【トロントIPS=スティーブン・リーヒ】
北米自由貿易協定(NAFTA)の下で、カナダは自らのエネルギー資源に対するコントロールを失った。さらに、「NAFTAプラス」と呼ばれる枠組みによって、水資源まで失おうとしている。
2005年、米国・カナダ・メキシコの3ヶ国によって、「安全保障・繁栄パートナーシップ」(SPP)と呼ばれる枠組みが作られた。しばしば「NAFTAプラス」とも称される。
『水・エネルギー・北米統合』という報告書を書いたアンドリュー・ニキフォルク氏によると、SPPは政財界の重鎮から構成されており、すでに、国境警備、農薬に関する規制緩和、パイプライン規制の統合、鳥インフルエンザ対策の計画などに関連して市民の目の届かないところで活動しているという。
「カナダ水問題評議会」のラルフ・ペントランド氏は、「SPPは企業経営者に牛耳られている。政府はお添えに過ぎない」と断言する。氏によると、米国の水不足を解消するために、巨額の資金を投じてカナダの水が米国に流されることになるだろうという。
しかし、カナダの水資源は極北地域に集中しているし、米・カナダ国境間の5大湖の水量は気候変動によってこの100年間で最低レベルになっている。
問題はそれだけではない。カナダは、北部アルバータ州の針葉樹林にあるタールサンドから石油を抽出して毎日100万バレルを米国に輸出している。しかし、1バレルの石油を生産するためには3バレルの水が必要となる。米国の石油浪費によってカナダの水資源が浪費されている形だ。
この石油プロジェクトによってすでに3億5900万立方メートルの水が消費された。しかも、こうして使用された水は汚染されているために、人口湖にためておかなければならない。これだけあればカナダの200万人規模の都市の水がまかなえるのである。(原文へ)
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