【ワシントンIPS=マリナ・リトヴィンスキ】
米外交問題評議会(CFR)は、ウクライナの国内情勢および同国と欧州のロシア天然ガス依存といった外交政策を分析する報告書を発表した。「ウクライナの危機回避」と題された同報告書は、米国はより大きな危機を回避するためウクライナとの対話を強化する必要があると結論している。
同報告書の作者であるスティーブン・パイファー元駐ウクライナ大使は、「ウクライナの更なる分裂は、米国の包括外交政策実施の障害となる。また、ウクライナがよりモスクワ寄りの方向を辿る可能性もある」と述べている。
ウクライナは、2009年後半あるいは2010年初めに大統領選を控えており、今年中には不況、金融危機を争点とする議会選挙も行われるだろう。ブルームバーグ通信によれば、ウクライナのインフレ率は欧州最高の22・3パーセントに達し、対ドル通貨は過去6か月間で50パーセントを切っている。
ビクトル・ユシェンコ大統領とユリア・ティモシェンコ首相は激しく対立しており、経済復興に必要な決定ができずにいる。ローン返済の失敗から、IMFは164億ドルローンの第2次貸出を保留した。
IMFの圧力だけではない。2008年8月のロシア/グルジア紛争以来、ウクライナはロシアの強硬外交に対処しなければならなくなっている。ロシア政府は、ウクライナのEUおよびNATO加盟に不快感を表明。反対の主張を強めることで、ウクライナ内の摩擦を煽ろうとしている。
CFR報告は、1月に起こった様なロシア/ウクライナ天然ガス問題が再び発生し、欧州のエネルギー危機に発展するのではないかと予測している。ウクライナ政府のNATO加盟努力に反対し、ロシアがガス供給の停止やその他の報復、国境地帯への部隊配備を行うかもしれないというのだ。
これに対し、米ウクライナ関係研究所のウォルター・ザリッキー所長は、「ロシア自体も経済危機の中にあり、グルジア戦争にも巨額を投じた。更には20億ドル強の融資を見返りにキルギスから米空軍基地閉鎖の合意を取りつけたところでもあり、ロシアがウクライナのNATO加盟を阻止することはできないだろう。従って、西側としてはロシアに対し強い態度で臨める良い機会である」と語っている。
CFR報告は、米政府は1990年代初めからウクライナを重視し開発に数10億ドルの支援を行ってきたが、オバマ政権では優先順位が落ちていると指摘。新政権に対し定期的な高級レベル協議、ウクライナ・リーダーへの助言、技術支援強化といった戦略を打ち立てるよう求めている。
CFRのウクライナ情勢分析レポートについて報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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