地域アジア・太平洋中国・ブラジル経済関係深化のデメリット

中国・ブラジル経済関係深化のデメリット

【リオデジャネイロIPS=ファビアナ・フレイシネット】

この10年間で、中国はブラジルにとっての最大の貿易相手、海外投資源になった。しかし、グローバル経済危機下で中国というライフラインに頼り続けることで、ラテンアメリカ最大の経済大国であるブラジルが長年にわたって直面してきた問題が解決されるどころか、より悪化しそうなのだ。

2009年、中国は、米国を抜いてブラジル最大の貿易相手になった。2011年の二国間貿易は年間770億ドルで、ブラジルの115億ドルの黒字である。2000年には、両国間の貿易はわずか25億ドルであった。

Pipelines that transport grains from the Suape port in Northeast Brazil. In the background, Brazil's largest flour mill, owned by Bunge. Credit: Mario Osava/IPS
Pipelines that transport grains from the Suape port in Northeast Brazil. In the background, Brazil’s largest flour mill, owned by Bunge. Credit: Mario Osava/IPS

 他方、中国資本による対ブラジル投資は、中央銀行の統計によると2005年から2011年までで30億ドルである。しかし、ブラジル貿易投資振興庁によると、香港やその他の地域を通じて間接的に投資されるものも含めると、2009年から2011年の間の投資額は170億ドルにものぼるという。

輸入・対外投資に関して、中国は、世界最大の人口(13億人)を抱えて増大し続ける原材料需要を背景に、特定の国への依存を最小限に抑えながら重要な基本物資を安定的に確保する政策を推し進めている。

APEX-Brasilの報告書『中国経済の国際化―直接投資の規模』によると、中国による投資は、世界経済危機にもかかわらず、石油や鉄鋼といった天然資源集約的な部門を中心に好調であるという。ブラジルの対中輸出は、鉄鉱石(2011年の輸出量の45%)、大豆(25%)、石油(11%)、食料などが中心である。

しかし、こうした経済構造に対する懸念も出されている。同盟横断統計・社会経済研究局(DIEESE)のエコノミスト、アデマール・ミネイロ氏は、「現在の状況が続くと、中国との経済統合によって、ラテンアメリカ旧来の農業輸出依存が深化することになってしまう」と述べている。

ミネイロ氏によると、中国との貿易構造は、かつての対欧州、対日本の構造とあまり変わることがないという。つまり、ブラジルは農産物、鉱物、エネルギーを輸出し、工業品を輸入するという姿である。

ミネイロ氏は、「ラテンアメリカでは、歴史的にこうした輸出モデルが少数の人々の元に富と権力を集中させる社会構造を助長してきた経緯があります。すなわち、ラテンアメリカにおいて民主主義を深化し富の再分配を実現していくには、こうした輸出構造を変革していく必要があるのです。」と語った。

この点については、ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)も2010年に同様の見解を示している。

APEX-Brasil報告書は、中国が戦略的に天然資源が豊富な国々を貿易・投資対象に絞っているのはラテンアメリカに限ったことではなく、アフリカや中東においても同様である点を指摘している。

ラテンアメリカ諸国と中国の間の貿易総額は2000年の120億ドルから2011年には1880億ドルに増大している。

ブラジル経済の対中依存問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

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