ニュースアーカイブ「核兵器なき世界」に焦点あてた3つの会議

「核兵器なき世界」に焦点あてた3つの会議

【ベルリンIDN=ジャムシェッド・バルーア】

ウクライナをめぐる米露間の緊張が高まり、核問題にも悪影響が出てくると予想される中、核不拡散・軍縮に向けた取り組みを強化するうえで、今年4月に予定されている3つの国際会議の重要性がますます高まっている。

その一つ目は、メキシコで行われた「第2回核兵器の非人道性に関する国際会議」から2か月後に広島で開催予定の「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)第8回外相会合」(4月11~12日)である。これに、東京に本拠を置く創価学会インタナショナル(SGI)が主催する「核兵器の非人道性に関する宗教間シンポジウム」(ワシントン、4月24日)と、国連本部で開催される「2015年核不拡散条約(NPT)運用検討会議第3回準備委員会」(ニューヨーク、4月28日~5月9日)が続く予定である。

準備委員会は、NPT各条項の履行状況を確認し、運用検討会議に向けて勧告を行うことを念頭に加盟国間の議論を促すことを目的としている。1970年に発効し1995年に無期限延長されたNPTは、5年ごとに運用検討会議を開催することを義務づけている。同条約は、世界の核不拡散体制の要石だとみなされている。

NPDI

UN General Assembly/ Wikimedia Commons
UN General Assembly/ Wikimedia Commons

「核兵器なき世界」の促進は、不拡散・軍縮イニシアチブ(NPDI)の一環として広島で開催される外相会合の目的でもある。NPDIは日本とオーストラリアが主導する国家連合で、全会一致で採択された2010年NPT運用検討会議最終文書の履行を支援するために結成された。

オーストラリア、カナダ、チリ、ドイツ、日本、メキシコ、オランダ、ナイジェリア、フィリピン、ポーランド、トルコ、アラブ首長国連邦からなるNPDIは、NPT交渉のペースや、不拡散・軍縮の両面において速やかに行動に移る必要性に関連した多くの宣言を発してきた。

NPDIは2013年4月にハーグで開催した(第6回)外相会合の共同ステートメントの中で、「全ての条約加盟国による更なる検討のために、核兵器の役割低減、非戦略核兵器、包括的核実験禁止条約(CTBT)、核兵器国への保障措置拡大、非核兵器地帯及び輸出管理に関する作業文書に加え、昨年の軍縮・不拡散教育に関する作業文書を更新したものを提出する等、準備委員会の作業に積極的に貢献する」と決意を表明している。

さらに「我々は、CTBTの普遍化及び早期発効は核軍縮の達成に必須なステップであると確信する。今年のブルネイ及びチャドによる批准により批准国数の合計が159カ国となったことを歓迎する。…我々は全ての非締約国、中でも残りの未署名・未批准の発効要件国8カ国に対し、これ以上の遅滞なくCTBTを署名・批准するよう緊急に求める。」「CTBT批准を促進する特別な責任を持つ核兵器国に対し、この分野において主導的な役割を果たすよう求める。条約の発効まで、全ての国に対し核実験やその他のいかなる核爆発も控えるよう求める。」と述べている。

3つの「阻止」と3つの「低減

広島外相会合の重要性は、1月20日に岸田文雄外相が長崎大学で行った演説でも強調されている。岸田外相は、核兵器が初めて実戦に使用されて犠牲となった広島の出身である。

岸田外相は、「3つの阻止」と「3つの低減」が、「核兵器なき世界にむけた(日本の)基本的な考え方の中心だ、と語った。「3つの阻止」とは、(1)新たな核兵器国出現の阻止、(2)核開発に寄与し得る物資、技術の拡散の阻止、(3)核テロの阻止であり、「3つの低減」とは、(1)核兵器の数の低減、(2)核兵器の役割の低減、(3)核兵器を保有する動機の低減である。

宗教間シンポジウム

Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun
Dr. Daisaku Ikeda/ Seikyo Shimbun

