Multimedia「それはどこでも起こりうる」: 国連総会、ルワンダのツチ族に対するジェノサイドを振り返る

「それはどこでも起こりうる」: 国連総会、ルワンダのツチ族に対するジェノサイドを振り返る

【国連ニュース/INPSJ】

国連総会は、「1994年のルワンダにおけるジェノサイドを考える国際デー(4月7日)」の記念行事を開催した。式典では、ルワンダ大虐殺当時、国際連合ルワンダ支援団が展開していたにもかかわらず、100日間に亘った恐怖の中で犠牲となった100万人以上の老若男女を追悼した。

国連総会は1948年に集団殺害を国際法上の犯罪と規定するジェノサイド条約を全会一致で採択していたが、1994年4月、ルワンダで長年に亘る部族間の緊張と対立が最悪の形で現実のものとなった。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、ヘイトスピーチは警鐘であり、それによる社会への影響が強まれば、ジェノサイドが発生する脅威も大きくなると警告した。

「私たちは生存者のレジリエンス(強靭さ)に敬意を表すと共に、ルワンダの人々が癒し、回復、和解に向けて歩んできたことを認めます。そして、国際社会が恥ずべくも、(ルワンダ大虐殺当時)耳を傾けず行動しなかったことを想起します。」

「殺害はかなり前から計画され、意図的かつ組織的に実行されたものであり、白昼堂々と行われた計画的な殺人でした。」

グテーレス事務総長はまた、ジェノサイドから1世代(約20年)が経過した今、「あらゆる社会における礼節の脆弱性がもたらす危険性を決して忘れてはなりません。それは暴力促進します。ルワンダでジェノサイドへの道を開いた憎悪とプロパガンダは、テレビで放送され、新聞に印刷され、ラジオで吹聴されました。そして今日、憎しみを煽る声はさらに大きくなっています。インターネット上では、暴力への扇動、悪質な嘘や陰謀、虐殺の否定や歪曲、『他者』の悪魔化が、ほとんどチェックされることなく拡散しています。」と指摘した。

また、「デジタル世界において、より強固な規制、明確な責任、そしてより大きな透明性を求める中、『ヘイトスピーチに関する国連戦略と行動計画』が始動したことにより、表現や意見の自由を尊重しつつ、この惨劇に対抗するための各国への支援の枠組みを提供しています。」と説明した。

そして、「まだジェノサイド条約の締約国となっていない国連加盟国に対し、条約に加入するよう呼びかけるとともに、すべての国に対し、その約束を行動で示すよう求めます。一緒に、高まる不寛容に断固として立ち向かいましょう。尊厳、安全、正義、そしてすべての人のための人権の未来を築くことによって、亡くなったすべてのルワンダ人に真の追悼の意を捧げましょう。」と語った。

ルワンダ虐殺は「偶然ではない」

UN Photo/Manuel Elías
UN Photo/Manuel Elías

チャバ・コロシ国連総会議長は、「ジェノサイドは偶然ではなく、人種差別的イデオロギーを煽り、特定の人口の組織的破壊を目的としたキャンペーンを長年にわたって行ってきたことに起因している。」と語った。それが実行されたとき、世界は沈黙していた。

「ジェノサイドの準備が進んでいるということについては初期の段階で紛れもない警告が繰り返しあったにもかかわらず、当時国際社会は沈黙していました。この良心にもとる不作為に対して、私たちは『二度と繰り返さない』と言わなければなりません。」

「ルワンダの人々は、強さと決意をもって、荒廃した灰の中から国を再建してきました。今日、これらの努力の成果は、下院における男女平等、イノベーションの活気、経済の回復力、医療システムの強さ等至る所で見られます。」と指摘した。

「重要なことは、ルワンダは、若者に投資し、ダイナミックな人口の半分を占める20歳未満の人々に機会を与えていることです。ルワンダの人々は、より良い未来を見据えた国家を築いてきました。私たち国連総会もそうでありたいと思います。」

「家族全員を殺された」

Photographs of Genocide Victims - Genocide Memorial Centre - Kigali – Rwanda/ By Adam Jones, Ph.D. - Own work, CC BY-SA 3.0
Photographs of Genocide Victims – Genocide Memorial Centre – Kigali – Rwanda/ By Adam Jones, Ph.D. – Own work, CC BY-SA 3.0

国連総会は、ジェノサイドの生存者からも話を聞き、悲惨な体験談を共有した。

イベントに先立ち、現在米国在住の生存者であるヘンリエット・ムテグワラバさん(50)は、国連ニュースの取材に対して、どのように虐殺を生き延び、その傷を克服したか、また、今日のヘイトスピーチがいかにルワンダでの大量虐殺の呪われた響きほうふつさせるかについて語った。

「この話をするたびに涙が出ます。彼らは女性を強姦し、妊婦の子宮をナイフで切り開きました。人々は生きたまま浄化槽に入れられ動物は屠殺されました。私たちの家も破壊され私の家族全員、母と4人の兄弟が殺されました。」

1994年のツチ族に対する大虐殺では、「世界中が見て見ぬふりをした」と彼女は言う。「犠牲者らは知っていました。誰も助けに来ないことを。実際に誰も私たちのところに来てくれませんでした。このようなことが、二度とこの世界の誰にも起こらないことを、そして国連が迅速に対応する方法を考えてくれることを願っています。」

「ジェノサイドはどこででも起こりうる」

「1994年にルワンダで起こったことは誰にでも起こり得ることです。今日米国では多くのプロパガンダが蔓延しているが、人々は注意を払わず、社会が分裂している。」と強調した。

ムテグワラバさんは、著書『By Any Means Necessary』の中で、この現在の問題について詳しく述べている。実際、彼女は2021年1月6日の米国国会議事堂襲撃事件が起きた際、1994年4月と同じ恐怖を感じたという。

「ジェノサイドはどこでも起こる可能性があります。私たちはその兆候を目の当たりにしているのに、あたかも自分や周りの世界には関係ないことと装っているのです。私のメッセージはこうです:みなさん、目を覚ましてください。何かが起きているのです。すべてはプロパガンダに関することです。」 (原文へ

INPS Japan/国連ニュース

関連記事:

〈特別インタビュー〉 アフリカ・ルワンダ共和国 アーネスト・ルワムキョ駐日大使

|人権|「デジタル技術とソーシャルメディアが、かつてないほどヘイトスピーチを助長している」と国連の専門家が警告(アイリーン・カーン表現の自由に関する国連特別報告者インタビュー)

攻撃を受ける「法の支配」

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

「G7広島サミットにおける安全保障と持続可能性の推進」国際会議

パートナー

client-image
client-image
IDN Logo
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
Kazinform

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken