地域アフリカ|ソマリア|対テロ戦争の新たな前線に

|ソマリア|対テロ戦争の新たな前線に

【ヨハネスブルグIPS=モイイガ・ヌドゥル】

ソマリアは、アフガニスタン、イラクに次ぐ対テロ戦争の新たな前線となり、アフリカに不安が起こっている。

唯一の違いは、ジョージ・W.ブッシュ大統領が9.11同時多発テロ事件の後、カブールのタリバン、バグダッドのサダム・フセインを追放するため米軍を派遣したという点だけだ。ブッシュは自らが言うところの「テロリスト」を追い詰めるため、同じ武力を使用している。

ソマリアでは、ブッシュの“汚い仕事”をエチオピアが肩代わりしている。エチオピア軍は弱体のソマリア暫定連邦政府(TFG)を支援し、2006年12月28日に、過激派イスラム民兵グループを首都モガデシュから駆逐した。

市民の支援を得たイスラム軍は、15年に亘る無法状態からある程度の安定を築いた。1991年の独裁者シアド・バレ失脚以来、ソマリアには有効な中央政府が存在せず、バレ失脚後、反乱軍は互いに勢力闘争に明け暮れていた。

イスラム軍は、昨年7月に米国寄りの軍事指導者を打ち負かし、モガデシュを支配下に置いた。

エチオピア軍のイスラム軍追放には10日しかかからなかった。彼らは現在、エチオピアのメレス・ゼナウィ首相言うところの“国際ジハーディス(International Jihadists)”をソマリア・ケニア国境の潜伏地から狩出す作戦に当たっている。

米国は、対テロ戦争の一環として、ソマリア・ケニア国境のある村に隠れているイスラム軍とおぼしき一団に対する空爆のため戦闘機を出動させた。

アナリストは、「米国政府の介入は、平和維持部隊8千人のソマリア派遣を提案したアフリカ諸国を難しい状況に追い込んだ」と語っている。

南アフリカ・ウィットウォーターズランド大学で国際関係を教えているデイビッド・モンヤエ講師はIPSの取材に対し、「米爆撃機のソマリ空爆により、アフリカの立場は微妙になった。水を濁すようなものだ。このことで、ソマリアに部隊を派遣するものは皆、米国の代理人と看做される」と語っている。

侵攻したエチオピア軍に対するソマリ人の攻撃報告も、散発的ではあるが増加している。エチオピアのゼナウィ首相が、エチオピア軍のソマリア駐留は“数週間”と述べたことで、同軍撤退後の混乱に対する懸念が高まっている。

プレトリアにある南アフリカ・アフリカ研究所(Africa Institute of South Africa)のアナリストで「63~83年のケニア対ソマリア外交政策」の著者でもあるコルワ・アダル氏はIPSの取材に対し、「エチオピア軍のソマリ撤退は、早ければ早いほど良い。彼らのソマリア駐留は、両国の過去の恨みを掘り起こすことになる」と語った。

ソマリアと隣の大国エチオピアは、過去45年間に2度の戦争を経験している。ソマリアは圧倒的にイスラム教徒が多いのに対し、エチオピアでは多数のキリスト教徒が首都アジスアベバを支配している。

アダル氏は、「米国およびEUは、できる限り早くエチオピアに代わる平和維持部隊に資金を提供すべきである」と言う。米政府は既に、ソマリアに対し4千万ドルの支援を約束している。

東アフリカ諸国が派遣したケニアのラファエル・トゥジュ外務大臣は1月15日、南アフリカのタボ・ムベキ大統領と会い、ソマリアへの部隊派遣を要請した。ムベキ大統領は今週、問題の調査を約束した。

アフリカの経済/外交を主導する南アフリカは、広範な活動を行っており、コンゴ民主共和国、ブルンディ、スーダン、コートジボワール、エチオピア・エリトリア国境地帯に合計3千人の平和維持部隊を派遣している。

モンヤエ氏は、「南アフリカは、ソマリアに対する長期軍事介入を避ける訳にはいかないと思う。これは私観であって、状況は変化すると思うが、その前に、南アフリカはアフリカ連合および国連において外交的努力を主導することが可能だろう」と言う。

ソマリアのアリ・モハメド・ゲディ首相は1月16日、暫定議会において、1月末までに少なくともウガンダ、南アフリカ、ナイジェリア、マラウィ、セネガルの5カ国から部隊が派遣される予定と語った。

しかし、1,500人の派兵を約束したウガンダを除く4カ国は、1月29~30日にエチオピアで開催されるアフリカ連合(AU)サミットでの決定および部隊派遣の明確なガイドラインが打ち出されるのを待っている。モンヤエ氏は、「派遣した部隊が虐殺されるのを欲する者はいない」と語る。

ソマリアには、無法、無政府状態、流血のイメージが付きまとう。90年代には、民兵組織リーダーと国連平和維持部隊の戦闘があった。93年には、ソマリ兵士が米国の軍用ヘリコプターブラック・ホーク2機を撃ち落し、米兵18人を殺害した。この事件を受け、米部隊は1994年にソマリアから撤退。翌年には国連平和維持部隊も同国から撤退している。

アダル氏は「米国は平和維持やソマリ和平協議に参加すべきではない。IGAD(政府間開発機構)およびAUが主導すべきである」と言う。IGADは、ジブチ、エチオピア、ケニア、ソマリア、ウガンダ、スーダン、エリトリアで構成される。

モンヤエ氏は、「中立の平和維持部隊を派遣することが望ましい。これにより正当性がもたらされる。ここでは、正当性が鍵となる。エチオピア、ジブチといった米国の同盟国と看做されている国々(米国が軍事基地を維持している)は除外すべきである」と言う。

同氏はまた、「ソマリアの平和維持部隊は同時展開とし、平和に反対するものは切り離すべきである」と語っている。

アダル氏は更に続け、「暫定連邦政府は、出来るだけ早期に政府内の力を結集し、和平交渉を開始すべきだ。千載一遇の機会を失ってはならない」と言う。

暫定連邦政府が、逃亡したイスラム軍リーダー、シーク・ハッサン・ダヒール(米国のテロリスト容疑者リストに載っている)との話合いを行うかどうかは定かでない。ダヒールは、アルカイダと関係のあった「アルティハード・アルイスラミヤ」のリーダーであった。アルティハードは既に存在しないが、彼はいまだ演説の中で激しい反米発言を続けている。

米政府は、米人12人を含む214人の死亡者を出した98年のケニア大使館爆撃事件の犯人と思われる数人のアルカイダメンバーが無法のソマリアに潜伏していると見ている。

その内の1人、コモロ人のファズル・アブドラ・モハッメドを逮捕しようと米政府は500万ドルの懸賞金をかけている。

モハンメドはまた、タンザニアの首都ダル・エス・サラームにおける98年の爆弾事件およびケニア・モンバサの海岸リゾートホテル(イスラエル人所有)の爆破を実行したテロリスト・グループとも関係している。

エチオピアは、国境に接するイスラム国スーダンおよびソマリアを警戒すると共に、イスラム系住民のGreater Somalia思想の復活を憂慮している。

Greater Somaliaは、ソマリアの空色の旗の5つの星に象徴される。これらの星は、南部ソマリア、分裂したソマリランド共和国(両者は60年代に独立国として統合された)、エチオピアのオガデン地域、ジブチの一部、ケニア北部を表している。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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