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SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)ロシア産原油の禁輸措置が切り開くアフリカの新展開

ロシア産原油の禁輸措置が切り開くアフリカの新展開

【ラゴスIDN=オラトゥボーラ・アヨデジ】

Map of the major existing and proposed russian natural gas transportation pipelines in europe./ Wikimedia Commons
Map of the major existing and proposed russian natural gas transportation pipelines in europe./ Wikimedia Commons

ロシアは米国、サウジアラビアに次ぐ世界第3位の産油国で、1日に輸出する約500万バレルの原油のうち、制裁発表前は半分以上が欧州向けだったことを理解することは非常に重要だ。発表前、ロシアは英国と米国の石油需要のそれぞれ約8%と3%を占めていた。

国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの原油生産量は日量70万バレル減少し、さらにその減少は4月末には日量約150万バレル、5月末には300万バレルに達する可能性がある。

天然ガスについては、欧州連合(EU)の天然ガス輸入量の約40%、英国の天然ガス供給量の約5%をロシアが占めており、ウクライナを経由するパイプラインもあれば、ベラルーシ、ポーランドを横断してドイツに至る「ヤマル・ヨーロッパ」、バルト海の下を通ってドイツに至るノルド・ストリーム1など別のルートをとるものもある。実際、ロシアのウクライナ侵攻以来、供給不足を懸念して英国のガス価格は高騰している。米国はロシアのガスを輸入していない。

ロシアのウクライナ侵攻は、特に欧州諸国、米国およびNATOの同盟国からの世界的な反発に直面し、ロシアに対する制裁や処置が行われるようになった。例えば、EUはロシアの天然ガスを3分の2まで削減し、2030年までにロシアの供給への依存を解消したいと表明している。

Image source: Sky News
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そうなると、欧州はカタールやアフリカのアルジェリア、ナイジェリアといった天然ガス輸出国に頼るしかない。実際、アルジェリアはEUへの天然ガス輸出の約8%を占めているが、生産性の拡大には現実的な障害がある。アフリカに目を向けることは欧州にとって究極の選択肢ではなく、他にも選択肢があることを指摘しておく必要がある。

  • 欧州最大のロシア産ガス消費国であるドイツは、ウクライナ危機のためにロシアからの新ノルドストリーム2ガスパイプライン(西シベリアとドイツを結ぶ110億ドルのバルト海パイプラインプロジェクトで、既存のノルドストリーム1パイプラインの容量を2倍にする)の認証を停止したが、英国、デンマーク、ノルウェー、オランダからはパイプラインでガスを輸入できるだろう。
  • 南欧はイタリアへのアドリア海横断パイプラインとトルコ経由のアナトリア天然ガスパイプライン(TANAP)を通じてアゼリガス(アゼルバイジャンからのガス供給)を受け取ることができる。
  • ノルウェーのエクイノール社は、欧州の夏の間、ノルウェーの油田からより多くのガスを生産する方法を検討していると発表した。
  • ドイツの電力会社協会BDEWは、ロシアからのガス供給が途絶えた場合に備えた緊急計画を打ち出すよう政府に要請した。
  • また、米国は今年、約150億立方メートルの液化天然ガス(LNG)をEUに供給することを検討しており、米国のLNGプラントはフル稼働で生産している。
  • 欧州委員会によると、米国やカタールなどの国からの天然ガスやLNGは、欧州がロシアから年間600億立方メートル(bcm)を得ている天然ガスの代替となりうる。
  • また、2030年までに発電能力を3倍にして、480GWの風力発電と420GWの太陽光発電を追加すれば、年間170Bcmのガス需要を削減することができる。
  • また、2030年までに、ガスボイラーを3000万台のヒートポンプに置き換えることで、35億cmの削減が可能。
  • 欧州は気候変動目標を達成するために脱石炭を図っているが、天然ガス価格の高騰により、2021年半ばから一部の石炭火力発電所を再稼働させている。
  • ドイツは、ロシア産天然ガスへの依存を減らすために、石炭や原子力発電所の寿命を延ばす可能性があると表明している。
  • また、再生可能エネルギーとエネルギーの多様化が今後のエネルギー体制で求められる中、欧州によるクリーンエネルギーへの移行が急速に進んでいる。

