地域アジア・太平洋|国連|インドによる軍縮専門家育成プログラムを評価

|国連|インドによる軍縮専門家育成プログラムを評価

【ニューデリーIDN=デビンダー・クマール】

インドは、各国の若手外交官を対象にした軍縮・国際安全保障プログラムを立ち上げた初の国連加盟国となった。あるインド外務省高官は、この取り組みについて、「核問題と軍縮に対するインドのコミットメントを示すもの」とコメントした。

このプログラムには、広範な地域からの若手外交官の参加を重視している点など、1978年の国連軍縮特別総会によって実施が決定された「国連軍縮フェローシップ」と類似点がある。

国連軍縮フェローシップでは、開始以来、国連の大多数の加盟国から1000人以上の外交官がプログラムに参加してきた。インドは、外交官をもっとも熱心に送り出してきた国のひとつだ。参加者らのその後のキャリアは、この訓練プログラムの価値と、参加を許された個人の力量の高さを如実に示すものとなっている。

Secretary General Ban Ki-moon with 2015 United Nations Disarmament Fellows/ UNODA
Secretary General Ban Ki-moon with 2015 United Nations Disarmament Fellows/ UNODA

インド外務省は、今回初めての実施となる軍縮・国際安全保障プログラムに、27人の外交官(全員が35歳以下)を招き、外交研究所を担当機関として2月1日まで3週間にわたるプログラムを実施した。ベトナム・中国・バングラデシュ・スリランカ・ミャンマー・モンゴル・エジプト・エチオピアが参加者を派遣した。

国連の中満泉事務次長(軍縮問題上級代表)とインドのビジェイ・ケスハフ・ゴケール外務次官は1月14日、第一回プログラムの開会イベントに出席した。

中満事務次長によると、若手専門家や学生を軍縮問題に関与させることの価値は、単に将来の可能性に投資することにとどまらないという。アントニオ・グテーレス国連事務総長が2018年5月に発表した「軍縮アジェンダ」は、世界に変革をもたらす最も重要な力として若者をエンパワーする必要性を説いている。

若者は、地雷やクラスター弾、最近では核兵器の禁止運動の先頭に立ってきた。中満事務次長は、「このプログラムの参加者年齢は、最も適切に設定されていると思います。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が2017年にノーベル平和賞を授与されたとき、すべてのスタッフが35才以下でした。」と指摘したうえで、「若者が導く対話は、サイバーツールやドローン、人工知能(AI)のような新技術の脅威を理解しようとする中で、創造性の源となるでしょう。」と語った。

Photo: Killer robot. Credit: ploughshares.ca
Photo: Killer robot. Credit: ploughshares.ca

中満事務次長はまた、「軍縮を追求し、『持続可能な開発に向けた2030アジェンダ』や人道支援活動、武力紛争の予防と解決、環境保護といった他の重要問題とも軍縮の関連を持たせようとしている中で、若者たちの創造性はカギを握ることになるだろう。」と付け加えた。

さらに、若者が中心となった政治的連合は、政府間の軍縮プロセスではあまり役割を与えられていない女性の声を大きく取り上げてきた。「すべての軍縮・国際安全保障のプロセスで女性の完全かつ平等な参加を確実にすることによってのみ、地球が直面している難題に効果的に対応する幅広いアイディアと才能を応用することができるだろう。」と中満事務次長は語った。

インドは、この新たな軍縮・国際安全保障プログラムへの参加候補国として、まずはジュネーブ軍縮会議(65カ国で構成)の加盟国が適切だと考えている。初回プログラムの参加国は、この65ヶ国の中から地理的バランスを考慮して最終的に30カ国が選ばれ、若手外交官の参加が要請された。主な選定基準は、軍縮問題で以前からの活動実績があるということだった。

プログラムでは、グローバル安全保障環境、大量破壊兵器、特定通常兵器、宇宙安全保障、海洋協力、サイバー空間の安全保障、輸出管理、新技術といった、軍縮と国際安全保障に関連する幅広い問題を扱う。

Izumi Nakamitsu/ UNODA
Izumi Nakamitsu/ UNODA

このプログラムでは、さまざまな現代の軍縮・不拡散・軍備管理・国際安全保障問題に関する専門知識や視点を参加者に授けることを目的としている。

国連軍縮研究所(UNIDIR)、国際原子力機関(IAEA)、化学兵器禁止条約機関(OPCW)、通常兵器及び関連汎用品・技術の輸出管理に関するワッセナー協定の高官らが、プログラムに協力している。

ウィーンを本拠としたワッセナー協定は1995年に結ばれ、通常兵器及び汎用品・技術の移転に関する透明性と責任を高めることによって、不安定要素となる武器の蓄積を防ぎ、地域や世界の安全保障・安定に寄与することを目的としたものである。また、テロリストによるこれらの物品入手の予防も目的としている。

インド外務省によれば、プログラムには、ウッタル・プラデシュ州のナローラ原子力発電所やトゥグラカーバードの内地コンテナ置き場、インド宇宙研究機関(ISRO)の現地訪問も含まれている。

外務省は、この独自プログラムの背景について、インドが国連安保理決議1540に関する会議を開催したことを挙げている。同決議は加盟国に対して、核兵器とその運搬手段の拡散防止のために国内で規制をするよう義務付けている。

「私たちは、安保理決議1540や化学兵器禁止条約のような、輸出管理や核問題のさまざまな側面に関して、多くのワークショップを開いてきました。しかし、インドがすべての関連問題を包含するようなプログラムを実施するのは初めてのことです。」とこの高官は語った。

SDGs Goal No.4
SDGs Goal No.4

中満事務次官は、プログラムの開会にあたって、「核軍縮・国際安全保障問題で各国の外交官に訓練を提供するというインドの取り組みは、軍縮アジェンダの主要な側面の1つである、『軍縮教育への投資』に沿うものです。」と語った。軍縮教育は、「平和及び非暴力的文化の推進」を謳った持続可能な開発目標(SDGs)の第4目標の実現に寄与するものと解釈されている。

軍縮アジェンダの第4の柱はパートナーシップだ。軍縮分野で意味ある進展を達成するには、地域機関や科学者、エンジニア、民間部門、市民社会と組んで、国連システムを横断する効果的な連携がなされねばならない。

「軍縮・国際安全保障プログラムを立ち上げたインドを称賛したいのは、この最後の点に関してです。こうしたアクションは、世界的に核軍縮を推進してきたインドの歴史的役割に沿うものです。」と中満事務次長は語った。

中満事務次長はまた、「戦略的安全保障関係が悪化し、分断が深まっているこの時代にあって、インドを含む全ての核兵器保有国には、率先して対話を再開し、リスクを減らす相互的なステップを追求し、核兵器の完全廃絶へとつながる共通のビジョンと道筋に国際社会を連れ戻す特別な責任があります。」と語った。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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