地域アフリカ危機をはらんでいるスワジランドの現状

危機をはらんでいるスワジランドの現状

【ヨハネスブルグIPS=モイガ・ヌデゥル】

「我々はスワジランドがルワンダ、ブルンジ、シエラレオネなど(民族間抗争の絶えない国々:IPSJ)のように暴発してほしくない」と反政府組織(非合法野党)の人民統一民主運動(People’s United Democratic Movement:PUDM)創設者G.ムクマネ氏はIPSの取材に応じて語った。

「スワジランド国民が蜂起して武力に訴えることはできない。冷戦も終結した今、これは論外だ。しかしスワジランドの政治改革を促進するためには国際社会からの圧力が必要だ」とムクマネ氏は言う。

南アフリカに亡命中のムクマネ氏は暴力を否定する一方、民主化への歩みが遅々として進まないことに不満を抱いた国民が自ら行動を起こす(=暴発する)のではないかと恐れている。

ブリュッセルに本部を置くシンクタンク国際危機グループ(ICG)も先週、同様の所感を表明し、スワジランドの内紛予防策の必要性を訴えた。

ICGは「スワジランド:時限爆弾の音」と題する報告書の中で「立憲君主制と民主主義に立ち戻ろうとする国内改革派を支援する国際的圧力がもっと必要である。これこそ、スワジランドがはらむ暴発の危険がこの地域(アフリカ南部)に拡大していくことを予防する最善の策である」と指摘している。

また同報告書は、「近年の絶対君主制への抵抗活動として、労組、学生、宗教グループ、青年運動等によるストライキ・デモに加え、政府の建物への放火、爆破事件も散発される」と述べている。

また、同報告書ではICGアフリカ南部プロジェクトのP.カグワンジャ・ディレクターの言葉を引用し「アフリカの諸機構、欧州連合(EU)、南アフリカとアメリカなどの主要関係国は、(スワジランドの政体に関して)ゆっくりとした変化を訴える王制主義者の主張を容認している」「しかし、スワジランドの立憲君主制への回帰が遅れれば遅れるほど、国内の政情が不安定になるリスクが高くなる」としている。

スワジランドの反体制活動家達は、国際社会にスワジランドへの介入を説得するのは困難だと感じている。それは、同国は国内に問題を抱えているにもかかわらず、全体的に「政情が安定している」と見なされていることに起因している。

「たとえば、国王が豪邸を建設中というようなことでしか、スワジランドは話題にならない」とヨハネスブルクに本部を置く南部アフリカ選挙機構(Electoral Institute of Southern Africa)のC.カベンバ研究員はIPSの取材に応じて語った。

南アフリカとモザンビークに囲まれたスワジランドは1968年にイギリスから独立したアフリカ最後の専制君主国である。1973年、国王ソブーザ二世(当時)は、緊急事態を宣言して全政党を非合法化し、憲法を停止させた。最近になって議会は新憲法草案を採択したが、民主化活動家はこれを拒絶し、現在審議が続いている。

ソブーザの後を継承したのが息子のムスワティ三世である。この37才の君主は贅沢な車を好み、妃(現国王の結婚暦は12回に及ぶ)にも何台かを買い与えていることでしばしばニュースのヘッドラインに登場している。

王の浪費生活は貧困に喘ぐスワジランドの現状には全くそぐわないものである。同国の失業率は40%にのぼり、約100万人の総人口の内、実に70%近くが1日を1ドル以下の生活を強いられている。また、国連エイズ合同計画(UNAIDS)によると、スワジランドのHIV/AIDS感染率は40%に上る(スワジランドは現在、世界でエイズ感染率が最も高く、最新の政府統計では、成人の感染率は42.6%に達する:IPSJ)。

活動家たちは、外部からの活動支援資金が不足してきたことも、スワジランドにおける民主化運動を阻害する要因となっていると言う。「冷戦後、政治闘争のための支援資金が国際的に底をついてしまった。」と、南アフリカに本部を置くスワジランド連帯ネットワーク(Swaziland Solidarity Network:スワジランド民主化推進派のアンブレラ組織)のB.マスク事務局長はIPSの取材に応えて語った。

「ナミビア、アンゴラ、モザンビーク、南アフリカなどアフリカ南部諸国の解放運動は国際的援助、とりわけスカンジナビア諸国からの援助を受けていた」

ところが今日では、「援助国・団体は、市民社会組織に対してしか資金援助を行わない。しかし残念なことに、市民社会には、スワジランドに改革をもたらすような能力はないのが実情です。」とムクマネ氏は語った。ムクマネ氏は「我々は軍事的、経済的、政治的にも資金力のある政権(スワジランド政府)と闘っている現実を考えれば、国際的な支援なしには、民主活動家達は十分な活動はできない」と語った。

これまでスワジランドの現状を述べてきたが、こうなれば必然的に、隣国のジンバブエ(ムガベ大統領の独裁下公民権が厳しく制限され、政治・経済の混乱が続いていることで、国際的に厳しい批判に晒されている:IPSJ)との比較に言及する必要があるだろう。

マスク事務局長は、「ジンバブエのムガベ大統領が欧州各国への渡航が禁じられているにもかかわらず、スワジランドのムスワティ三世が許されていることは偽善であり、これは欧州諸国のダブルスタンダードの現れである」と厳しく非難している。

報道によると、スワジランド政府は声明を発し、「同国政府は国内に抱える問題には適切に対処しており、国際社会の介入は必要ない」と主張している。

しかしICGアフリカプログラムの責任者S.バルド氏は、「そのような現政府による『改革努力』は早々には具体的な形で実行に移されることはないだろう」と語った。

「スワジランドの君主は、もし迅速に時勢を読み、あえて自らの権力に歯止めをかける政治改革を支持するならば、立憲君主として生き残る道もあろう。しかし、同王室、国際社会双方とも、スワジランドにおける専制政治というものが今後そう長続きはしないという現実を認識しなければならない。」とバルト氏は語った。<原文へ>

翻訳=IPS Japan

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