以上のことから、欧州の選択肢の広さは明らかである。しかし、アフリカ諸国が欧州にガスを供給するのに有利な立場にあることは間違いない。

SDGs Goal No. 7
SDGs Goal No. 7

アフリカは天然資源に恵まれており、55カ国のうち半数近くが天然ガスの確認埋蔵量を持ち、その総量は800兆立方フィートにもなる。その内、ナイジェリアは206兆5300億立方フィートという最大の確認埋蔵量を有している。

次いで、アルジェリア、セネガル、モザンビーク、エジプトがそれぞれ159.1兆立方フィート、120兆立方フィート、100兆立方フィート、77.2兆立方フィートの天然ガス埋蔵量が確認されている。特に米国は欧州の同盟国が北アフリカ、中東、アジアから代替ガスを確保することを支援しているなか、こうしたアフリカ諸国の豊富な天然ガス資源に注目が集まっている。

このため、アフリカがこのギャップを埋めるという議論も出てきている。実際、タンザニアのサミア・スルフ・ハッサン大統領は、アフリカ以外の新たなエネルギー市場の確保に努めているが、ロシアのウクライナ侵攻は天然ガス販売の好機となるとの見解を示している。

タンザニアはアフリカで6番目に大きい57兆立方フィート(16億立方メートル)の天然ガス埋蔵量を誇り、現在シェル社と共同でその広大な海上天然ガス資源を活用し、欧州に輸出する計画を進めている。

また、ナイジェリアのエネルギー担当官であるティミプレ・シルヴァは、同国の天然ガスをアルジェリア経由で欧州に輸送するサハラ砂漠横断パイプラインを建設する計画があることを認めた。ドーハで開催された天然ガス輸出国フォーラムで言及されたものだ。

この発言は、アルジェリアおよびニジェール共和国との覚書への署名と、614kmのサハラ砂漠横断天然ガスパイプラインの建設が進行中であることを受けたものだ。このパイプラインは、70年代から構想されていたもので、ナイジェリア北部からニジェール、アルジェリアを通り、欧州につながる予定だ。

にもかかわらず、アフリカ産天然ガスが、応急処置的な解決策になるという懸念があるのは、主にインフラの不足が原因だ。インフラへの投資不足は、特にサブサハラ・アフリカのエネルギー産業の大きな妨げとなっている。

北アフリカには、すでに欧州との間に天然ガス輸出市場が確立されていることは特筆に値する。例えば、アルジェリア(アフリカ最大の天然ガス輸出国)のマグレブ・欧州ガスパイプラインは、モロッコを経由してスペインとポルトガルに天然ガスを運び、メドガズパイプラインはアルジェリアとスペインを直接結んでいる。

2019年、アルジェリアはスペインに約170億立方フィート(4億8100万立方メートル)のガスを輸出した。この数字は、2020年には約90億立方フィート(2億5500万立方メートル)に減少した。この減少は、アルジェリアとモロッコの関係が破綻し、アルジェリアがスペインへのガスの直接輸出を開始すると発表したことに起因する。

African Continent/ Wikimedia Commons
African Continent/ Wikimedia Commons

しかし、サハラ砂漠以南のアフリカでは、インフラの危機が長引いている。約13兆5000億立方フィート(3820億立方メートル)のガス確認埋蔵量を持つアンゴラは、技術・操業上の問題や上流投資・インセンティブ不足が重なり、過去5年間で石油・天然ガスの生産量が激減している。

ナイジェリア政府は2020年に「天然ガスの10年」を発表した。これは、南部アジャオクータから北部カドゥナ州を経て北西部カノ州に至る新天然ガスパイプラインの開始によってさらに強化され、その資金の大部分は中国の金融機関から提供された。

欧州へのアクセスを可能にするための地域間・大陸間パイプラインの建設には、かなりの投資が必要だ。新たに署名された石油産業法は、石油・天然ガス部門における汚職や不正行為、無駄を削減し、ホストコミュニティの方向性を変え、同部門への投資を促進するための枠組みを提供すると期待されている。(原文へ

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