SGIの池田大作会長は、「こうした措置の実現には、グローバル市民社会の積極的な参加が必要」として、(2011年の「平和提言」の中で)「国際政治のリーダーシップが欠けているならば、市民社会がその隙間を埋め、世界を新しくより良い方向へ動かすエネルギーの供給源になっていけばよいのです。」「つまり、民衆一人一人がそれぞれの場所で自分にしかできない役割を担うこと自体が、リーダーシップの本旨であるとの発想の転換こそが必要なのです。」と述べている。

池田会長はまた、2013年の「平和提言」の中で、「国家として必要ならば大多数の人命や地球の生態系を犠牲にすることも厭わないとの非道な思想の根を断つ挑戦をしていく必要があります。同時に、核兵器の問題というプリズムに、生態系の健全性や、経済開発、人権等さまざまな観点から光を当てることで、『現代の世界で何が蔑にされているのか』を浮き彫りにし、世界の構造をリデザイン(再設計)すること―そして、全ての人々が尊厳ある生を送ることができる『持続可能な地球社会』を創出できると考えています。」と述べている。

こうした背景に照らせば、米国政府と連邦議会の本拠であるワシントンDCにおいてSGIが主導して開催される宗教間シンポジウムは、きわめて重要なものである。

第3回準備委員会

そして2015年NPT運用検討会議第3回準備委員会も極めて重要な会合である。広島・長崎は、2015年に原爆投下から70年を迎える。SGIの池田会長は、「この会合と2016年の主要国首脳会議(G8サミット)が、核兵器なき世界に向けた拡大サミットへの適切な機会となるだろう。」と指摘したうえで、「この拡大サミットには、国連や核兵器を保有する非G8諸国、5つの非核兵器地帯(南極条約、ラテンアメリカ非核兵器地帯[トラテロルコ条約]、南太平洋非核兵器地帯[ラロトンガ条約]、東南アジア非核兵器地帯[バンコク条約]、アフリカ非核兵器地帯[ペリンダバ条約])、それに、核廃絶に向けて主導的役割を果たしてきた他の諸国からの参加を含めるべきだ。」と提案している。

1月21日にジュネーブ軍縮会議(CD)の2014年会期の開始にあたって演説した国連の潘基文事務総長は、長らく膠着状態が続いているCDの現状に言及し「会議全体に広がってきている悲観論は打破されなければなりません。さもなくば、CDは時流に取り残されることになってしまうでしょう。」と述べ、国際社会の期待に応え、実質的な活動を再開するよう訴えた。

潘事務総長は、事態打開のための方策として、CDが引き続き軍縮交渉再開に向けた道筋を模索し続ける一方で、(有識者パネルや国連総会アドホック委員会の創設など)新たにCD枠外における議論を通じて条約の枠組みと提案を深めていくことも重要だとの持論を披露した。潘事務総長は「将来の交渉に向けたこうした基礎作業を行うことは、CDの意義を改めて示す具体的な第一歩となるでしょう。」と指摘したうえで、「この春に2015年NPT運用検討会議第3回準備委員会が開催されるまでに、CDにおいて大きな進展が見られることを願っています。」と付け加えた。

Ban Ki-moon/ UN Photo
Ban Ki-moon/ UN Photo

第3回準備委員会がきわめて重要な意義を持っていることは、中東非核兵器地帯創設に関する1995年の決議履行に「運用検討会議が一貫して失敗している」ことに抗議して、エジプトが2013年4月の第2回準備会合から途中退出したという事実からも明らかである。エジプト外務省は、2012年中に行われる予定だった「中東非核兵器地帯創設に関する会議」が延期されたのは、2010年NPT運用検討会議の決定に対する違反だと強調するとともに、これによって「NPT体制の信頼性に影響が出てくるかもしれない」と述べている。

中東会議はもともと2012年に開催される予定だったが、中東の全ての国家(とりわけイスラエル)からの会議出席の回答が得られないとして、会議を主催する四者(国連、米、露、英)が延期を決めた。

エジプト外務省は声明で、「NPT加盟国の一部、さらには一部の非加盟国」が会議の開催を妨げていると非難した。また声明は、「エジプトは、1974年に国連で構想を発表して以来、非核兵器地帯の設立に向けて努力してきた。」と指摘したうえで、NPT加盟国、国連、国際原子力機関(IAEA)、国際社会に対して、決議履行に関して責任を果たすよう求めている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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