ニュース|国連|核不拡散の誓約前進へ、議論交わす

|国連|核不拡散の誓約前進へ、議論交わす

【ニューヨークIDN=ジャムシェッド・バルーア】

国連は、冷戦後に重要な成果を生み出してきた軍縮・軍備管理の枠組みが崩壊することを強く懸念しており、画期的な核不拡散条約(NPT)が今後も実行可能な条約であり続けられるように、躍起になっている。

NPTの発効から50年、無期限延長から25年を目前にして、国連安保理(構成15か国。議長はドイツのハイコ・マース外相)は4月2日、国連本部でハイレベル会合を招集した。

4月の安保理議長であるドイツのクリストフ・ホイスゲン国連大使によると、国際の平和と安全の維持を任務とする安保理の加盟国は、「核不拡散体制の礎石であり、核軍縮と原子力の平和利用追求の基礎である」NPTの目標を前進させるという約束を再確認した。

安保理はまた、2020年NPT再検討会議が、NPTの歴史的な成果を記念し、さらにその目標を前進させることで、核軍縮・不拡散体制を強化するという条約へのコミットメントをNPT加盟国が「明確に再確認する」機会を与えていることに同意するとともに、「2020年NPT再検討会議が成功を収めるよう、共に協力・連携していく用意がある」ことを表明した。

しかし安保理での議論をよく見てみれば、2020年NPT再検討会議の「成功」は確実というには程遠い状況にあることがわかる。国連の中満泉事務次長(軍縮問題上級代表)は、安保理に対して、「武器の取得が軍縮の追求よりも優先されているこの時代にあって、NPTはきわめて耐久性が高いことを証明してきました。しかし、それを当たり前のように受け取ってはなりません。」と率直に語りかけた。

Izumi Nakamitsu/ UNODA
Izumi Nakamitsu/ UNODA

中満事務次官はまた、「冷戦後に構築してきた軍縮の成功は、ここにきて止まってしまいました。安全保障環境が、核兵器の有用性を謳う危険なレトリックと、安全保障ドクトリンにおける核兵器依存強化にとって換わられてしまっており、核兵器が使用される可能性は、この数十年の中で最も高いものになっています。」と警告した。

中満事務次官はさらに、「しかし、21世紀の新たな軍備管理・軍縮アプローチがどのようなものであれ、明確な点が一つあります。それは、NPTが依然として我々の集団的な安全保障メカニズムの中心に座っており、軍縮・不拡散・原子力の平和利用というNPTの三本柱を横断する『目的に即した』ものでなければならない、という点です。2020年の再検討会議は、これらの目標に向かって前進し、NPTという国際安全保障の要を今後25〜50年を通じて目標にかなうものにさせ続けるための『絶好の機会』を提供しているのです。」と語った。

ドイツのハイコ・マース外相は、それに続く議論で、「はっきりとものを言おうではないか」と前置きしたうえで、「この数十年にわたる軍縮の成功によって、私たちは自らをごまかしてはいけません。核兵器の削減は停滞しており、中距離核戦力(INF)全廃条約の失効によって、核の『再武装』の可能性が現実に生まれているのです。」と語った。

1987年のINF条約は、米国とソ連(現在のロシア連邦)に対して、射程500〜5500キロのすべての核兵器型および通常型の地上発射ミサイル(弾道及び巡航型を含む)を廃棄し永遠に製造しないことを義務付けていた。超大国が初めて、その核兵器を削減し、特定のカテゴリーの核兵器を完全に廃棄し、検証のための広範な現地査察を利用することに同意した条約であった。

国際原子力機関(IAEA)はNPTの当事者ではないが、NPTから派生する主要な検証措置の責任を委託されている。IAEAの天野之弥事務局長は、IAEAの成功を振り返って、NPT加盟国179カ国を含めた182カ国において核不拡散の保障措置が適用されていると語った。しかし、保障措置の下にある核物質と核施設は増え続けており、IAEA通常予算の削減圧力が強まっていることと相まって、大きな試練に直面している。

IAEA Director General Yukiya Amano at the IAEA Headquarters in Vienna, Austria. 28 May 2014./ By IAEA Imagebank - Danilo Türk & Yukiya Amano (01910499), CC BY-SA 2.0
IAEA Director General Yukiya Amano at the IAEA Headquarters in Vienna, Austria. 28 May 2014./ By IAEA, CC BY-SA 2.0

特にIAEAが直面している重大な問題は、イランと朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による核開発計画だ。天野事務局長は、「イランは『包括的共同行動計画』の下での義務を完全に履行し続けており、今後もそうしなければならなりません。他方で、IAEAは、北朝鮮の核開発を監視し、IAEAが利用可能なすべての検証措置関連情報を評価し続けます。IAEAは北朝鮮に査察官を戻す要請があれば、数週間以内で応えることができます。」と語った。

天野事務局長はまた、「広い意味でIAEAは、多くの部門を横断して核科学技術を利用可能とすることで、多くの人々の健康と繁栄に貢献してきました。原子力は、安定的なエネルギーの供給と地球温暖効果ガスの抑制という2つの難題に対応することを可能にします。核技術を適宜利用することで持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援することは、IAEAにとって重要な任務の一つです。」と語った。

つづく議論では、コートジボワールやドミニカ共和国といった非常任理事国が、核技術がもたらす利益について報告した。さらに、テロリストによる核兵器の取得、核分裂性物質生産禁止条約に関する協議を躓かせている軍縮機構の行き詰まり、中東非核兵器地帯創設の遅れといった問題に焦点があてられた。

