ニュースアーカイブ|日中韓シンポジウム|困難な状況下でのNGOの役割を強調

|日中韓シンポジウム|困難な状況下でのNGOの役割を強調

【ベルリン/仙台IDN=ジャムシェッド・バルーア】

イデオロギーの障壁を打ち破り、歴史にまつわる敵対意識を乗り越えて、日本・中国・韓国の市民社会組織の代表が第3回国連防災世界会議(WCDRR)の期間中に開催された画期的な日中韓シンポジウム「北東アジアの連帯によるレジリエンスの強化」に参加した。

福島第一原発事故を引き起こした2011年の東日本大震災の被害を受けた東北地方の中核都市である宮城県仙台市で3月14日から18日まで開催されたWCDRRでは、生命を奪い破壊する災害のリスクを減らすための、今後15年間(2015年~30年)に亘る新たな防災対策の行動指針となる「仙台防災枠組」が合意された。

China, South Korea, Japan/ Wikimedia Commons

日中韓シンポジウムは、WCDRRの期間中に、東京に本部を置く仏教組織・創価学会インタナショナル(SGI)が主催した公式関連行事(パブリックフォーラム)の一つで、防災のために北東アジア地域において、人間同士の協力を促進するための基盤を提供することを目的とするものだった。2005年から14年にかけて世界全体で災害がもたらした経済的損失は1兆4000億ドルにのぼる。

会議参加者らによれば、3月16日に開催された同シンポジウムは、地域の壁を越えるモデルとして機能しうる日中韓協力に向けた力強い動きを生み出す契機となった。

シンポジウムの冒頭で挨拶した「日中韓三国協力事務局」(TCS、ソウル)の陳峰事務次長は、シンポジウムの趣旨を「この三国は、様々なタイプの自然災害によって特に大きな被害を受けてきました。地域の近隣国として、日本、中国、韓国は、『恐るべき災害』のリスクを減らすために協力していくべきです。」と説明し、TCSがそのために努力していくことを確認した。

北東アジアの三国間での協力の必要性については、中国からパネリストとして参加した「中国国際民間組織合作促進会」(CANGO)の副理事長兼事務局長の黄浩明氏も強調した。1992年に設立されたCANGOは、中国国内で活動する非営利民間組織126団体の連合体で、国連経済社会理事会(ECOSOC)の特別協議資格を取得している。

Haoming Huang/ Katsuhiro Asagiri of IPS

黄浩明氏は「CANGOの任務は、とりわけ、遠隔地や貧困層や少数民族が居住する地域において、貧困削減、環境保護、社会開発の問題に対処するため、社会的権利を与えられた国内NGOの力強いネットワークを創出するところにあります。」と語った。

韓国から参加したパネリストは、韓国災害救援協会「希望の橋」の朴栄津事務総長であった。朴氏は、「この協会は、緊急支援や協力という文化が韓国にまだ存在しなかった1961年に、メディアをはじめ各方面の著名人が、特定の宗教やイデオロギーを背景とせず自発的に設立した、韓国初の緊急支援組織です。」と説明した。

半世紀にわたる緊急支援と特別活動の歴史をもつ同協会は、緊急支援活動を国内向けと海外向けに分け、災害の種類や地域、支援対象などに応じた支援を提供している。

日本から参加したパネリストの一人は、「2015防災世界会議日本CSOネットワーク」の堀内葵事務局長であった。堀内氏は、1987年に設立された非営利・無党派の研究・政策提言団体「国際協力NGOセンター」に2012年より務めている。

Panelists at the Trilateral Forum/ Katsuhiro Asagiri of IPS Japan
Panelists at the Trilateral Forum/ Katsuhiro Asagiri of IPS Japan

もう一人の日本からのパネリストは「協同組合ネクストステージ東北」の生木大祐氏であった。1973年に大阪で生まれた生木氏は、1995年の阪神・淡路大震災を神戸で経験している。2002年以来、アジア諸国からの研修生を日本企業に斡旋する、政府の政策を基盤とした事業に従事している。2006年以降は、「協同組合ネクストステージ東北」の代表理事を務めている。

