【仙台IPS=ジャムシェッド・バルーア、浅霧勝浩】
仙台における重要な国際会議(=第3回国連防災世界会議)に先立って、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)のマルガレータ・ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)が、「災害対処から災害リスクへの対処へと移行する」必要性について「一般的な合意」があると語った。こうした理解の背景についてワストロム氏は、「もし国際社会が、貧困や気候変動、生態系の衰退、制御不能な都市化・土地利用といったリスクの根本にある原因に対応することに成功すれば、結果として地球はもっと強靭なものになるだろう。この枠組みによって、既存のリスクレベルを低減し、新たなリスクの発生を防ぐことに役立つだろう。」と語った。
UNISDR代表の意見と同じく、列国議会同盟(IPU)のセイバー・ホサイン・チョウドリ議長も、国際社会が持続可能な開発の向けた歩みを進めている中、仙台会議を「よい出発点」にすることを誓った。
国連総会は今年9月、貧困の半減等を謳った「ミレニアム開発目標」(MDGs)に代わる、「持続可能開発目標」(SDGs)を採択する予定だ。東北地方の中心地であり、福島第一原発事故につながった2011年の地震・津波の被災地である仙台は、3月14日から18日にかけて開催された「第3回国連防災世界大会」の会場となった。186ヵ国の首脳ら延べ15万人以上が参加した。
UNISDRによれば、2005年に神戸で前回の世界会議が開催されて以来、災害によって世界全体で少なくとも70万人が命を失い、17億人が被災したという。2005年~14年の世界の災害による経済的損失の合計は1兆4000億ドルにのぼっている。防災に関する第1回会議は1994年に横浜で開催されていた。
3月13日に開催された列国議会同盟(IPU)とUNISDRによる議員会合「防災のためのガバナンスおよび立法」に登壇したチョウドリ氏は、「災害による損失のレベルが高くなる中では持続可能な開発は達成し得ません。」と指摘するとともに、仙台会議で「地域の力」が着目されていることを歓迎し、「地方自治体の役割は極めて重要です。(私たち)国会議員には、地方自治体への資源配分を増やすなど、重要な役割があります。」と語った。
チョウドリ氏は、国会議員らとUNISDRとの間のパートナーシップを称賛するとともに、地域レベル・全国レベルにおいて災害に対する強靭性(レジリエンス)を強化するために各国の議会が用いている実践的なツールをいかに両者が共同で発展させてきたかを指摘した。
識者らは、こうした動きに関連して、ネパール政府による地域の防災計画に対する自発的取り組みについて触れている。
国連防災世界会議のウェブサイトには、「ネパール連邦問題・地域開発省は130の自治体による地域防災計画の策定を支援する。NGOを含め、ネパールにおいて防災に関与しているすべての利害関係者との協力の下に実施される予定だ。この計画は、地域レベルにおける防災活動の指針となるだろう。」
パキスタン政府は、「障害者を包摂した災害リスク低減のためのマスター訓練者20人を育成し、草の根レベルの技術訓練を通じて100の人道支援プロジェクトに影響を与え、障害者を包摂した災害リスク低減に関して150人の主要な人道支援活動家を訓練する」ことを約束すると発表した。
仙台会議開始に先立って、政府代表らは13日、会議終了日の18日に採択される「2015年以降の減災枠組み」の文言について議論した。
草案では、仙台会議は、「人類とその資産、生態系をより効果的に守るために、少なくとも今後50年間に関するリスク・シナリオを想定し、それに向けた計画を立て、行動を始めることが緊急かつ肝要」であると宣言することになっている。
ポスト2015年枠組みの文言では、「災害リスクに対する、より広範かつ人間を中心においた予防アプローチ」を呼び掛け、全てのレベルにおいて「暴露と脆弱性の問題に対処し、リスクの発生に対する責任を確保するための強化された取組み」の重要性を強調した。
採択される予定の文章はこう述べている。「能力が違っていることに鑑みれば、途上国には、開発のための強化されたグローバル・パートナーシップや、実行のための全ての方法の適切な提供と動員、災害リスクを減らすための継続的な国際支援が必要である。」
草案には、強化された南北協力、それを補完する南南協力および三者協力が「災害リスクを減らすための鍵を握って」いることが証明されており、「それをさらに強化する必要がある」と述べている。
草案にはさらにこうある。「パートナーシップが、全てのレベルの諸政府や企業、市民社会、その他の幅広い利害関係者間の関与がもつ力を全面的に引き出すことによって、重要な役割を果たすであろう。また、人的資源・金銭的資源や専門能力、技術、知識を動員する効果的な手段であり、変化や革新、厚生を生み出す強力な力となりうる。」
資金移転・技術移転というしばしば問題含みの点について、草案はこう述べる。「途上国、特に後発開発途上国や島嶼途上国、内陸途上国、アフリカの場合は、金融支援や技術支援、相互に合意した条件に従っての技術移転を通じたものを含め、二国間及び多国間のチャンネルを通じた、それらの国々の能力を発展させ強化するための予測可能で適切、持続可能で協調的な国際支援を必要としている。」
また、国連やその他の関連機関を含め、二国間、地域、多国間の協調的取り決めのような既存のメカニズムを通じて、環境に優しい技術や科学、革新に加え、知識や情報へのアクセスを強化し、移転を促進することを謳っている。
さらに、諸国家や地域的機関、国連や国際金融機関などの国際機関に対しては、災害リスク低減の取り組みを、あらゆるレベルにおける持続可能な開発の政策や計画、プログラムに組み込むよう呼びかけている。
諸国や地域的機関、国際機関は、災害リスク低減に関与している国際金融機関や地域的機関、ドナー組織、非政府組織を含め、国連やその他の国際機関との間の戦略的な協調を強化するよう促されている。
草案の文章はまた、この枠組みに対するフォローアップの活動として適切な支援を確保する取り組みの一環で、国連防災トラスト基金に対して適切な資金拠出を行うよう求めている。
「この基金の現在の利用状況とその拡大の実現性について、とりわけ、災害に弱い途上国が災害リスク低減のための国家戦略を策定することができるように再検討されねばならない。」仙台会議で採択される予定の草案にはこう述べられている。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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