一部の加盟国は、北朝鮮の核開発や、軍縮合意の停止といった問題によって悪化している安全保障環境の崩壊について触れた。

ロシアのバシリー・A・ネベンシア国連大使は、「普遍的に認められてきた規範を損なおうとする試みがなされており、すでに複雑化していた状況がより悪化しています。」と指摘したうえで、「2020年NPT再検討会議は政治的得点稼ぎのために利用されてはなりません。」と語った。

ネベンシア国連大使はまた、「ロシアは核戦力を85%以上削減してきたが、グローバルな安全保障環境に懸念を持っています。ミサイル防衛システムの配備、宇宙への兵器配備、単独の制裁を通じた他国の軍事能力抑制の試みといった米国の行いは、核兵器を削減するのに好ましい環境を作ってはいません。」と語った。

米国のアンドレア・リー・トムソン事務次官(軍備管理・国際安全保障担当)は、「2020年NPT再検討会議を人質に取るような対立を各国が避けるならば、会議で全会一致の合意を得ることは可能でしょう。」と語った。また、「核戦力を増強している国々の行動が、グローバルな安全保障環境の悪化に寄与していることを忘れるべきではありません。」と述べ、「米国は2020年NPT再検討会議で良い成果を追求することになるでしょう。」と語った。

中国の馬朝旭国連大使は、「NPT再検討プロセスは危機に瀕している。」と指摘した。また「核不拡散における単独行動主義と二重基準が存在し続けており、国際社会は、共通の未来という観念を保持し、連帯と協力を強化し、2020年再検討プロセスを統一された成果に向かって動かしていかねばならない。」と語った。そして、ロシアと米国に対して、「関連する核兵器関連協定の協議に復帰するべきだ。」と促した。また、「国際社会は、多国間主義を支持し保ち続けねばならない。」と語った。

フランスのジャン=イヴ・ル・ドリアン欧州・外務相は、「緊張状態と、エネルギーがますます世界中で必要とされている現状を考えるならば、NPTの重要性は以前よりも増している。」と語った。クウェートのアバ・カリド・アルハマド・アルサバー副首相は、この目的のために、多国間主義と国連憲章の原則が基本的なツールであり続けていると指摘した。

多くの加盟国が、核軍縮・核不拡散・原子力の平和利用の三本柱の間の戦略的なバランスを、すべての加盟国の利益を最大化する形で追求し続けることの必要性を強調した。

ポーランドのヤツェク・チャプトヴィチ外相は、三本柱の中で軍縮がもっとも成果を上げていないことに遺憾の意を示し、その点での取り組みは「せいぜいが『努力中』というにとどまってしまっている。」と付け加えた。非核兵器国の代表らは、この状況を変えるために、ある取り決めが法的拘束力のあるNPTを補完することになると語った。

インドネシアと南アフリカ共和国の代表らは、国連総会で2017年7月に採択された核兵器禁止条約の発効促進に向けて熱心に呼びかけた。

インドネシアのルトノ・レスタリ・プリアンサリ・マルスディ外相は、「核兵器の廃絶こそが世界的な大惨事を避ける唯一の保証となる。」と語った。マルスディ外相は、軍縮・不拡散・原子力の平和利用の三本柱への強い支持を表明する一方で、「軍縮に関する条項がもっとも履行されていない。」と懸念を示した。そして、「非核兵器国が核兵器を保有する権利を放棄したのだから、核保有国は軍縮を進めなければならない。」と訴えた。

マルスディ外相はまた、「諸大国には、大きな責任が伴います。」と指摘したうえで、核保有国に対して、「模範を示すべきだ」と促した。また、「2020年、NPT加盟諸国は、政治的意思を発揮し柔軟性のあるあらゆる努力を傾け、2015年再検討会議で最終合意を導けなかった失敗を繰り返してはなりません。」と語った。

マルスディ外相はさらに、「核兵器禁止条約の発効によって、NPT第6条に規定された核兵器完全廃絶の目的も前進することになるでしょう。人類の生存は、なによりも核兵器を廃絶する集団的な勇気を持ちうるかどうかにかかっていのです。」と語った。

南アフリカのジェリー・マシューズ・マトジラ国連大使は、「核不拡散条約において核軍縮の問題に対処する緊急性と真剣味が欠けていることに、きわめて不満だ。」と語った。

Photo: Security Council meeting on Maintenance of international peace and security, Nuclear non-proliferation and nuclear disarmament. Credit: UN Photo/Loey Felipe
Photo: Security Council meeting on Maintenance of international peace and security, Nuclear non-proliferation and nuclear disarmament. Credit: UN Photo/Loey Felipe

マトジラ国連大使はまた、「こうした状態は、NPTおよびその再検討プロセスをますます強い圧力の下に晒し、期待からはるかに外れるものとなっています。とりわけ核軍縮に関する目に見える進歩が、国際の平和と安全を達成・維持する上での大きな決定要因になるはずです。」と指摘した。

マトジラ大使はさらに、「南アフリカは、核兵器禁止条約の批准書を今年2月25日に寄託することで核軍縮に対する前向きな姿勢を明示しました。」と語った。それ以前に21カ国が既に核兵器禁止条約の批准を済ませており、マトジラ大使は、他国もその輪に加わるように訴えた。

南アフリカは、一時は独自の核兵器開発を推し進めたがその後核兵器を自ら廃棄し、この大量破壊兵器に対する急進的な反対国に転じるという、りっぱな模範を示してきた。(原文へ)(PDF版

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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