【アブダビWAM】
アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙「ナショナル」は8月16日、「分裂状態が続くエジプトが再び安定を取り戻すのは遠い将来のように思えるが、それに向けた努力を惜しんではならない。安定復帰以外の選択肢は、エジプトはもとより、中東地域全体にとって想像もつかないことである。」と指摘したうえで、「エジプトに再び安定と平和を取り戻す道は困難だが決して不可能ではない。」との論説を掲載した。
「現在のエジプトは危険なコースをたどっている…つまり、一旦論争が暴力化すれば、社会内の亀裂と憎しみを増幅させるほうが、それを止めさせるよりもはるかに容易になるという自明の理が、今エジプトでは、現実のものとなってしまっているのである。」
同紙は、アルジェリア、レバノン、シリア、北アイルランド、バルカン半島諸国の例を挙げて、社会の分裂を煽る容易さと反比例して、一旦紛争に発展してしまってから再び事態の鎮静化をはかるのは、極めて困難である、と警告した。
「7月4日に軍によって解任されたムハンマド・モルシ前大統領の支持者が、カイロ東部のラバ・アルアダウィヤモスク周辺と中心部のナハダ広場の2カ所で、モルシ氏の復権を求めて座り込みを続けていた事態については、当局による対応が明らかに必要であった。
しかし、8月14日に暫定政府が実施した強制排除では治安部隊の攻撃でデモ隊側に600人近くの死者が出るなど、事態収拾どころか、安定回復への道を一層複雑にする結果となった。しかしエジプト社会の安定回復は不可能ではない。」とナショナル紙は報じた。
また同紙は、14日の強制排除の後にホスニ・ムバラク時代への回帰を髣髴とさせる戒厳令が全土に敷かれたことに言及し、「エジプト国民は、現状から一歩引き、友好国の助けを受け入れるべきだ。」と報じた。
「エジプト国民は、今般非常事態宣言と外出禁止令が再び全土に敷かれた(ムバラク時代の30年は戒厳令下にあった:IPSJ)この機会に、一歩下がって現状を冷静に再考すべきである。また、今こそエジプトの友好国、とりわけエジプトで対立する両勢力(暫定政権側とムスリム同胞団側)に影響力を持つ諸グループを国内に抱える湾岸諸国が、事態打開に向けた協力の手を差し伸べる時にきている。」とナショナル紙は付け加えた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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