SDGsGoal7(エネルギーを皆にそしてクリーンに)国連、インドの原子力供給国グループ入り支持を否定

国連、インドの原子力供給国グループ入り支持を否定

【ニューヨークIDN=シャンタ・ロイ】

核兵器を保有するインド、パキスタン、イスラエルの3カ国は、核不拡散条約(NPT)の「核兵器国」として認知されていない。この核兵器国という「特権」は米国・英国・ロシア・フランス・中国だけに与えられているものであるが、この5カ国は同時に「原子力供給国グループ」(NSG)の加盟国でもある。

しかし、『エコノミック・タイムズ誌』(ニューデリー)は、「待ち望まれたインドのNSG加盟をアントニオ・グテーレスが支持」と題する記事で、「インドは民生用核事業に対して国連という大きな支援を得た。アントニオ・グテーレス事務総長が、ナレンドラ・モディ首相との会談でインドのNSG加盟支持を表明したのである。」と報じた。

国連のファルハン・ハク副報道官に、事務総長による支持の有無について尋ねると、「事実ではありません。その議題は会合で上がっていません。」と回答した。

しかし、インドのNSG加盟に関する報道は、核専門家の間に懸念を引き起こしている。

Jayantha Dhanapala
Jayantha Dhanapala

元スリランカ大使で元国連事務次官(軍縮担当)のジャヤンタ・ダナパラ氏はIDNの取材に対して、「インドは事実上の核保有国ではあるが、法律上の核兵器国ではない。」と語った。米国や英国、ロシア、フランス、中国のようなNPT加盟国の目からすれば、インドは「核兵器国」ではないのである。

「したがって、インドには、NPTの認める核兵器国が享受する権利が与えられない。仮に原子力供給国グループに入るなら、それは正当化されることになる。」とダナパラ氏は語った。

NPTは5つの「核兵器国」を認知しているだけである。イスラエルは核保有の事実そのものを認めていない。

「もちろん、NPTは署名当時の現状を反映したものだ。インドはこれに不満を持ち、『大国クラブ』に属するために核兵器国としての認知を得ようと多大なる努力をしてきた」とダナパラ氏は語った。

ブリティッシュ・コロンビア大学リュー国際問題研究所長で、軍縮・グローバル・人間の安全保障プログラムの代表を務めるM・V・ラマナ博士は、「インドのNSG加盟問題が国連事務総長との会談で話題に上がったといくらインドの首相が主張したとしても、2つの点が強調されねばならない。」と語った。

第一に、事務総長がこの問題で対処できることはない、という事実である。NSGは、核燃料・技術の貿易を規制する一種のカルテルであり、全会一致方式で運営されている。したがって、48の加盟国すべてが決定に合意しなくてはならない。

現実には、そうした意見の一致が得られる可能性はほとんどない。「従って、インド首相が国連事務総長の意向について何事かを語ったとすれば、それは単にこの問題への注目を集める手段であり、インドにCO2削減を迫る圧力を逸らすものでしかない。」とラマナ博士は語った。

第二に、NSGに加盟しても、インドの原子力開発に影響はない。「NSG加盟国が2008年に合意した例外措置によって、インドは既に原子炉やウランを輸入できるようになっている。」とラマナ博士は指摘した。

「原子力がインドの発電量のごく一部である僅か3%しか占めていない理由は、原子力がきわめて高価だからだ。」「実際、輸入された原子炉は国内で設計されたものよりもはるかに高価である。従って、輸入が増えれば電気はもっと高くなる。」とラマナ博士は主張した。

軍備管理協会(ACA、米ワシントン)によれば、1975年創設のNSGは加盟48カ国から成り、非核兵器国に対する輸出管理の調整を自発的に行っている。

NSGは、民生用核物質と核関連機器・技術の移転を規制している。

加盟国は以下の通り。アルゼンチン、オーストラリア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ブラジル、ブルガリア、カナダ、中国、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、カザフスタン、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、メキシコ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ロシア、セルビア、スロバキア、スロベニア、南アフリカ、韓国、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、ウクライナ、英国、米国。

NSGは、商業用・平和目的の核輸出が核兵器に使用されることの予防を目的としている。

ACAによると、核輸出が兵器開発に使用されないようにするために、NSG加盟国は信頼醸成的な国際措置や査察に従わない国々との核貿易を禁止することが期待されている。

「戦争を超える世界」の理事長であり、「核時代平和財団」の国連NGO代表であるアリス・スレイター氏は、「インドのNSG加盟を支持することは、すでに傷ついているNPTの意義を大きく損なうものだ。」と語った。

Alice Slater
Alice Slater

1970年に成立したNPTは、当時の核兵器国(米国・ロシア・英国・フランス・中国)に核軍縮に向けた誠実な努力を行うことを義務づけている。見返りに、非核兵器国は核兵器を取得しないことを約束しているが、インドやパキスタン、イスラエルは、その後核兵器を自ら製造して、この枠からは外れている。

