SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)安全保障理事会は、子どもに対する国際犯罪への説明責任をどのように果たせるか

安全保障理事会は、子どもに対する国際犯罪への説明責任をどのように果たせるか

【フロリダIPS=ジャニーン・モーナ】

「私の人生は台無しにされました。」と、最近までシリア北東部の武装組織「イスラム国」(IS)支配下で暮らしていたアンワルは、記者にトラウマ的な体験について証言した。

アンワル(仮名)が14歳か15歳だった2018年頃、ISのメンバーである彼の父親は、ISの軍事訓練を強要した。また、ISの規則に違反した人々を残忍に罰する光景を強制的に見せたりもした。

苦しみは耐え難いものだった。アンワルは何度も父親やISの支配地域から逃げようとした。「みんなが憎かった。」とアンワルは回想する。

Recommendations for the Secretary-General’s 2023 Annual Report on Children and Armed Conflict
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2011年、ISの活動が再びイラクで活発化し始めると、国連はいち早く、武装集団が子どもたちに対して犯した侵害行為を文書化した。その年、国連事務総長は、「子どもと武力紛争」に関する年次報告書にISを掲載した。国連は、将来における人権侵害の発生を防止する取り組みの一環として、この報告書に記載された当該団体と行動計画について交渉することを求められている。

年次報告書は多くの文脈で行動を促す強力なツールだが、ISのように国連との対話に応じそうにない加害団体にはほとんど影響を与えていない。

過去11年間、年次報告書に掲載された数多くの加害団体は、「永続的な加害団体(Persistent Perpetrators)」に分類することが可能だ。つまり、5年以上連続して報告書に掲載され、子どもたちに対する侵害行為について報告に応じなかった武装グループや勢力である。ISは過去13年間、連続して報告書に掲載されている。

国連安保理はこれまでも、こうした加害団体や集団による人権侵害に対処することの重要性を強調する決議を採択し、2021年に公開討論会を開催するなど、永続的な加害団体の問題に焦点を当ててきた。また、手に負えない加害団体に対する制裁を推進する努力も行ってきた。

A young refugee boy, pictured in a temporary displacement camp in Kalak, Iraq, in June 2014. Credit: Amnesty International
A young refugee boy, pictured in a temporary displacement camp in Kalak, Iraq, in June 2014. Credit: Amnesty International

こうした取り組みにもかかわらず、国連安全保障理事会とその下部組織である「子どもと武力紛争に関する安保理作業部会(WG)」は、有意義な説明責任を支援するために、さらにもっと多くのことができるはずだ。

子どもに対する犯罪の国内起訴

作業部会は、子どもと武力紛争に関する国連安保理のアジェンダを遂行する主要な機関として、国連とその援助国に対し、子どもに対する重大な人権侵害を犯罪とする国内法の整備と実施を支援するよう要請を強化すべきである。また、国際的な公正裁判の基準に沿って、説明責任を追求するために、各国の刑事司法制度を支援すべきである。

今日、イラクやシリアのIS、ナイジェリアのボコ・ハラムなど、非国家主体による重大な人権侵害に関わった加害者を訴追する事例の多くは、当該国の反テロ法廷で行われているが、多くの場合、子どもに対する犯罪はおろか、国際法上の犯罪すら裁けていない。

作業部会は、国際犯罪を裁くことのできる国内裁判所で、こうした集団の構成員を裁くよう奨励しなければならない。起訴は、犯罪が行われた国や、関連する場合には、普遍的管轄権(ジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪など、深刻な国際犯罪の容疑者を逮捕した国が、発生場所や容疑者の国籍にかかわらず訴追できる権利)を行使する国でも行うことができる。

子どもに対する犯罪に関する裁判が反テロ法廷で行われる場合、関係当局は検察官と裁判官が国際法を活用できるようにし、訴追のために十分な資源を提供し、被告人が公正な裁判を受ける権利を十分に行使できるようにしなければならない。

武装集団や武装勢力に加担した子どもたちが関与する場合、国家は、国際基準に従って、加担中の罪に問われた子どもたちを、加害者としてだけでなく、主として国際法違反の被害者として扱うべきである。子どもたちは、武装集団や勢力に所属しているというだけで、決して訴追されるべきではない。

国際刑事裁判所やその他の国際的メカニズムへの協力

The International Criminal Court (ICC) in The Hague, Netherlands
The International Criminal Court (ICC) in The Hague, Netherlands

国内の法制度が、子どもに対する犯罪の訴追を追求できない、あるいは追求する意志がない状況においては、作業部会は、国際刑事裁判所(ICC)や、説明責任を果たすためにシリア国際公平独立メカニズム(IIIM)やミャンマーに関する独立調査メカニズムのような他の国際司法メカニズムと協力する機会を探るべきである。

この種の協力は、作業部会が子どもたちに対する重大な侵害に対応するために取り得る行動リストを最初に採択した際に想定されていたものである。国際司法メカニズム間の効果的な協力は、包括的な正義を実現するために不可欠である。

作業部会とICCとの関わりは、これまで限定的なものであったが、今こそ両機関間のつながりをさらに発展させる時である。ICC検事局は、「関連する主体との協力を強化する」機会を歓迎しており、今年初めには、「有意義な変化に影響を与えるために……(中略)新たなアプローチを基礎とする」子どもに関する方針を刷新するための公開協議を開始した。

過去に、一部の作業部会メンバーは、締約国がICCの管轄内で戦争犯罪やその他の犯罪を犯した可能性が高い場合、それを示すことを検討した。また、ICCと結論を共有し、ICCの検察官が作業部会とブリーフィングを共有する可能性も検討した。

10年前、作業部会の一部のメンバーは、国連安全保障理事会の付託がない場合、武装集団や勢力が子どもに対する重大な侵害を犯した状況をICCに付託するよう、ローマ規程の締約国に呼びかけることも検討した。残念ながら、当時ICCについては理事国間で意見の隔たりが大きく、こうした勧告の採択は制限されていた。

子供たちは保護されなければならない

7月5日、国連安保理は、「子どもと武力紛争」に関する年次公開討論会を開催する。この機会は、すべての国連加盟国に対し、子どもに対する権利侵害に対する説明責任を拡大・強化する努力を公に約束する機会を提供するものである。

その第一歩として、加盟国は国連事務総長に対し、2017年に中止された、子どもと武力紛争に関する年次報告書において「永続的な加害団体(Persistent Perpetrators)」を再び特定するよう求めるべきである。

国連安保理事会には、子どもに対する犯罪の加害者である世界有数の悪質な犯罪集団に対して、より積極的な行動を起こす権限がある。アンワルのような子どもたちが、正義と説明責任が果たされるまで、これほど長い間待たなければならない現状は容認できない。(原文へ

*ジャニーン・モーナはアムネスティ・インターナショナル危機対応プログラム、テーマ(子ども)研究員。

INPS Japan/ IPS UN Bureau

「子どもと武力紛争」に関する年次報告書2023:国連はこの報告書のウクライナ紛争に言及したセクションにおいて、「ロシア軍と親ロシア派武装勢力の爆弾などの攻撃によって136人の子どもが死亡、518人がけがをした」と認定した。また、「施設の周囲などに人を配置し、敵の攻撃を避けるいわゆる『人間の盾』として、ロシア軍などによって90人の子どもが使われた」と指摘。こうした行為の結果、ロシアを安保理の常任理事国としては初めて、子どもの人権を侵害した国の1つに指定した。

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