地域アフリカ|ソマリア|「私は息子が生きていると思って一日中運んでいたのです」

|ソマリア|「私は息子が生きていると思って一日中運んでいたのです」

【モガデイシュIPS=アブドゥルラーマン・ワルサメ】

国連世界食糧計画(UNWFP)による支援食糧の第一便が7月27日にモガディシュに空輸されてきたが、カディジャ・アリさんの2歳の息子ファラちゃんにとっては手遅れの支援となった。

アリさんは、ファラちゃんと8人の子どもたちとソマリア南部シャベリ川下流のWanlaweyn 地区を発ち、16日間にわたる長旅を経てやっとモガディシュにたどり着いたが、ファラちゃんはアリさんの腕の中で既に死亡していた。

「私はこの子が既に亡くなっているのに気付かず、ただ寝ているものだとばかり思い込んでいて、一日中抱いたまま歩き続けてきました。私たちにはこの3日間、水も食糧もなく、この子にもなにも与えてやることができませんでした。」と首都モガディシュの郊外にあるバドバド難民キャンプでIPSの取材に応じたアリさんは泣きながら語った。

アリさんの家族は、既に2年に及ぶソマリア南部を襲った今回の旱魃が始まる前には50頭の牛、20頭の山羊、5頭のラクダを所有していた。牧畜が農村経済の主流を占めるこの地域では多くの家畜を所有することは富の象徴で、アリさん一家は地元でも裕福な家庭であった。
 
「旱魃は最初3期連続で降雨量が不足するところから始まりました。それから全く雨が降らなくなったのです。牧草は枯れ、井戸や川は干上がりました。そして家畜が飢えて次々と死んでいったのです。」と、アリさんはかろうじて生き残った3人の幼い息子の内の一人を抱きながら語った。

バオバオ(ソマリ語で:救済)キャンプは、ソマリア南部における旱魃による難民を収容する最大の施設である。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、現在約5000家族、28,000人が収容されている。

しかしアリさんは一家揃って難民キャンプに辿りついた訳ではない。アリさんの夫は、家族の残りの財産を守るために村に残る選択をした。その後、夫がどうなったかアリさんにはわからない。アリさんは他の数百家族とともに、厳しい旱魃と飢餓から逃れ助けを求めて厳しい旅に出た。

しかしせっかくの援助も、命を救うには遅すぎたケースが少なくない。

難民キャンプに到着した子ども達の中には、栄養失調で衰弱しきっているため医師も手の施しようがないものも少なくない。そうした子供達の中には何日にも亘って水も食糧も一切摂取していないものもいる。

大半の子ども達は、例えば、3歳児でも体格は1歳程度のままであるなど、飢餓による明らかな発育不良の兆候をしめしている。

「彼らは空腹と疲労から弱り果ててここに到着しています。モガディシュでは毎週2~3名の子どもや大人が亡くなっています。しかし難民キャンプは街中に点在しており、難民全体の正確な人数は把握できていません。」とバオバオキャンプで看護婦として従事しているムナ・イゲーさんは、キャンプで栄養失調の子どもの体重を量りながら語った。

7人の子どもの父であるダーヒル・バボウさんは、モガディシュに到着直後、2人の子どもが深刻な栄養失調で倒れるのをただ見ているしかなかった。

「モガディシュの主要医療センターであるバナディール病院の医師と看護婦は最善を尽くしてくれましたが、2番目の子どもにあたる娘は助かりませんでした。」とバボウさんは語った。

バボウさんは家族とともに旱魃をやり過ごそうと努力したが、今回は耐え切れず助けを求めて家を出るしかなかったという。

「私たちは今までしてきたように今回の旱魃も雨の到来を待ってやり過ごそうと努力しました。しかし再び雨が降る前に私たちの家畜が全滅してしまったのです。近隣住民の多くも同様の状況で全ての家畜を失った後、村を去っていきました。だから私たちも諦めて家を去る時が来たと判断したのです。」とガボウさんは栄養失調で亡くなった娘の葬儀の準備をしながら語った。

「私たちは21日間歩きました。道中、見つけられるものを飲み食いし日が落ちれば睡眠をとりました。今回の旱魃は父から聞かされていたものとも、私がこれまで経験したものとも異なる(大変厳しい)ものです。今は試練の最中にあり、私たちは忍耐力をもって自分を強く待たなければなりません。」とガボウさんは語った。

国際連合児童基金(UNICEF)の東南アフリカ地域事務所長のエリハジ・アス・シ氏は、今回の飢餓を「子どもの生存が危ぶまれる危機」と呼んだ。

ソマリアは、人道支援を必要とする被災者が1100万人にものぼるとみられる「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ東部諸国で猛威を振るっている深刻な旱魃の影響を最も受けている国である。隣接するケニアエチオピアジブチも過去60年で最悪といわれる危機に直面している。7月20日、国連はソマリア南部のバクールとシャベリ川下流地域の2つの地方で飢饉が起きている、と宣言した。

ユニセフは、ソマリア、ケニア、エチオピアにおいて合計で223万人の子どもが深刻な栄養失調状況に陥っていると見積もっている。国連は、66,000人を超える栄養失調児童を治療する糧食を含む1,300トンの緊急食糧支援をソマリア南部に対して行ったと発表している。

一方、ソマリア南部では各地の村からの住民流出が続いている。国連によると、これまでに100,000人近い難民がモガディシュに流入しており、その内40,000人近くが先月到着した人々である。
 
 「UNHCRの統計によるとこの一か月間に旱魃と飢餓により、食糧、水、住居、その他の支援を求めてモガディシュに集まってきた難民の数は40,000人近くに上っています。」とUNHCRのヴィヴィアン・タン広報官は7月28日に発表した声明の中で語った。

国連は、難民の数は増え続けており、7月には一日平均1,000人が新たにモガディシュに到着していたとみている。

地元の非政府組織も大いに必要とされている人道支援を行っているが、難民キャンプの収容者によると、援助物資は限られたものであり、ソマリア政府も緊急支援を増加するよう求めている。

UNWFPは7月27日、モガディシュへの最初の食糧空輸を開始した。この支援はイスラム過激派組織アル・シャバブが、(ソマリア南部の)支配地域における国際援助機関の活動を禁止して以来、最初のものとなった。

UNWPFはモガディシュの難民キャンプに収容されている栄養失調に陥っている子供たちのために14トンの栄養強化食品を空輸した。

UNWPFのデイヴィッド・オア広報官はモガディシュ国際空港で記者団に対して、もっと多くの緊急支援物資がこれから数日にわたって空輸されます、と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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