【トロント/インディアナポリスIDN=J・C・スレシュ】
「1万4000人の米軍兵士を参加させた過去数十年で最大のNATO軍事演習と、米国による東欧でのミサイル防衛計画の発動が、核武装した大国間の緊張の火に油を注いでいる」と警告したのは、全米市長会議(USCM)である。7月8・9両日に北大西洋条約機構(28カ国)がポーランドの首都ワルシャワでサミットを開催する直前のことである。
インディアナポリスで6月24~27日に開催された全米市長会議第84回年次総会で採択された決議は「広島・長崎級原爆よりもはるかに強力な爆発力を持つ1万5000発以上の核兵器(その内94%を米国とロシアが保有)が、諸都市と人類に対して受け入れがたい脅威を与え続けている。」と述べている。
この点を強調するために、決議は以下のように想起している。「1945年8月の広島・長崎への原爆投下は、数万の一般住民を無差別に焼き殺し、1945年末までに、主に民間人から成る21万以上が亡くなった。生き残った被爆者やその二世・三世も、原爆の身体的、精神的、社会的な影響によって苦しみ続けている。」
全米市長会議は、「次の米国大統領は、1970年の核不拡散条約で義務づけられているように、誠実に、核兵器廃絶のための多国間交渉に参加するか、あるいは交渉を開始すべき」であると訴えた。
今年5月、原爆投下から71年を経てバラク・オバマ大統領が広島を訪問したことを歓迎しつつも、全米市長会議は、「米国が今後30年で1兆ドルを[核兵器の近代化措置のために]支出する基礎を築いた」としてオバマ政権を批判した。
米国の人口3万以上の都市から成る超党派的な組織である全米市長会議は、「オバマ政権下では、ポスト冷戦期のどの米政権よりも、核兵器の削減数が少なかった」だけではなく、「核爆弾・弾頭、生産施設、(潜水艦・地上発射ミサイル・爆撃機から成る核兵器の)運搬システム、指揮・管制系統を維持し近代化するために」1兆ドルもの支出を決めた、と述べた。
しかもそのことが、「手ごろな価格の住宅を建築し、生活可能な賃金を伴った雇用を創出し、公共交通を改善し、持続可能なエネルギー源を作り出すために、地域社会で連邦予算が切実に求められている時」に起こっているのである。
全米市長会議は、次の大統領と連邦議会議員に対して、不活性化と解体を待つ間の既存の核兵器の安全性と保安を確保するために必要な最低限のレベルにまで核兵器関連予算を縮小し、浮いた予算を、都市の緊急の必要性に応え、わが国の崩壊しつつあるインフラを再構築するために利用するよう求めている。
全米市長会議は11年連続で、「平和首長会議」を支持する強力な決議を採択している。この決議の中で全米市長会議は、「核武装国は、世界中の紛争地帯で直接的な軍事的対立にますます近づいている」と警告し、次の大統領に対して、「ロシア・中国との緊張を緩和し、米ロの核備蓄を大胆に削減するためのあらたな外交方策を追求する」よう求めている。
全米市長会議はまた、「核兵器システムの生産に関わるすべての企業と、そうした企業に投資する主体にケンブリッジ市の10億ドルの年金基金を投資しないと今年4月2日に全会一致で決定した、同市のデナイズ・サイモンズ市長と同市議会の大胆なリーダーシップを歓迎する」と述べた。
1982年に創設され、広島・長崎両市長が主導している国際組織である「平和首長会議」は、「2020ビジョンキャンペーン」を通じて、2020年までに核兵器の世界的廃絶を目指している。
平和首長会議の加盟都市数は2003年以降で10倍以上になり、2016年6月1日時点で、米207都市を含む7063都市となった。世界161カ国、全人口の7分の1にあたる約10億人をカバーしている。6月22日、デズモインズ市のフランク・コウニー市長が、平和首長会議米国支部の支部長都市となることに正式に合意した。
全米市長会議国際関係常任委員会で6月25日に演説した平和首長会議の小溝泰義事務総長は、「私たちの共通課題の一つは、今なお多くの国々が、各国の安全保障政策において核抑止に大きく依存しているという状況です。核抑止は、相互不信を前提に、大量無差別大虐殺の脅しで平和を維持しようとするものです。」と説明した。
小溝事務総長はさらに、「このような制度に持続可能性はありません。そもそも、21世紀の安全保障の課題を考える時、核兵器によって解決できる問題は何一つありません。さらには、都市の繁栄などの経済発展に充てられるべき財源や技術的資源が核兵器に費やされています。」と語った。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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