【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】
日本が東日本大震災で被災した福島第一原発の原子力大災害を回避しようと懸命に取り組む中、国際連合諸機関が連携して対日支援に乗り出している。国連ニュースセンターによると、3月11日に日本の東北・関東地域を襲った大地震は、東北の太平洋沿岸地域に大津波をもたらし、5000人を上回る死者と9000人近い行方不明者、さらに広大な地域に亘ってインフラに壊滅的な被害をもたらした。菅直人首相は、今回の複合災害(大地震・津波・原子力災害)を「第二次世界大戦以来最悪」と語った。
国連諸機関は、被災者への支援と被災地域における救難・復興支援を行うため、毛布、緊急通信機器、技術専門家を急遽日本に派遣した。
国際電気通信連合(ITU)は、被災者の捜索・救援を支援するため、GPS機能を搭載したスラーヤ衛生携帯電話78台をはじめ、イリジウム衛生携帯電話13台、インマルサットBGAN(ブロードバンド・グローバルエリアネットワーク・ターミナル)37台を動員している。
取材時、国連ニュースによると、ITUはさらに30台のインマルサットBGANを追加投入するところであった。このシステムはソーラーパネルと車電源で充電が可能なバッテリーを装備していることから停電地域においても使用が可能である。
ITUのハマドゥーン・トゥレ事務局長は、「ITUは、(今般の大震災で)想像を絶する人命と財産喪失という途方もない悲劇に見舞われた日本政府と日本国民に、可能な限りあらゆる手段を尽くして支援の手を差し伸べてまいります。」と語った。
国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長は、世界の核エネルギーの安全管理を調整する国連機関として、被災した福島第一原発の危機回避にどのような支援が可能か検討するため3月17日、日本を訪問した。同原発施設では、地震に続く津波により電気系統が故障、燃料棒を冷却するシステムがダウンしたことから、水素爆発が起こり、放射能汚染の悪化が懸念されている。
グラハム・アンドリューIAEA科学技術担当補佐官は、IAEA本部(ウィーン)の記者会見において、「状況は引き続き極めて深刻で予断を許さないが、昨日からの悪化は見られない。」と語った。
アンドリュー氏は、「被災した1号機、2号機、3号機については比較的安定しているようだが、4号機については、使用済み核燃料プールの温度計が14日(同日は84度)から機能不全に陥っており、内部の水量や水温に関する情報が得られない。」と指摘し、「重大な安全上の懸念が残っている。」と語った。
IAEAはまた、日本の47都市において放射能量の測定をおこなっている。東京における放射線量は3月16日から大きな変化はなく、人体に影響を及ぼすレベルより十分低い数値にとどまっている。しかし福島第一原発から30キロ以内に位置するいくつかの場所では、過去24時間に数値が著しく上昇している(1か所では2倍以上)。
また天野IAEA事務局長は、日本に発つ前、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会事務局長のティボル・トート氏を訪問し、同組織が集積しているデータへのアクセスについて協議した。CTBTOでは、国際監視システム(IMS)を通じて、放射能を含む煙の飛翔経路をモニタリングしており、福島第一原発から流出している放射能の飛翔経路情報を示すことができる。
伝えられるところによると、アニカ・サンボーグ広報官は、そのデータについて、CTBTOから既に182の加盟国及び1200の研究機関に提供されたという。同報道官は、国連ニュースセンターに対して、国際監視システムは、放射能と量よりも煙の向き(飛翔経路)を捉える構造となっていることを説明した。
IAEAは、国連の世界気象機関(WMO)との連携も図っている。WMOは緊急環境対応メカニズムを発動し、風の方向と放射性物質が流れる可能性のある経路のモニタリングを行っている。
国連ニュースセンターによると、数万人にのぼる生き残った被災者の多くが、既に1週間にわたって電気・水のない厳しい衛生環境の中で寒い夜を過ごしてきた実情に鑑み、国連の世界食糧計画(WFP)は、必要な援助物資が迅速に被災地に届くよう、ロジスティクス、供給連鎖管理の専門家を派遣している。
ローマに本拠を置くWFPは、既に被災地に向けて6万枚の毛布輸送に着手している。被災地には未だに約23000人が孤立しているとみられている。
世界食糧計画(WFP)のジョゼット・シーラン事務局長は、過去に世界各国で同様の惨事が起き、緊急対応にかけつけた日本の支援隊の勇敢で献身的な姿勢、そして人命を救い被害を食い止めるために日本政府がとった断固たる処置の数々に言及した上で、「今日、WFPは日本と共にあります。日本は、世界で悲劇が起き助けを必要とした際、最も多くの人道支援を差し伸べてきてくれた国の一つです。」と語った。
WFPは、世界で惨事が起こった際に緊急支援を行う国連の代表的なロジスティクス専門機関として、数十年に亘って、困難な環境下で食糧や援助物資を被災地に届ける経験を蓄積してきた。そして今日では世界で、人道支援を必要とするコミュニティ全体に支援物資を届けたり、しばしば政情不安な環境や僻地において長距離にわたる人と物を輸送できる専門機関として大きな信頼を寄せられている。
一方、国連災害評価調整(UNDAC)チームと米国の災害援助対応チームからなる共同分遣隊が3月17日、被災地において現状評価を実施するため、米軍のヘリコブターに搭乗して東京を出発した。
国連メディアセンターは、「茨城県大洗町では、同分遣隊はまず空中から街の津波被害状況を観察した後、地上移動手段を確保して現地調査を行った。船舶と海岸地域の資産に深刻な被害が観察され、地元住民からは、道路が寸断して物資の運搬が困難になっていることから燃料と食糧が不足しているとの訴えがあった。その後、被災地域における最大の都市でとりわけ津波による深刻な被害を受けた仙台に空路向かったが、途中山岳部の天候悪化により前進ができず、東京に引き上げざるを得なかった。」と報じた。
翻訳=IPS Japan戸田千鶴/浅霧勝浩
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