地域アジア・太平洋韓中の協力まで、道のりはまだ遠い

韓中の協力まで、道のりはまだ遠い

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

この記事は2024年6月17日に「ハンギョレ」に初出掲載され、許可を得て再掲載されたものです。

現実的な視点から韓中関係を根本的に見直すことが緊急に必要である。

【Global Outlook=文正仁(ムン・ジョンイン) 

中国は、5月26日に4年半の空白を経て再開された日中韓サミットに多くを期待していたようだ。北京は、会談を機に3カ国の協力を強化し、国家間の関係改善を図ることを期待すると同時に、北京は、米国による中国封じ込めに対する韓国と日本の協力を鈍らせるチャンスができると踏んでいた。

実際、会談前後の中国メディアには、中国と韓国の関係改善に関する楽観的な論評もいくつか見られた。中国のコメンテーターが揃って取り上げたのは、(1) 韓国の趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官が中国訪問中に見せた柔軟な態度、(2) サミット期間中に韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と中国の李強首相が自由貿易協定の第2段階交渉を加速することで合意したこと、(3) 13年間機能していなかった韓中投資協力委員会の再開、(4) 両国間のサプライチェーン問題に関する検討・調整を行う機関の設立、(5) 韓中の外務および国防の次官クラスによる定期的な「2プラス2」会合を設置する取り決めである。ひと言で言えば、中国メディアでは滅多に見られないような賛辞である。(

しかし、筆者が先週北京で中国高官や朝鮮半島専門家と話をしたとき、これとは随分異なる印象を感じた。彼らの見解をまとめると、「まだ道のりは遠い」ということになる。彼らは、そのような見方の裏付けとして、次の四つの論点を示した。

何よりもまず、中国の核心的利益を侵害し続ける限り、ソウルは中国との意味ある協力を期待するべきではないと、中国の友人たちは言った。

韓中日サミットの直後、韓国の申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官がシンガポールで開催されたシャングリラ会合に出席し、米国の国防長官および日本の防衛相と会談した。3人の国防閣僚は共同声明を発表し、その中で「インド太平洋海域におけるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対することを再確認し」、中国の「南シナ海における[……]不法な海洋権益に関する主張」を批判した。3人の閣僚はまた、「両岸問題の平和的な解決を促した」。

さらに、韓国、米国、日本は2024年夏に開始される合同軍事演習を実施することで合意した。

中国政府は、苛立った反応を見せた。中国高官は、台湾に関するコメントを「『一つの中国』の原則に対する侵害であり、中国の内政への見境ない干渉であり、悪意に満ちた攻撃である」として批判した。高官はまた、「韓国、米国、日本は、南シナ海の当事国ではなく、地域内の国家間の海上問題に首を突っ込むべきではない」とも述べた。

中国の反応は、韓国が中国の主権と領土保全という核心的利益を損なうなら、他の分野での協力は不可能になり、両国の関係全体が破綻するということを強く示唆している。これは、韓国にとって紛れもなく厄介な見通しである。

中国高官らは皆、韓国と米国の同盟は韓国の主権事項であり、中国が指図をする立場にはないということには同意した。しかし、中国に対する軍事的抑制または封鎖を正当化する口実として北朝鮮の脅威を利用しようとするいかなる試みも、中国は容認しないと付け加えることを忘れなかった。

また、韓国が、米国によるTHAADミサイル防衛砲台の追加配備や朝鮮半島における中距離弾道ミサイルの前方配備を認めたり、台湾海峡や南シナ海で中国に対する軍事行動に参加したりするなら、北京はそれを敵対行動と見なし、相応の措置を取るという遠回しな警告もあった。「相応の措置」が何かは具体的に語られなかったものの、THAAD騒動後の経済報復よりも実体的なものとなるかもしれないと、接触相手らはほのめかした。

中国人らはまた、韓国が米国との同盟を強化して米国政府からいっそうの支援を確保すれば、中国との交渉における力を得ることができるという韓国の一部の保守派の主張についても、非常に批判的だった。中国人の反応は、米国への過度な依存は韓国にとって資産ではなく負債となるというものだった。

また、韓国は現在の中国と1990年代の中国を混同するべきではないとも言った。米国でさえ中国を思い通りにできないことを考えれば、韓国が米国の威を借りて中国に間接的圧力を加えることができると思うなど、時代錯誤だというのだ。

中国は昔から、朝鮮半島における平和と安定、そして非核化を提唱しており、対話と外交による問題解決を訴えてきた。しかし、最近の朝鮮半島における軍事的緊張の高まりに対しては、傍観者的な姿勢を取っている。

筆者が中国の消極的な姿勢を批判したところ、北京の接触相手らは以前と同様の返事をした。中国政府はすでに、韓国、北朝鮮、米国にとって受け入れ可能なはずの解決策を提示していると、彼らは言う。具体的には、韓米合同軍事演習と北朝鮮の核兵器・ミサイル実験を同時に中止すること、そして、朝鮮半島の非核化と半島における平和体制樹立に向けて同時に動くことである。しかし、韓国と米国がその提案を拒絶し、北朝鮮に対する強硬姿勢を押し通したのだから、中国はこれ以上どうしようもないというのだ。

中国と韓日との3カ国サミット、韓国との対話再開の後だったにもかかわらず、接触相手の中国人らの姿勢は、恐らく韓国や他の国々の観測筋を失望させるようなものだった。こうしたことから、ソウルと北京の関係の未来は寒々として見えるのだ。

原則を強調し、韓米同盟を強化し、米国および日本との3カ国協力を拡大することも必要だろうが、それらは韓国が抱える中国との懸案事項を解決してくれそうにない。現実的、かつ国益の観点から韓国と中国の関係を根本的に見直すことが緊急に必要である。

文正仁(ムン・ジョンイン)は、韓国・延世大学名誉教授。文在寅前大統領の統一・外交・国家安全保障問題特別顧問を務めた(2017~2021年)。 核不拡散・軍縮のためのアジア太平洋リーダーシップネットワーク(APLN)副会長、英文季刊誌「グローバル・アジア」編集長も務める。戸田記念国際平和研究所の国際研究諮問委員会メンバーでもある。

INPS Japan

関連記事

ロシア、中国、北朝鮮の新たな接近は韓国に核武装を強いるのか?

韓国は危機安定性を真剣に考える時だ

|モンゴル|北東アジア非核兵器地帯は可能

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken