SDGsGoal10(人や国の不平等をなくそう)難民登録の記録に縛られたまま―ケニア系ソマリ人、市民権回復に苦闘

難民登録の記録に縛られたまま―ケニア系ソマリ人、市民権回復に苦闘

【ケニア・ガリッサIPS=ジャクソン・オカタ】

2006年、アミナ・サイダがまだ2歳だった頃、両親は一家で、ソマリア国境に近いケニア北部のダダーブ難民キャンプへ移った。ダダーブ難民キャンプ群は、ソマリア内戦を逃れた人びとが国境を越えてケニアへ流入し始めた1991年に設置された。長年にわたり、多くのケニア国籍のソマリ系住民も、難民向けに提供される食料支援や医療、無償教育を受けることを主な目的に、この難民キャンプに入った。また、米国や欧州諸国への亡命や移住への足がかりとみなした人びともいた。|英語版

アミナと同じように、数千人のケニア系ソマリ人が、子どもの頃に本人の意思にかかわらず難民キャンプへ連れて行かれた。そして今、彼らはケニア政府のデータベース上では公式に「難民」として記録されたままでありながら、ケニア市民として認められないという深刻な矛盾の中に置かれている。

「2022年に国民身分証明書を申請しに行ったとき、自分の指紋が難民データベースに登録されていると言われました。住民登録担当者からは、私はソマリア出身だからIDを発行できないと言われました」とアミナは語った。

アミナはIPSに対し、両親のケニア国民身分証明書を担当当局に提示したにもかかわらず、いまだに肝心の身分証明書を受け取れていないと語った。

「今も発行を待ち続けています。希望は捨てていません」と彼女は語った。

国民身分証明書やパスポートがなければ、銀行口座の開設、事業所の確保、医療の受診、高等教育を受けること、正規雇用に就くことなど、基本的なサービスを利用することができない。

ケニア・ガリッサに拠点を置く人権団体「ハキ・ナ・シェリア」によれば、4万人を超えるケニア人がダダーブで難民として登録された可能性がある。ケニア系ソマリ人の二重登録問題は、2025年3月にケニア政府が難民を受け入れ地域社会に統合することを目指す意欲的な政策「シリカ計画」を打ち出したことで、改めて浮き彫りになった。

この二重登録の問題は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が2007年に生体認証システムを導入したことにさかのぼる。UNHCRは、キャンプ内で暮らす数十万人の難民をより的確に把握し、食料配給の過程で生じていた不正に対応するため、生体認証登録を導入した。既存の難民、新たに登録される難民の双方について、すべて指紋が採取された。

2007年、ケニアが2006年難民法を施行すると、難民行政はUNHCRから難民局(DRA)に引き継がれた。さらに2016年には、難民データベースの管理も同局に移管された。

法的空白に取り残されて

ハムディ・モハメドもまた、7人の子どもたちを飢えから守るため、難民キャンプに入った一人である。

「2005年、長引く干ばつで家畜をすべて失いました。飢えが広がっており、私は家族をダダーブに移して難民として登録しました」とモハメドは語った。

「私は20年にわたり、子どもたちとともにダダーブ難民キャンプで暮らしてきました。いまや子どもたちは成人しましたが、その先行きは見通せません。子どもたちはキャンプの外での人生を望んでいますが、それもかなわないままです。」

モハメドによれば、彼の子どもたちは市民でも難民でもない宙づりの状態に置かれている。

「ケニア政府が私たちの出身地だと主張するソマリアには、親族は一人もいません」と彼は言う。

IDを持たないモハメドの7人の子どもたちは、多くの制約を強いられた生活を送っている。自由に移動することも、SIMカードを登録することも、銀行口座を開設することも、多くの政府機関や企業の施設に立ち入ることも、正規雇用に就くこともできない。

「いつの日か政府が突然、私たちを身分証明のない移民とみなし、足を踏み入れたこともないソマリアへ強制送還するのではないかと恐れています」とモハメドはIPSに語った。

アダン・グレにとって、難民登録は海外にいる妻と合流するための唯一の希望だった。

彼は、妻と2人の子どもが難民登録を済ませてから5年後の2005年に難民キャンプへ入った。2007年には、妻と子どもたちはカナダへの亡命を認められた。

Residents of Garissa County, Kenya, attend a community sensitisation forum on identity and citizenship. Credit: Jackson Okata/IPS

「こんな結末になるとは思ってもいませんでした。私が望んでいたのは、ただカナダにいる家族と合流することだけだったのです」とグレはIPSに語った。

さらに彼はこう続けた。「私の両親はケニア人です。ですが今の私は、ケニアに市民として認められず、しかも誰一人知り合いのいないソマリアに行くこともできません。そのため、自分の国にいながら無国籍者のように暮らしています。」

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国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、すべての人が質の高い教育や医療を受け、経済的機会にもアクセスできる世界を目指している。国際カトリック移住委員会(ICMC)によれば、「こうした世界的目標を達成するには、最も脆弱でありながら高い強靭性を持つ難民を十分に包摂するための共同の取り組みが欠かせない」という。

二重登録という行き詰まりの中に置かれた人びとが求めているのは、まさにこうした権利である。

市民権を求める闘い

2021年、難民として登録されていたハムディ・ムフメド、サハル・アミン、デカ・グレの3人のケニア人が、政府を相手取って提訴した。政府が、市民に社会経済的権利を享受できるよう保障する責務を果たしていないと訴えたのである。原告らはまた、子どもたちの名前が、外国籍かどうかを確認しないまま難民データベースに登録されたのは誤りだったと主張した。

彼らは裁判所に対し、ケニア政府に自分たちの名前を難民データベースから削除し、ケニア国民としての身分証明書を発行するよう命じることを求めた。

2025年1月、ケニア・ガリッサ郡の高等裁判所は、審査を経てケニア市民と認定された人びとを難民データベースから削除し、60日以内に国民身分証明書を発行するよう政府に命じた。裁判所は、こうした人びとを登録から外さないことは、市民権と身分に関する憲法上の権利を侵害するものだと判断した。

判決で、ケニア高等裁判所のジョン・オニエゴ判事は、市民権は生まれながらに有する権利であり、行政上の手違いによって奪われるものではないと明言した。

政府による是正措置

ケニア難民問題担当長官のマーシー・ムワサル氏はIPSに対し、政府は2016年にUNHCRから難民行政を引き継いだ際、この二重登録の問題を把握したと語った。

「2019年以降、ケニア政府は難民サービス局、国家登録局、国家情報機関、そしてUNHCRと連携しながら、難民データベースに登録されているケニア人の確認作業を進めてきました」とムワサル氏は述べた。

だが、アダンのように厳格な審査を受けた人びとも、難民登録を抹消され、国民身分証明書が発行されるのをいまなお待ち続けている。

ムワサル氏によれば、この作業には長い時間がかかる。不正を防ぐために、ケニア政府の治安・情報当局の関与が必要だからである。

同氏によれば、2019年以降、少なくとも1万4000人のケニア人が難民データベースから削除されており、現在は残る2万6000人の登録抹消に取り組んでいるが、この作業にはなお時間を要する見通しだという。

「この作業は、関係する業務が多く、複数の機関が関わるため時間がかかります。しかし、ケニア市民でありながら難民として登録されている人は、必ず難民登録簿から削除されるようにします」とムワサル氏はIPSに語った。

Dadaab Refugee Camp. Credit: INPS Japan

グレによれば、自身も審査を受けて難民データベースから名前を削除された1万4000人の一人だが、それ以来、国民身分証明書は発行されていない。

「私たちは2020年に審査を受け、3か月以内にIDが発行されると言われました。しかし、それは実現しませんでした」とグレは語った。

彼は、裁判所の判決によって政府の対応が加速することを願っている。

「私たちは諦めません。市民権は、誰にも奪うことのできない権利です」とグレは語った。

This article is brought to you by IPS NORAM, in collaboration with INPS Japan and  Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC. 

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