NPTは、加盟している非核兵器国は、核兵器を取得しないとの約束を行う見返りに、原子力の平和利用を認められると規定している。

しかし、平和目的での核技術を共有するためにはNPTに加盟していなくてはならないとスレイター氏は説明する。彼女は、「宇宙への兵器と原子力の配備に反対するグローバルネットワーク」の理事、「アボリション2000」グローバル評議会委員、「核兵器禁止US」アドバイザーのひとりでもある。

軍民両用核技術の販売を規制するというNSGの本来の目的は、いわゆる「原子力の平和利用」という形で非核兵器国が核爆弾製造へのカギを手にする「不可侵の権利」を認めたNPTの致命的な欠陥を補おうとした、ただの「ザル法」以上のものではない。

NPT非加盟国の加入容認という、NSGが認めようとしている今回の新たな例外は、既に疑問符がつけられているNPTの意義に対する重大な一撃となる。「これまでのNPTは、核軍縮を実行するという核兵器国の約束を履行することができていない。」とスレイター氏は語った。

IAEAでNSG連絡官をかつて務めたことのあるタリク・ラウフ氏はIDNの取材に対して、「第一に、インドメディアにおけるこの報道は、ニューヨークの国連本部そのものによって否定されている。このインドメディアは、記事によって事態を動かそうとしたのではないか。こうしたやり方は珍しくない。私の見方では、過去にもインドメディアは意図的に誤った報道をしたことがある。あるいは、インドのNSG加盟に対する国際的支持に関して前進をもたらそうとしたか。インド外務省の直接・間接の支援がこの記事にあったかどうかは、わからない。」と語った。

第二に、ラウフ氏の意見によると、国連や国際原子力機関(IAEA)、あるいはその他の国際機関にも、NSGやMTCR、ワッセナー協定、オーストラリア・グループのような自発的組織に、ある国が加盟することに賛成だとも反対だともいう権限や義務はない。

上記の組織はそれぞれ、核兵器、ミサイル、通常兵器、化学・生物兵器の輸出規制を自主的に行うグループだが、これらは国連憲章の統制には服していないし、国連総会によって承認されたものでもない。「NSGに関しては、NPT再検討会議の成果文書や総会で承認されたものでもない。」とラウフ氏は語った。

「IAEAは情報通知(INFCIRC/254)という形でNSGガイドラインを公にしているが、これらの文書は単に情報提供のためのものであり、IAEA加盟国からの要請によって配付され、法的な根拠はない。」とラウフ氏は語った。ラウフ氏は、2015年NPT再検討会議軍縮委員会議長の元特別アドバイザーであり、IAEA検証・安全保障政策調整局長、IAEAのNSG連絡官も務めた経験がある。

Tariq Rauf
Tariq Rauf

第三に、「参加政府」(PG)と自らを呼ぶNSG加盟国は、ブッシュ政権からの強い圧力と嫌がらせによって、自らの指針と政策に違反した。インドにNSGガイドラインからの「逸脱」を認め、核関連品目をインドと取引することを容認したのである。

インドに課された条件は、軍民の核施設を分離し、民間施設をIAEAの保証措置下に置くこと、IAEAの追加議定書を履行すること、輸出管理に関する国内法を制定することであった。

「インドはIAEAに既存及び建設中の22の民間核施設のリストを提出し、(包括的ではなく)項目ごとの保障措置下に置いた。しかし、インドが建設した、プルトニウムが製造可能なすべての重水炉(CANDU炉のコピー)や、プルトニウム再処理施設はここから外された。また、外国からの原子力協力が得られるという条件を保障措置受け入れの条件にした。そうした協力がなければ、保障措置はないということである。」

ラウフ氏はまた、「NSGがインドに与えた『免除」』は、1995年と2000年にNPTが全会一致でなした合意に反するものだ。」と指摘した。これは、NPT上の非核兵器国との原子力協力にあたっては、フルスコープの(=包括的な)保障措置を条件としなくてはならない、とするものだった。

第四に、2008年のNSGの免除によって、インドが核保有国として認知されたり正当化されたわけではない。単に核関連品目の貿易を容認したに過ぎない。しかしインドは、そうした解釈を施している。

「第五に、インド、続いてパキスタンが、NSGへの加盟を正式に申請しているが、NSGの多くの加盟国がインドはよくてもパキスタンは受け入れられないという態度を取っている。」と、ラウフ氏は指摘した。

ラウフ氏は、中国とトルコが、印パ両国を同時に加盟させるか、さもなくば両者とも認めないとして、インドに関するNSGの全会一致の合意を阻んでいる、と語った。もしインドが(先に)加盟すれば、パキスタンが加盟する全会一致の決定を阻むこともできるからだ。

NSGはこの問題に対処し続けている。NSGは、新加盟に関して「基準によるアプローチ」を追求しているが、一部の加盟国は、ある国がそうした基準を満たしていたとしても、政治的理由からその国の加盟を阻みたいと考え、同アプローチには反対している。

「NSG加盟国が、自らは包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名しながら(中国やアメリカの例にみられるように、すべてが批准しているわけではないが)、CTBT加盟をNSG加入の要件にすることに否定的なのは、きわめて残念だ」とラウフ氏は主張した。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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