える合意の中身には差がある。米国側はウラン濃縮停止を求め、イラン側は外交関係の根本的変化を求めている。さらに二国間の関係正常化には中東に関する新たな理解が不可欠のようだ。
イラン外務省のシンクタンク、政治国際研究所・ペルシャ湾中東センターのデフガニ代表は、「双方の理解の欠如が問題である」という。一方でイラン高官は、アルカイダやイスラムテロリストの対策については米国とイランの利害が共通し、この分野で協力できると考えている。そのためにはイラクとアフガニスタンに関する合意が必要となるだろう。
デフガニ氏はそうした協力には2011年までにイラクから米軍が撤退するかどうかが絡んでくるという。オバマ次期大統領は撤退を約束し、米軍撤退にはイラク世論とイラク政府内の親イランの派閥、つまりシーア派の圧力が影響する。だが現在のイラクの治安部隊や軍隊は米国によって設立され、親イランではない。イラクに駐留する米軍はイランへのけん制の意味もある。
アフガニスタンに関してイランは米軍の増強よりもスンニ派の過激派の台頭を憂慮している。イランはタリバンとの和平交渉に反対しており、米国もこの点で一致しているとデフガニ氏はいう。
イランの核問題以外でもっとも政治的に慎重を期する問題は、イランとヒズボラなど反イスラエル組織との関係になる。2003年3月にイランはひそかにアラブ連盟の和平調停を支持する提案を行い、イランがイスラエルを承認する可能性もあった。米国とイランが合意すれば中東問題の解決につながる。
米国問題に関するイラン外務省の高官であるレザイー氏は「障害となっているのは利害ではなくイランの中東地域における影響力に対する米国の懸念である」と語った。「この悪循環を断つには米国が中東におけるイランとの共存を認めることであり、遅かれ早かれ米国はそうせざるを得ないだろう」
米国安全保障政策専門の歴史家でジャーナリストのガレス・ポーターの12日間のテヘラン取材によるイランと米国の新政権との関係について報告する。 (原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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