ニュースシリア、中央アフリカ危機が2014年の最重要課題に

シリア、中央アフリカ危機が2014年の最重要課題に

【国連IPS=タリフ・ディーン

国連の潘基文事務総長が16日、シリアや中央アフリカ共和国、マリ、リビア、パレスチナ、ダルフールなどの問題を、国際社会が2014年に直面するであろう重要課題として挙げた。

毎年恒例となっている年末記者会見で潘事務総長は、今年は4年目に入ったシリア内戦が「想像以上に悪化した年」だったと振り返り、「シリアの人々は、残虐行為と破壊が繰り返される今日の状況に、もはやこれ以上耐えられません。」と語った。

潘事務総長はまた、「中央アフリカ共和国の情勢は今や国連が最も危機感を持って取り組むべき深刻な事態に陥っている。」との現状認識を示したうえで、「2013年は同国の政情が『大混乱に陥った』年でもありました。」と振り返った。

さらに潘事務総長は、「(中央アフリカ共和国では)今にも大量殺戮が勃発するのではと強い危機感を持っています。」と警告するとともに、ミシェル・ジョトディア暫定政権に対して人命を保護するよう訴えた。

シリアと中央アフリカ共和国の危機は2014年も引き続き国連が取り組むべき最も深刻な政治課題であり続けるだろう。

シリア危機は、ロシアと中国が窮地に立っているバシャール・アサド政権を擁護して国連安保理で拒否権を発動するため、依然として解決の糸口が見えない状況にある。

1月22日にはジュネーブで紛争当事者間の会議が開かれることになっているが、反体制側からの参加者構成や、P5+1(国連安保理常任理事国である米ロ英仏中+独)に加えてイランやサウジアラビアが出席すべきかどうかという問題などをめぐって、開催が危ぶまれている(その後予定通り開催することでシリア政府と反政府勢力双方が合意、中東周辺諸国や日本を含む31か国が参加予定。一方、イランの参加については米国が反対していることから引き続き協議中:IPSJ)。

一方、9月のセレカ解散以降無政府状態に近い状態に陥った中央アフリカ共和国の情勢は、フランスやアフリカ諸国の軍隊の派遣により、一時的に鎮静化している。しかし内戦が深刻化する中、潘事務総長は、現在の「中央アフリカ共和国国際支援ミッション」を完全な国連平和維持軍に格上げすることを訴えている。

国連事務総長就任以来6年間を振り返って得た教訓について問われた潘氏は、「依然としてあまりにも多くの未解決の問題があることに、驚いています。国連が直面している危機の件数は、一期目(2007年~11年)よりも増加傾向にあります。当時はダルフール危機が最大の懸案事項でしたが、今はあまりにも多くの危機が同時並行で進行しています。とりわけシリア、中央アフリカ共和国、マリ共和国の危機に対する緊急の対応が要請されています。」と語った。

潘事務総長は「いかに強力で資金に恵まれていたとしても、特定の国や機関がこうした危機を、単独で解決することはできません。」と指摘し、問題解決に向けた国際協力の重要性を強く訴えた。

「これこそが私が学んだ最も重要な教訓であり、だからこそ私は各々の加盟国に対して『ともに協力し合っていきましょう』と積極的に協力を呼びかけているのです。」

潘事務総長はまた、国連事務総長や国連ができることには限界があると警告したうえで、「(問題解決には)多数の地域及び準地域規模の組織からの支援が必要です。」と語った。

他方、悪化し続けるシリア情勢を背景に、内戦の影響を被っている950万人に対する人道支援を実施しているいくつかの国連機関が、16日共同で、資金不足65億ドルの解消を求める異例のアピールを行った。

バレリー・アモス人道問題担当事務次長とアントニオ・グテーレス難民高等弁務官は、今日のシリア情勢を「最悪」と表現した。

イェンス・レルケ人道問題調整事務所(OCHA広報官はIPSの取材に対して、「この共同アピールは特定の危機に対する支援を訴えるものとしては史上最大規模のものです。」と語った。

どの程度の支援を見込んでいるかとの問いに対して、レルケ広報官は、「各国が過去のアピールに対してと同様の寛容さを今回も示してくれることを切に希望しています。」と述べたうえで、「ただしアピールで求められた支援額が100%満たされたことはありませんが。」と語った。

潘事務総長は記者会見で、「今年は従来の危機に加えて新たな危機が発生する一方で、外交上重要な成果をあげた年でもありました。」と述べ、2013年における様々な外交的成果についても振り返った。

国連安保理は9月27日、シリアに化学兵器の破棄を義務付ける画期的な決議案を全会一致で採択した。一方193加盟国からなる国連総会でも、4月2日、「長年の懸案」であった武器貿易条約案が採択された。

また2015年に期限切れを迎えるミレニアム開発目標(MDGsの後継となる持続可能開発目標(SDGs)を初めとするロードマップにも、2013年になって国際的合意がなされた。

潘事務総長は、先月ワルシャワで開催された国連気候変動会議(COP19)についても、「2015年の交渉妥結に向けて、協議が継続された。」と評価した。

また西アフリカ・サヘル地域においては、トゥアレグ独立派とイスラム原理主義武装組織がマリ北部を占拠し一時は中部への侵攻が懸念されたが、(フランス軍の軍事介入に続く)国連の仲介と平和維持軍の派遣でその後事態は平静を取り戻し、今月にはマリ国会議員選挙が平和裏に実施された。

潘事務総長は、「14日にはマリ北部のキダルで自爆テロ事件があったが、和平プロセスが影響を受けることはない。」と付け加えた。

また潘事務総長は、「2013年のもう一つのハイライト」として、イランの核計画を巡る11月24日のイランと「P5+1」間の歴史的な暫定合意を挙げた。

「この暫定合意が、全ての懸案事項について包括的な合意へと発展することを切に願っています。」と潘事務総長は語った。

最後に潘事務総長は、「2013年は、国際社会がネルソン・マンデラ南アフリカ共和国元大統領の死を悲しみとともにその偉大な功績を共に悼んだ年として記憶されるだろう」と指摘したうえで、「私が2014年に最も期待するものは、世界の指導者らが、道義的・政治的責任を果たすうえで故マンデラ氏の範に倣おうとする姿です。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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