東北創価学会は、東北の人々の「心の復興」を目指して東北復興パネル展「生命(いのち)のかがやき~未来を創る人々の軌跡~」を開催した。2011年の東日本大震災の悲劇を乗り越え復興に向けて努力する22人の個人に焦点を当てたものである。

Reception for the Panel exhibition, ‘The Light of Humanity’/ Katsuhiro Asagiri of IPS Japan
Reception for the Panel exhibition, ‘The Light of Humanity’/ Katsuhiro Asagiri of IPS Japan

日中韓シンポジウムの結びの挨拶に登壇したSGIの寺崎広嗣平和運動局長は、「大変充実した意見交換を行うことができましたことは、私にとっても大きな喜びであります。(日中韓)各国の市民社会の動向や特色を伺うことができ、市民社会が互いに補い合っていくことで、よりレジリエントな地域を構築していける、との感を強く致しました。」と語った。

また寺崎氏は、9月に採択される予定の「持続可能な開発目標」に関連して、池田大作SGI会長が2015年の「平和提言」の中で、中国、韓国、日本の3国が「協力して『モデル地域』づくりに取り組み、人材育成をはじめ、成功事例の発信などに力を入れる」ことを提案している点を指摘した。

「約15億人が暮らすこの三国の間では、既に人の往来や文化・経済の交流が大変盛んになっていることはいうまでもありません。その上で、防災をはじめとして、具体的な課題について協力をすることは、地域の安全と安定に資するのみならず、国際社会にとってもポジティブな意味合いを有するものです」と寺崎氏は語った。

さらに寺崎氏は、「日中韓シンポジウムで議論されたような防災の面での協力は、単に災害対応の意味で有益であるばかりでなく、より広い意味で地球社会全体に範を示していくことにも、貢献をなしうるものと実感しております。」と付け加えた。

SGIはまた、「ACTアライアンス」「宗教者災害支援連絡会」(JRPD)と共催して、「宗教理念に基づいた視点からの地域密着型防災―ベストプラクティスの共有」と題するシンポジウムを開催した。これは、昨年6月に第6回アジア防災閣僚会議(バンコク)の公式関連行事として開催したシンポジウムのフォローアップである。

「ACTアライアンス」のジョン・ンドゥナ事務総長は、「災害リスクを削減する上での信仰を基盤とした団体(FBO)の役割は、常に認識されているわけではなく、『兵庫行動枠組』のような国際枠組みの効果は、草の根レベルで人々が恩恵を受けてはじめて現実のものとなります。」と語った。

創価学会青年平和会議の浅井伸行議長は、既存の地域ネットワークを動員し、緊急事態の際に脆弱な立場にある人々を保護するFBOの能力について語った。

3月16日、シンポジウムの成果文書として、13のFBOが共同声明を発した。地域の宗教組織やFBOの独自の役割を認知し、2015年以後の防災に関する枠組みの履行において両者の関与と協働に優先順位を与えるよう、諸政府に求めた。

2日後、SGI平和運動局のプログラムディレクターである河合公明氏は、東日本大震災後の東北での創価学会の救援活動に関して、国連防災世界会議の「イグナイト・ステージ」で発表を行った。河合氏は、災害対応において既存の連絡ネットワークと地域の施設を利用できるFBOの能力に着目するとともに、こうしたFBOの強みや資質が、防災におけるその他のステークホールダー(利害関係者)の役割を補完しうると強調した。

Symposium ‘Community based DRR from a faith-based perspective/ Katsuhiro Asagiri, President of IPS Japan

FBOの重要性は、「ピュー・リサーチ・センター」も指摘している。同センターは、2012年に発表した(世界の宗教動向に関する)調査レポートの中で、「世界の人口の84%以上が何らかの宗教団体に帰属しており、数十億人の暮らしにおいて、あらゆる形態の信仰が自然かつ重要な要素を成している。」と報告している。

河合氏は、国連防災世界会議の期間中に議論されたように、西アフリカのエボラ出血熱、南スーダンや中央アフリカ共和国における紛争、東日本大震災、バヌアツのサイクロン被害、東南アジアの洪水など、世界各地の災害に対処するうえで、地域の宗教組織やFBOの付加価値を示す数多くの参照事例が存在すると指摘した。(原文へ

翻訳=INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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