【ウィーンINPS Japan=オーロラ・ワイス】
核兵器は、ウラジーミル・プーチンがそれを脅迫の手段として利用し始める以前から、またイスラエルの将軍がガザのパレスチナ人を壊滅させるために使用する可能性を示唆する以前から、さらにはイランがウラン濃縮を進め、それが米国の制裁を招き、そのイスラム国家をさらに孤立させることになる以前から、世界的な脅威であった。
核兵器によるあらゆる脅しは、極めて深刻に受け止めなければならないだけでなく、完全に容認できない無責任な行為である。
その壊滅的な人道的影響と甚大なリスクを考えれば、私たちは核兵器に関するパラダイム・シフトを必要としている。核兵器や核抑止力が安全保障を保証するものではないことは明らかである。
核の脅威はここ数十年で最も高まっている。欧州は、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、かつてないほど核の危険にさらされてきた。近年、ロシアからの核の脅しに恐怖を抱くだけでなく、ウクライナのザポリージャ原子力発電所が損傷することによる核災害の可能性にも不安を感じてきた。
2022年には、ロシア軍が欧州最大の原発であるザポリージャ原発の管理棟や主変圧器に火を放ち、消防士の立ち入りを禁止した。この危機的状況の後、幸いにも国際原子力機関(IAEA)の専門家による監視のもとに置かれているが、ロシアとウクライナは互いにその原発へのテロ攻撃を計画していると非難し合った。この状況に警鐘を鳴らし、「核戦争防止のための物理学者(IPPNW)」は、原発に対する軍事攻撃の禁止を求めた。戦時下で適切な災害対応を行うことは不可能であることを、私たちは認識しなければならない。
核兵器が使用される場合、それが意図的な使用、エスカレーション、あるいは人的・技術的ミスによる誤作動であれ、その結果は壊滅的なものとなることは明白だ。それは、単に即時の破壊や無実の人々の命が失われることにとどまらない。経済への影響や、パニックによる大量の難民発生など、長期的な影響も考慮しなければならない。限定的な核戦争であっても、地球規模の食糧供給が崩壊し、大規模な「核の冬」を引き起こす可能性がある。その結果は想像を絶するものであり、唯一の解決策は予防である。しかし、予防が成功するためには、核兵器の全面禁止が不可欠である。
新たな技術、例えば人工知能やサイバー攻撃の脆弱性も、核のリスクを増大させている。だからこそ、150を超える非核保有国は、核リスクの削減を求めている。その「ゴールド・スタンダード」は、核保有国が核兵器を完全に禁止することである。しかし、核兵器を保有する9か国(アメリカ、ロシア、フランス、中国、イギリス、パキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮)は、それを全く望んでいない。それどころか、彼らは大量破壊兵器の改良と核兵器の増強を進めている。現在、世界の核兵器の総数はおよそ13,000発と推定されている。
この現実を変えなければならない。核軍縮の現状維持はもはや許されず、人類全体が取り返しのつかないリスクにさらされている。
私はウィーンでイラン核合意(JCPOA)に関する交渉を取材してきた。その中で注目したのは、米国の代表団はイラン代表団とは直接交渉せず、他の関係国が仲介する関節交渉を行った点である。日をまたぐ交渉の終盤になると、ロシアの代表が中国とイランを代表して向かいのホテルへ行き、そこに待機していた米国の代表団と制裁解除について交渉したのだった。
この合意の支持者たちは、JCPOAがイランの核兵器計画の再開を防ぐことに寄与し、それによってイランとイスラエルやサウジアラビアといった地域のライバル国との対立の可能性を低減させると主張している。しかし、2023年初頭に国連の査察官が、イランが兵器級に近いウランを濃縮している痕跡を確認し、国際社会に衝撃を与えた。イランが正式に核兵器保有国となれば、安全保障上の理由からサウジアラビアやイスラエルも核開発を進めることになり、中東における核戦争の可能性を高めることになるだろう。
そのリスクにもかかわらず、核保有国はますます核兵器を強化し、核を持たない国々も厳しい制裁の下で開発を進めている。そして、核兵器を持たない国々は、核保有国の軍縮を求めている。では、核を保有しない北大西洋条約機構(NATO)加盟国はどのような立場をとっているのだろうか?
