【アブダビWAM】
シリア内戦は周辺地域を巻き込む地域戦争へと発展する兆候を示していたが、1月29日のイスラエル空軍によるシリア領内への爆撃によって、事態は一気に極めて危険な水域に突入した。
イスラエルの軍事行動は、明らかに国連憲章に違反する侵略行為にほかならない。現時点で爆撃対象が何だったか不明だが、シリア政府は軍事研究施設が破壊されたとしている。また、西側外交筋、反乱軍情報によると、レバノンのヒズボラ勢力向けに武器(地対空ミサイル)を運搬していた車列が爆撃されたという。
「爆撃対象の真相が明らかになる前の段階でも言えることは、イスラエルは、このような越境攻撃で、極めて危険な一歩を踏み出したということだ。今回の一方的な爆撃は、改めて、イスラエルが中東地域で傑出した軍事大国であり、機が熟したと判断すれば、いかなる法律や道徳の規範も顧みず武力の行使を躊躇しないという現実を、シリア政府並びに反乱勢力双方に突きつけた形となった。」と、アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙「ガルフ・ニュース」紙が2月1日付けの論説の中で報じた。
また同紙は、「内戦が混迷の度合いを深める中、シリア政府側にはイランの派遣部隊が参戦するようになった。一方、反政府勢力側にも、多種多様な外人部隊が独自の指揮系統を保持、或いは反政府軍連合の指揮下に組み込まれる形で参戦している。そしてそうした反政府軍勢力の中には、様々なイスラム原理主義組織も含まれている。」
また同紙は、「クルド人勢力も数千人規模の民兵組織をシリア北東部に結成した。しかしこれもシリア各地で多数生まれているとされる反政府戦闘集団のほんの一部に過ぎない。ただし、こうした集団の全容については依然として明らかになっていない。」と報じた。
さらに「ガルフ・ニュース」紙は、「イラン、イスラエル、クルド人勢力、イスラム原理主義勢力など、様々な勢力がシリア内戦に介入しているが、いずれの勢力も、シリアのために戦っているのではないという点を理解しておくことが重要である。シリア内戦の混乱に乗じて戦闘に参画した各勢力には、内戦の混乱に乗じて影響力を拡大し、事態を収拾する段階で、戦略的に有利な条件を引き出そうという独自の思惑がある。」「こうした外部諸勢力による露骨なご都合主義は、アサド政権との交渉を通じた事態の打開を目指しているシリアの政治家らにとっては深刻な弊害となっている。」と報じた。
そして「この弊害は、反政府勢力の指導者モアズ・アル・カティブ氏が、1月30日に、条件が整えば(①拘留者を開放すること。②追放されたシリア国民のパスポートを更新すること)アサド政権との対話をする用意があると発表したところ、自らの支援諸勢力からの反発に直面したことによく表れている。」と結論づけた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
関連記事:
シリア政府、アレッポ争奪戦にさらに軍を投入
|シリア|ハマ虐殺事件の背景に怨恨の影