【ナイロビIPS=ステファニー・ニーウッド】
6月初め、リビアがケニアに優遇価格で石油を供給することで両国指導者は合意、覚書に調印した。
石油業界関係者によると、この合意によりケニアは4,500万米ドル相当の石油施設の建設、ならびに2,200万米ドル相当のトラック・鉄道の積み替え輸送プロジェクトの契約をリビア筋の投資家と締結することになるという。
両プロジェクトについては、海外投資家の入札が行われる予定だが、ケニア・リビア両国はすでにプロジェクトの実行に向け話し合いに入った模様である。
リビアは、ケニアの陳腐化した石油精製施設の改修にも関心を示している。改修費用は3億2,200万米ドルに上ると見られている。
両国の合意覚書によると、リビアはケニアの石油精製業が営業を継続するのに必要な160万tの原油の60%を供給する予定。ケニア全体で必要な原油、精製油は280万tに上る。
「どのようなものであれ、安価な石油は歓迎する」とケニア国営石油会社のアスマニ(Sumayya Hassan Athmani)総務部長はIPSの取材に応じて語った。「ケニア経済は発展途上にあり、発展には石油が必要。発展に応じて、石油需要も拡大しており、全輸入額の4分の1、国内総生産(GDP)の11%を石油購入に費やしている。石油価格が下がれば、多額の資金を他に回すことができる」
政府が石油の割引価格を公表していないので、ケニアにどの程度の節約がもたらされるか不明である。今のところ節約した資金が消費者に還元される兆候はない。
アスマニ氏は既存の石油精製所の改善に戦略的投資家が必要と主張。リビアのムアンマル・カダフィ指導者がその役を務めることになるかもしれない。
独立シンクタンク域内経済ネットワーク(Inter Region Economic Network: IREN)のシクワティ(James Shikwati)氏はIPSの取材に応じ、カダフィ指導者は今回の合意でサハラ以南へのコミットメントを示したと指摘。「リビアがケニアに参入すれば、市場に競争がもたらされる。有利な価格で、よりよいサービスが受けられるかもしれない。西側の石油企業は長い間石油価格を操作してきた。競争は良いことだ」と言う。
アメリカの投資会社コロニー・キャピタルは最近、リビア国営石油会社タモイルの過半数の株式を取得している。この1週間前には、大手石油多国籍企業ブリティッシュ・ペトロリアム(BP)がリビアと探査事業契約を締結している。シェル、エクソン・モービルなどの多国籍企業もリビアに戻った。
今年4月にアメリカが対リビア経済制裁措置を解除して以来、リビアはあらゆる機会を捉えて西側の投資を導入している。これはリビアの核兵器開発プログラム放棄宣言に対する『見返り』と見られている。(国連は経済制裁を昨年解除している)
アメリカなどがリビアを国際テロリストグループの支援国と指定した1986年以来、経済制裁は続いていた。リビアはパレスチナと紛争中のイスラエルに対する西側の支援に抗議、数十年にわたって石油の禁輸措置で政治的に対抗した。
リビアの外資導入は、政府の民営化計画に則ったもの。タモイルは事業をウガンダに拡大し、ケニア・ウガンダ間の石油パイプラインの建設、運用事業を落札した。
ケニア北東部のエルドレトからウガンダの首都カンパラを結ぶ全長320kmに及ぶパイプラインが完成すれば、ガソリン、ディーゼル油、灯油、ジェットA-1燃料の輸送が容易になる。
今回のケニアとリビアの合意の裏には、石油業界がケニアにおける油田発見を確信していることがある。同国ではすでに何百万ドルもの探査事業が展開中である。
「ケニアの近隣諸国、たとえばスーダンをみても、東アフリカは豊富な石油に恵まれているようだ。東アフリカに位置するケニアで油田が発見されるのは時間の問題だと信じている」とアスマニ氏は言う。
シクワティ氏はリビアのケニア参入は一見良いことのように見えるが、不安定要素はぬぐえないとし、「ケニアが利益を享受する可能性がある一方、リビアが国債石油カルテルに参加して石油価格操作に転じるかもしれない」と指摘する。
さらに、ケニア政府が節約額を消費者に還元しなければ、一般の人々は安価な石油から何も得ることはできない。
ケニアNGOの経済問題機関( Institute of Economic Affairs )でプログラム・コーディネーターを務めるオウィノ(Kwame Owino)氏はIPSの取材に対して、リビアがどのようにコストを削減するのか分からないと表明。「石油は米ドル建てで価格が決まる国際商品であり、国際市場で売買される。リビアがどのような方法で安価に石油を提供するのか不明である」と語り、「東南部アフリカ共同市場(Common Market for Eastern and Southern Africa: COMESA)に加盟する両国は、COMESAの場で議論を行った方がよいと感じている。加盟国間で多角的な合意を得ることができれば、経済的恩恵も大きくなる」と主張する。
リビアの対ケニア投資は石油部門に留まらない。今月初めケニアのキトゥイ(Mukhisa Kituyi)貿易大臣は、リビア資本によるナイロビの高級ホテル建設ならびに沿岸都市モンバサの展示場建設を発表した。
ケニアとしてはコーヒー、紅茶製品の新規市場としてリビアに期待すると同大臣は語った。(原文へ)
翻訳=IPS Japan