【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
タンザニアでは、港湾都市のダルエスサラームの病院に心疾患で入院していたジョン・ポンベ・ジョセフ・マグフリ大統領が3月17日にの逝去したのを受けて、半旗が掲げられている。マグフリ氏は享年61歳であった。
サミア・スルフ・ハッサン副大統領が、国営テレビで大統領の悲報を伝えた。ハッサン副大統領は憲法の規定に従い第6代大統領に就任し、マグフリ大統領の二期目(昨年11月~2025年)を努めることになる。サミア氏はタンザニアで初の女性大統領となる予定である。
「マグフリ氏は3月6日からジャカヤ・キクウェテ心臓病研究所に短期入院したが、3月14日に再び体調を崩して病院に緊急搬送された。」と、サミア副大統領は語った。
アフリカ各国の首脳から追悼のメッセージが寄せられる中、タンザニア国内の反応は、野党議員らがマグフリ大統領の下で民主主義が後退したと指摘する等、賛否入り混じったものとなっている。マグフリ氏は、頑強な新型コロナウィルス感染症否定論者で知られ、マスク着用やソーシャルディスタンスに反対する一方で、効果が証明されていない薬草療法を勧めたり、神の恩恵でタンザニアは新型コロナウィルス感染症を克服したと主張していた。
「ワクチンは機能しない」
マグフリ氏は、最後まで保健省に対して、新型コロナウィルスワクチンをタンザニアに確保しないよう働きかけていた。また1月下旬には、「ワクチンは機能しない。もし白人が本当に(新型コロナウィルス)ワクチンを開発できていると言うなら、エイズワクチンだって開発できていただろうし、結核のワクチンは既に過去のもので、マラリアワクチンや癌のワクチンも既に発見されていたはずだ。」と主張していた。
マグフリ氏の死因は心疾患とされているが、公に姿を現さなかった3週間と最後の状況から、新型コロナウィルス感染を疑う声も少なくない。
野党指導者のトゥンドゥ・リス氏は「マグフリ氏の死因は新型コロナウィルス感染症だ。」「彼は、新型コロナウィルス感染症と闘う国際社会を無視しました。…東アフリカコミュニティー、近隣諸国、科学を無視したのです。世界中の人々が新型コロナウィルス感染症と闘うために実践するように言われている基本的な注意事項を拒否しました。」と語った。
リス氏はさらに、「彼はマスクを着けず、着用している人を中傷しました。また、科学やワクチンの存在も信じませんでした。一方、信仰による治癒と医学的に疑わしい薬草の調合を信じていました。」と指摘したうえで、「その結果、何が起こりましたか。新型コロナに感染して倒れたのです。そして今になって、私たちは、マグフリ氏が新型コロナ感染症について理解していた事実を知るのです。」と語った。
マグフリ氏は亡くなる少し前、ザンジバル島の副大統領が新型コロナウィルス感染症で死亡したのを受けて、タンザニアに新型コロナウィルス感染症が依然として蔓延しているという事実を渋々と認めていた。
マグフリ氏は2015年に腐敗と闘い、インフラ開発を進めることを公約にタンザニア第5代大統領に当選した。
権威主義的な政治
しかしまもなく権威主義的な傾向を強め、メディア、市民社会、野党に対する弾圧を始めたため、同盟諸国や人権団体の間で、懸念が広がっていた。
昨年10月の大統領選挙では再選を果たしたが、野党や一部の外交官の間から、票の不正操作や外国メディアやオブザーバーチームに対する妨害行為、軍による威圧的な行動があったとして選挙の正当性を疑う指摘がなされていた。
なかには、マグフリ氏は、アフリカで最も安定した国の一つであるタンザニアの民主主義に深刻な打撃をもたらしたと分析している専門家もいる。
一方で、マグフリ氏は、無償教育と農村の電化を拡大したり、鉄道や、電力出力を倍増させた水力ダム建設に投資したこと、さらには国営航空を復活させた実績が称賛されている。
マグフリ政権はまた、タンザニアの鉱山資源への政府の関与を高める一連の法律を通過させ、諸外国が所有する鉱山会社に数百万ドル相当の税金不足分を支払うよう要求した。
マグフリ氏はタンザニア北西部のビクトリア湖に面したゲイタ州チャト地区で生まれ育った。彼の実家は草葺屋根の家で、家畜の世話をしながら、牛乳や魚を売って、家族を支えた。「貧しいということがどういうこと私はよく知っている。」としばしば語っていたという。
マグフリ氏はダルエスサラーム大学で化学の博士号を取得したほか、英国のアルフォード大学にも留学している。
マグフリ氏は1960年代初頭の英国からの独立以来、同国の政権を担い続けているタンザニア革命党(CCM)のメンバーであった。また、1995年に国会議員に選出されてからは、畜産漁業開発大臣や土地集落住宅大臣を歴任し、「ブルドーザー」の異名をとった。あとには、小学校の教師をしている妻のジャネットと2人の子息が残された。(原文へ)
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