【国連IPS=オリトロ・カリム】
ドナルド・トランプ米大統領が、国際機関66組織(うち国連関連31機関)への米国支援停止を命じる大統領令に署名したことを受け、関係機関や国際社会、人道・気候分野の専門家から反発が広がっている。世界的協力や持続可能な開発、国際平和と安全保障への悪影響が懸念されている。
この大統領令は、米国がこれまでに世界保健機関(WHO)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)、国連人権理事会(UNHRC)、国連教育科学文化機関(UNESCO)から離脱してきた流れを引き継ぐものだ。米国は最近、対外援助関連機関への資金も削減している。
対象となった国際機関・団体の多くは、気候変動、労働、平和維持活動(PKO)、移民、市民社会の活動空間(civic space)などに関わる。米国務省は声明で、見直しの結果、これらの組織は「無駄が多く、非効率で、有害」だとした。
また同省は、対象組織を、米国の納税者資金で支えられる「進歩的イデオロギー」の媒体であり、米国の国益と整合しないと位置づけた。

マルコ・ルビオ国務長官は「これらの機関は任務が重複し、運営も不全で、不要かつ浪費的だ。さらに、管理が不十分で、私たちと相反する議題を進める主体の影響下に置かれている場合もある。わが国の主権、自由、繁栄への脅威となり得る」と述べた。
その上で「成果がほとんど見えないまま、米国民の税金をこうした機関に注ぎ続けることは容認できない。自国民の負担を犠牲にして、外国の利益へ資金が流れ込む時代は終わった。」と強調した。
大統領令は、連邦政府のすべての省庁・機関に対し、離脱の実施に直ちに着手するよう指示している。影響を受ける国連機関については、米国の参加を終了し、拠出を停止することになる。ルビオ国務長官は、追加の国際機関についても見直し作業が継続中だと明らかにした。
人道支援の専門家や、影響を受ける多くの組織の報道官は、この措置に警戒と非難の声を上げている。気候行動、人権、平和構築、多国間ガバナンス、世界的な危機対応体制に深刻な影響を及ぼすとし、国際的不安定が増す局面での打撃を問題視している。
「きょう私たちは、世界的な協力から取引的な関係へと完全に転じていくのを目の当たりにしている。」と、NRDC(天然資源保護協議会)のヤミデ・ダグネット国際担当上級副代表は語った。
「共有された原則や法の支配、連帯よりも、取引主義が優先されつつあり、さらなる世界的不安定を招きかねない。地球規模の主要な環境・経済・保健・安全保障上の脅威に向き合うことを避ければ、米国は多くを失う。将来産業における信認と競争力を損ない、雇用創出や技術革新の機会を取り逃がし、科学技術の主導権を他国に明け渡すことになる。」
グネットは、各国指導者に多国間主義への関与を改めて求めた。「世界は米国より大きい。そして、私たちの問題の解決策も、米国だけでは完結しない。いま必要なのは、国だけでなく州や都市を含む国際的な協力であり、その重要性はかつてなく高い。世界の指導者が多国間の協働に断固として取り組まなければ、これらの地球規模の脅威を乗り越え、すべての人にとって安全で持続可能な未来を確保することはできない」と語った。
一方で、米国が国際的義務の履行を取捨選択し、トランプ大統領の優先事項に合致する事業や機関のみを支援する姿勢にも批判が集まっている。
「いま起きているのは、米国の多国間主義への姿勢が『こちらの言い分をのむか、さもなくば去れ』という形で、より鮮明に表れていることだ。ワシントンの条件でのみ国際協力を求めるという、きわめて明確な構図である。」と、国際危機グループのダニエル・フォーティ国連担当責任者は語った。
生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)は、米国がIPBESからの参加撤回を意図していることについて、「極めて失望させられる知らせ」だとして遺憾の意を表明した。今回の大統領令では、IPBESを含む60を超える国際機関・団体が離脱の対象とされている。
IPBES議長のデービッド・オブラ博士は、米国は創設メンバーであり、「2012年の設立以来、米国の科学者や政策担当者、先住民や地域コミュニティを含む利害関係者は、IPBESの活動に最も積極的に関与してきた貢献者の一部で、科学に基づく客観的な評価に重要な貢献をしてきた」と述べた。

さらにオブラは、IPBESの成果が、米国内のあらゆるレベルと領域の意思決定者に広く活用され、政策や規制、投資、将来の研究をより的確に方向づける一助となってきたとも指摘した。
オブラは米国の貢献に謝意を示しつつ、離脱はIPBESと地球に重大な影響を及ぼすと述べた。「残念ながら、100万種を超える動植物が絶滅の危機にあるという現実から、私たちは目を背けることはできない。環境影響によって世界経済が年に最大25兆ドルを失っているという事実も変えられない。いま行動しないことで、2030年までに10兆ドル超のビジネス機会と3億9500万人の雇用を生み出し得たはずの機会を失う。その損失は取り戻せない。」

歴史的に米国は国連最大の資金拠出国であり、国連の通常予算の約22%、PKO予算全体の約28%を拠出してきた。
米国が国連関連31機関への支援を引き揚げれば、大幅な予算不足に加え、人道支援要員の削減や、米国人職員が担ってきた重要な技術的専門性の喪失が見込まれる。こうした影響は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた進捗を鈍らせ、長期化する危機下の人々への食料支援や医療サービスを縮小させる恐れがある。さらに、権威主義的な政府が人道的監視や介入への抵抗を強めることにもつながりかねない。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の国連担当ディレクター、ルイ・シャルボノーは、「数十の国連計画・機関を含む国際機関から手を引くという米国の決定は、人権保護と国際的な法の支配に対するトランプ大統領の最新の攻撃にほかならない」と語った。
さらに「人権理事会からの離脱であれ、世界中の数百万人の女性と少女を支援する国連人口基金(UNFPA)への資金停止であれ、この政権は、米国が過去80年にわたり築いてきた人権制度そのものを破壊しようとしてきた。国連加盟国は、人権を守るための手段を解体しようとする米国の動きに抗し、重要な国連事業が必要な資金と政治的支えを確保できるようにすべきだ。」と訴えた。

国連本部での記者会見で、国連事務総長報道官のステファン・デュジャリックは、米国の離脱に対する国連の立場を説明し、米国の参加の有無にかかわらず、困窮する人々への支援を継続すると強調した。
「私たちが一貫して強調してきたように、総会が承認した国連の通常予算およびPKO予算への分担金は、国連憲章に基づくすべての加盟国の法的義務であり、米国も例外ではない。すべての国連機関は、加盟国から付与されたマンデートの実施を継続する。国連には、支援を必要とする人々のために責務を果たす責任がある。私たちは、引き続き断固として任務を遂行する。」と、デュジャリック報道官は語った。(原文へ)
INPS Japan/ IPS UN Bureau Report
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