NATO加盟国の中で、近い将来に核兵器禁止条約(TPNW)に署名する国が現れる可能性は低い。NATOはこれまで、TPNWは核不拡散条約(NPT)と両立しない」という理由で、この条約に関する会合への建設的な関与を拒んできた。しかし、これは事実ではない。
NATOは依然として核兵器を安全保障の要と見なしている。しかし、軍縮の専門家たちは、「人為的なミス(意図的か非意図的かを問わず)、技術的なエラー、サイバー攻撃などによって、いつか必ず何かが起こる」と警告している。核兵器を保有し、貯蔵すること自体が、あまりにも大きな安全保障上のリスクなのだ。
2025年1月20日に米国大統領に再就任したドナルド・トランプは、既にいくつかの過激な行動に出ている。国際人道支援団体への援助を打ち切っただけでなく、グリーンランドやカナダを米国に併合しようとするという衝撃的な野望まで抱いている。国際社会は、トランプの野心がどこまで広がるのか、そして彼がそれを実現するためにどのような手段を用いるのか、極めて危機感を持って見守っている。このような世界的に不安定な時代において、ほんのわずかな誤った判断が核戦争につながる可能性がある。
米国の歴史を振り返れば、核兵器の使用をためらわない姿勢がうかがえる。映画「オッペンハイマー」を観た人なら、核爆弾の開発者がホワイトハウスを訪れた際、ハリー・トルーマン大統領が「自分こそが原爆を投下した大統領として歴史に名を刻む」と誇らしげに語るシーンを思い出すだろう。トルーマンは、その結果がどうであれ、歴史に名を残すことを誇りにしていた。

しかし、核兵器の使用を命じた米国大統領はトルーマンだけではない。それ以降も、多くの大統領が核の使用を検討していた。
ダニエル・エルズバーグの著書『終末兵器』を参考にすれば、米国の核戦略が70年にわたってどのように維持されてきたかがわかる。エルズバーグはかつて大統領顧問を務め、ベトナム戦争時の「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した伝説的な内部告発者である。彼が明かしたところによると、1960年代、酔った状態のリチャード・ニクソン大統領は北朝鮮への核攻撃を命じたことがあった。米国の偵察機が撃墜されたことに激怒したニクソンは、軍司令官に電話をかけ、戦術核攻撃の標的を指定した。だが、当時の国家安全保障担当補佐官であるヘンリー・キッシンジャーが軍と交渉し、ニクソンが酔いから覚めるまで待つように説得したという。
その後のニクソンは、ソ連に向けて核爆弾を搭載した爆撃機を飛ばし、「自分は本当に第三次世界大戦を始めるかもしれない狂人だ」という噂を流すことで、敵国を威嚇しようとしたとされる。
現在の米国の政策では、大統領が核攻撃を命じることにほぼ制限がない。軍は戦争法に違反すると判断した命令を拒否することができるが、一般的な理解として、大統領はいつでも、どんな理由でも核兵器を発射できる権限を持っている。
この現状を変えるためには、「先制不使用(NFU)」政策の採用が急務である。この政策は、米国が核兵器を「先に使わない」と明確に定めるものであり、同時に議会の戦争宣言権限を再確認するものでもある。米国の憲法には「大統領が単独で戦争を始めることはできない」と明記されている。それにもかかわらず、大統領が単独で核戦争を始めることができる現状は、矛盾していると言わざるを得ない。したがって、NFU政策の導入は不可欠であり、核戦争の危険を未然に防ぐための最も基本的な一歩である。(原文へ)
INPS Japan
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